>>170,
>>235 Bjork
この人はシュガー・キューブスの時からニュー・ウェーブで、
ソロも常に先端のテクノ・アーティストと組んで仕事をしている
んで、おまけに独自なボーカル・スタイルなんで、ロックの文脈
では計れない、と簡単に言ってしまうんだけど、実の所、ロック
の文脈ではないですね(笑)。ジョニー・B・グッドから始まる流
れの中に居ない。どこに居るかと言うと、ブロードウェー・ミュ
ージカルですね。クラッシックから発展した近代音楽の中にいる。
P-modelの平沢進がよく好んでボーカルを多重録音して1人合唱で
ミュージカルっぽい曲を作るんですけど、あれに近い。本来なら
主旋律があって対旋律があって、コーラスのハーモニーがあって、
というオケや合唱が担当する部分を打ちこみによるアレンジに任
せる。なぜなら、彼女の歌は個性的過ぎて、普通のオケや合唱か
らは逸脱してしまう。それゆえに、彼女は自分の為の楽隊を最新
鋭のデジタル機材で作らなくてはいけないわけです。
そんな彼女の歌は感情表現が豊かだけれど、ポップで大衆に受け
入れられているけれど、ついでに言えば評論家からも絶賛だけれ
ども、逆説的に密室の音楽ですね。古き良き時代の音楽を志向し
ながらも決してそこには向かわない。そういう場所から彼女のフ
ァンタジックな楽曲が生まれてくるのだとすると、映画「ダンサ
ー・イン・ザ・ダーク」のヒロイン、視覚的にも社会的にも光を
奪われていく中で歌い続けるセルマの姿に彼女が重なるのは偶然
ではないのだと思います。