156 :
名盤さん:
学生の時の彼女と別れた日の事はたまに思い出す。卒業式の後の日曜日の事。
元々彼女に告白されて始まった付き合いだったので、いつも自分の方が精神的に
優位に立っていて良いんだという勘違いが、当時の俺にあった。また、以前に
経験した我儘な女性との付き合い方に疲れていた事もあり、俺に対して奉仕的な
までに優しく接してくれる彼女に甘え、時にぞんざいに扱ったりしてた。彼女が
電話をくれても面倒ですぐ切ったり、友人達の前ではわざと冷たい態度をしたり、
セックスで無理な行為を強要したり・・・
彼女が困ったりするのを見て楽しんでた。(いやな性格だ・・)
でも彼女は俺に会うといつも嬉しそうにしてくれたんだ。
長女で一人っ子の彼女は卒業したら実家に戻るという親との約束で東京の学校に
来てた。実家は結構良家で、将来婿養子をもらうのも暗黙の了解らしい。俺も
長男だし、そんな事より就職先の配属先が全国のどこになるかわからない状況
だったので、自然と、別れようという話に。割り切った気分で、配属先にいい女
いるかな〜、なんて考えてた。
いよいよ彼女が仙台の実家へ帰る日になり、上野駅まで見送りに行ったんだけど
その日も食事しながらドライに「何年位したら見合いすんの?」なんて聞いてた。
その時彼女が寂しそうに「きっと、もう会えないね・・」って言ったんだ。
え・・もう、会えないのか?そりゃ会えないよな・・一生?多分・・会え・・
急に頭の中がグルグルしてきて、心臓がバクバク鳴り出した。時計を見ると
出発まであと一時間しか無い!
急に彼女の事が一番大切な事に気付き、どうしても抱きたくなった。全身で
ブルブル震えながら彼女の手を引いて、ホテルに。「今まで冷たくして
ごめんな!」など言いながら、ギリギリの気持ちで抱きあった。その時も彼女は
新幹線に遅れて迷惑な筈なのにいつものように嬉しそうにしてくれた。
本当に、ずっとこのままでいたい、と思った。
結局俺の配属先は名古屋で、二度と会うことはありませんでした。
2年後に彼女から「結婚しました」の葉書をもらいました。
今でも上野に行くとよみがえってくる思い出です。