洋楽板の
>>1は博学才穎、昭和の末年、若くして名を股傍に連ね、ついで強姦官に補せられたが、
性、狷介、自らたのむところすこぶる厚く、賤吏に甘んずるを潔しとしなかった。
いくばくもなく官を退いた後は、故山、厨房板に帰臥し、人と交わりを絶って、ひたすら
自慰にふけった。しかし性感は容易に揚がらず、生活は日をおうて苦しくなる。
1はようやく焦燥に駆られてきた。このころからその容貌も峭刻となり、肉落ち骨秀で、
眼光のみいたずらに炯々として、かつて進士に登第したころの豊頬の厨房の俤は、
どこに求めようもない。数年の後、貧窮に堪えず、節を屈して、再び洋楽板へ
赴き、一スレッド官吏の職を奉ずることになった。一方、これは、己の恥業に半ば絶望した
ためでもある。かつての同輩は既にはるか高位に進み、彼が昔、鈍物として歯牙にも掛けな
かったその連中の下命を拝さねばならぬことが、往年の厨房
>>1の自尊心をいかに傷つけたか
は、想像に難くない。彼の狂悖の性はいよいよ抑え難くなった。一年の後、公用で旅に出、
馴れ合いのほとりに宿ったとき、ついに発狂した。ある夜半、急に顔色を変えて寝床から起上がると、
何か訳の分からぬことを叫びつつそのまま下にとび下りて、
闇の中へ駈出した。彼は二度と戻って来なかった。付近の山野を捜索しても、
なんの手がかりもない。その後
>>1がどうなったかを知る者は、誰もなかった。