【早くも】輸入盤撲滅問題・第16条【禁輸開始?】

このエントリーをはてなブックマークに追加
4461
視点・論点
ピーター・バラカン
音楽は誰のもの?

六月はじめに著作権法の部分的な改正が行われました。
これはいわゆる輸入権というのを設けるもので、目的は主にアジア諸国から日本に還流する安いCDを規制することです。
こういう還流版というのは、日本のレコード会社がJ-popを海外に広めるために、
アジアの国々に販売権の契約をし、その国の市場に出たCDが日本に逆輸入され、
ディスカウントショップなどで国内版のCD よりかなりやすく売られているものをさすのです。
現在は一億七千万枚という市場全体のうち68万枚程度のものなのでわざわざ法律を改正するほどの問題なのか疑問に思う人が多いはずです
将来的にこの数が何十倍にも膨れ上がり、海賊版の製造販売にも拍車をかける恐れがあると音楽産業側が懸念しているようです。
4472:04/08/04 06:15 ID:fqA/Ur5H
本当は日本の音楽だけを保護するつもりではじまったこの話は
それが差別的だとするアメリカのレコード協会の強い意見を受け入れて、
結局他国の音楽、いわゆる洋楽も含むような法文になってしまいました。
その結果アメリカやヨーロッパをはじめ世界中から日本に輸入され
多くの音楽ファンに楽しまれているCDが規制の対象になるのではないかと、一部の音楽関係者が心配しはじめました。
特にマスメディアにほとんど取り上げられることなく、法案が参議院を通過したので、
陰謀めいたものを感じる人もいたのです。
レコード会社の中にもこのような動きがあることを知らないスタッフが少なくなく大手レコード会社のトップの経営陣だけで話が進んでいたわけです。
4483:04/08/04 06:15 ID:fqA/Ur5H
法案に関する情報がインターネットなどで広がり始めたら
あっという間に、数万人の音楽ファンによる署名運動が起こり、
日本レコード協会と各大手レコード会社の連名で
欧米発の洋楽CDの輸入を規制しないという発表が出されました。
最終的には日本における音楽の著作権を所有する会社が
自社の知的財産を守るのはもちろん自由です。
しかし市場というものは需要と供給の微妙なバランスの上にたっているわけで、
レコード会社が消費者の信頼を失うと、誰の利益にもつながりません。
4494:04/08/04 06:16 ID:fqA/Ur5H
最近日本国内で発売されるCDにはCCCD、コピーコントロールCD が増えています。
これはその名のとおり複製できないように仕組まれたCDです。
今のアメリカでは、レコード会社が販売するCDに比べて、
録音が可能ないわゆる生CDのほうが10倍も売れているそうですから
一見まともな話のように聞こえます。
ところがお金を払って買ったCDを複製するなといわれたら、
消費者はどのように感じるのでしょうか。
MP3プレーヤーを持っている人が多く、今後持たない人がいないぐらい
の社会になることはまちがいないのに、
CDを買ったとしても、MP3プレーヤーで聞きたかったら、もう一度買いなさい、とレコード会社が言っているようなものです。
4505:04/08/04 06:16 ID:fqA/Ur5H
音楽を複製することは今に始まった行為ではもちろんありません。
以前はカセットテープやMDなどで、同じことをしている人が大勢いましたし、
特にこの日本では70年代のFM放送は、ほとんど無料コピーを奨励するような媒体だったのです。
時代がデジタルになったら複製物のクオリティーが当然あがりました。
そしてインターネットを通じて音楽をデータとして無料でダウンロードすることが可能になったら、たとえそれが違法だとしても
お小遣いの少ない若者がその方法を利用しない手はないでしょう。
4516:04/08/04 06:17 ID:fqA/Ur5H
アメリカでもヨーロッパでも、レコード協会などの権利者団体が
違法ダウンロードした個人を起訴し高額の罰金を課しています。
こうした措置によって抑止効果が生まれているということもあるでしょうが、
面白いことにアメリカ、そしてこの前からヨーロッパでも、
無理のない価格による有料ダウンロードのサービスが始まって
それがたちまち人気が出て、ちゃんとビジネスとしても成立しそうな気配です。

つまり複製するなという無茶なメッセージを送ったり、
犯罪者として罰したりするよりも、消費者が喜ぶフェアなサービスを作るほうが
お互いにとってはるかに利益があると思うのです。
ちなみにこうした大規模なダウンロードサービスは
まだ日本では成立していませんので、合法的に聞こうと思うと、CDを買うことになります。
同じアーティストの同じCDでも日本盤が複製できないCCCD、
アメリカ盤などの輸入盤が普通のCDという場合が多いです。
しかも価格面でも、国内版より輸入版のほうがたいてい安いです。
さて消費者にとってどちらの商品が魅力的でしょうか?
4527:04/08/04 06:17 ID:fqA/Ur5H
普通は世界のどこへいっても、輸入盤よりも国内で生産される商品のほうが安いはずのに日本のCDはなぜ高いのか。
人件費などの問題は当然ありますが、本とCD の場合には再販制度というもうひとつの大きな理由があります。
以前より価格が維持される期間が短くなりましたが、
それでも発売から半年間は国内版を一切値引きさせてはいけないわけです。
これは音楽が文化の産物であり、競争原理を除去することにより、
作品が平等に扱われ、ヒット商品だけが売れるという事態を防ぐという論理です。
30年前ならある程度理解のできる話でしたが、今のようなとてつもない品数ではまったく通用しなくなっています。
レコード会社は再販制度を撤廃させようと思ったらできるはずです。
それをしないことによって自分たちの商品の魅力を敢えて損ねているとしか思えません。
4538:04/08/04 06:18 ID:fqA/Ur5H
商品価値を保つためには日本語解説をつけたり、オリジナルのアルバムには入っていないおまけの曲を追加したりするのです。
これをありがたがるファンは確かにいますが、
日本語解説の質は残念ながら必ずしも高いとは言えず、
ボーナストラックも多くの場合は原盤に使用されていなかった理由が明らかなものです
こうした付加価値を考えるのはいいとしても、
その質にこだわらなければ、消費者を騙すことになるのです。

音楽の価値というものはもちろん主観的なものですから、
一人の独断でそれを決めるわけにはいきませんが、
最近の音楽業界ああまりにも数の原理にばかりに走っているように見えます。
音楽制作はどうしても博打に似た側面があって、
どんなにすばらしい作品を作ったとしても売れないときはやはり売れません。
しかし、今の大手レコード会社はどれも株式を上場している多国籍企業で彼らにとって最大の義務は株主に利益をもたらすことです。
博打なんてしていられないわけです。
4549:04/08/04 06:18 ID:fqA/Ur5H
多くの人が受け入れやすい歌手を探してきて、
無難でわかりやすい歌を歌わせて、派手なマーケティングでそのイメージを浸透させる、ポップミュージックの作り方として、あたりまえのことかもしれません。
でも、最近は子供でさえ子供だましに引っかからなくなってきています。
歌の才能もなく、一発当ててすぐに消えていくような歌手が多く、
そういう人のCDに二千五百円や三千円を払うのがいやだというお小遣いの少ない若者が大勢いて当然です。
二百円ほどで買えるシングル版やダウンロードものもなく、
仮に違法ダウンロードを利用したり、還流版のCD を買ったりしたとしても、驚くべきことではありません。



生き残りに懸命になっている音楽産業は、短絡的な対症療法ではなく、根本的な問題を見据える必要があります。
人々を権利で束縛するより、彼らが買いたくなるような音楽をつくり
それを買いやすい値段と方法で提供すれば、音楽産業も元気を取り戻せるはずです。
デジタル時代に抵抗するのではなく、目いっぱい利用すべきです。