1 :
名も無き音楽論客:
音楽の基本的要素である「音階」から邦楽を語りましょう。
2 :
名も無き音楽論客:2010/04/24(土) 21:13:22 ID:iaLehcY6
日本で明治以前から使われてきた伝統的な5音音階は以下の4種類があります。
@都節音階(ミファラシドミ)近世邦楽
A律音階(レミソラシレ)雅楽・声明
B民謡音階(ラドレミソラ)民謡・童歌
C琉球音階(ドミファソシド)沖縄民謡
演歌で多く使われるヨナ抜き音階(ドレミソラド、又はラシドミファラ)は、明治の西洋音楽導入に際し、音の数を7から5に減らして作られた音階。
@〜Cのいずれとも異なるが、ヨナ抜き短音階は@都節、ヨナ抜き長音階はA律またはB民謡に似た旋律を作ることができるため、演歌の主流となった。
しかし、曲の最後ではやはり洋楽的にド又はラで終止せざるを得ない。これは伝統音楽では不安定な終わり方である。
擬似伝統的な音階で歌いながら、最後に強引に終わらせるため、演歌はリキんだ物悲しい歌が多いのだと思われる。
ニロ抜き短音階(ラドレミソラ)は民謡調の演歌のほか、一部のアイドル歌謡、フォークで使われている。
これはB民謡音階と全く同じ音階で、伝統とも一致し、ヨナ抜きのような不安定さは無い。
故・小泉文夫氏は1980年頃、期待を込めて今後日本の歌謡界ではニロ抜き短音階が主流になるかもしれないと言っていたが
・・・
因みにニロ抜き長音階(ドミファソシド)はC琉球音階と全く同じ。
3 :
名も無き音楽論客:2010/04/24(土) 23:42:02 ID:iaLehcY6
ttp://fuji-san.txt-nifty.com/osusume/2007/06/post_5591.html 小泉文夫氏『歌謡曲の構造』インタビューより
(小泉)…音の数で五音、七音というと何となく五の方が数が足りないから未発達で、七の方が数が多いから発達した音楽だと、
非常に大勢の日本人が漠然と考えていますけど、これは大間違いなんです。
−すると日本は音楽の先進国ということになりますね。自信が湧いてきました。
(小泉)歴史的にはそうなんです。
−では西洋は対位法やハーモニーがまだ残っている、音楽の野蛮国という理屈になるわけですか。
(小泉)それは西洋が急激に数百年で高度成長した民族だからですね。ヨーロッパのゲルマン民族は、ついせんだってまで確かに未開人だった。
小泉さんの有名な予言があります。「四七抜き(日本の音楽と西洋の音楽のせめぎ合いから生まれた折衷的な音階)から二六抜き(日本の伝統的音階)へ」
…これは、恐ろしいほどに的中しています。今のJ-POPの実に多くが西洋的ハーモニーの上に二六抜き音階を展開しています。
小泉さんが待望した長調の二六抜きも、「島唄」や「涙そうそう」を挙げるまでもなく、今やヒットチャートの主流になっていますね。
4 :
名も無き音楽論客:2010/04/25(日) 10:17:47 ID:FUNcSkUO
奈良・平安時代には大陸からすぐれた先進文化とともに、発達した楽器や楽曲が多く宮中にとり入れられたが、
庶民はずっと古くから歌われていた歌を仕事や儀式の折に歌っていたのであろう。
その音階(ラドレミソラ)は平安時代に大宮人が東国の民謡を基に作った風俗歌の音階と同じであり、
後世の民謡音階、あるいはわらべうたの音階と同じであった。
それは大陸系の音階(ドレミソラまたはソラドレミ)である雅楽には取り入れられず、
また明治以降の音楽教育のなかでも、一度も正式に認められることがなかった。
つまり歴史上一度も陽の目を見ていない音階だが、日本人の音感覚の中ではいつも土台になっていたものである。
この音階(これを四七抜きに対して、短音階の二六抜きと呼ぶ)が、最近そのままの形か、あるいは部分的ではあるが再び盛り返してきたのである。
『ペッパー警部』や『ウォンテッド』は完全に民謡、わらべうたの音階であり、だから子どもでもおじいちゃんでも、喜んで歌えるものになる。
(小泉文夫『ペッパー警部と平安音階』より要約)
ペッパー警部(モーニング娘)
ttp://www.youtube.com/watch?v=k7ZX3JnZ32g ウィキ「ヨナ抜き音階」で長音階の例として「夏祭り」(JITTERIN'JINN) が挙げられているが
どう聴いてもニロ抜きの短音階に聴こえる
ttp://www.youtube.com/watch?v=qM3rW-WLgKM
5 :
名も無き音楽論客:2010/05/01(土) 13:12:07 ID:34vKqr+K
日本の伝統音階とヨナ抜き・ニロ抜き音階の関係をまとめると
ヨナ抜き長音階≒≠律音階・田舎節音階
ヨナ抜き短音階≒≠都節音階
ニロ抜き長音階=琉球音階
ニロ抜き短音階=田舎節音階
(中国から伝わった呂音階はヨナ抜き長音階の形だが、これは中国の三分損益法という計算で得られた理論的な音階で、
日本では定着しなかった)
日本の伝統音階と西洋音階の結合として、ニロ抜きのほうが明らかに優れていると思われるのに、
なぜヨナ抜きが主流になったのだろうか?
おそらく、宮中の雅楽や都節こそが日本の伝統音楽だという考え方が強く、田舎節や琉球はバカにされていたからだろう。
もしニロ抜きが主流になっていたら、日本の歌謡曲はもっと健全に発展したかもしれない。
それどころか、太平洋戦争を含む日本の近現代史も変わっていたかも・・・妄想です(笑)
6 :
名も無き音楽論客:2010/05/01(土) 20:55:26 ID:34vKqr+K
小島美子氏によると、日本の伝統音楽には
>>2 の四種類だけでなく、次の二種類も追加すべきという。
呂音階 =ヨナ抜き長音階
呂陰音階=ヨナ抜き短音階
呂音階はもっとも古くから日本列島に存在したかもしれず、呂陰音階は呂音階から派生したらしい。
ただし、後世ではきわめて少数派の音階である。
7 :
名も無き音楽論客:2010/05/02(日) 17:43:18 ID:zr4zxHUy
アメリカのアフリカ系音楽がマイナーペンタ(ラドレミソラ)ベースなのに対して
アイリッシュ→カントリーはメジャーペンタ(ドレミソラド)
アメリカの音楽と日本の演歌・民謡は音階的には案外近かったりする。
8 :
名も無き音楽論客:2010/05/02(日) 21:22:57 ID:zr4zxHUy
酒井しのぶ氏曰く
「よく、日本で例えると「ブルースは演歌」だと言われますが、わたくしは違うと思っています。
ブルースは民謡であり、カントリーが演歌だと思います。」
氏は歴史的な意味で言われているようだが、音階から見てもよく当てはまる。
9 :
名も無き音楽論客:2010/05/03(月) 08:59:01 ID:I8FT8GOW
ニロ抜き短音階=民謡音階=マイナー・ペンタトニックは最も安定したペンタトニックで「世界共通語」ともいわれる。
日本から朝鮮半島、モンゴル、中央アジア、トルコ、ハンガリーにいたるユーラシア大陸のほか、
アジアからアメリカ大陸に渡ったネイティブ・アメリカン、奴隷として拉致されたアフリカン・アメリカンにもあり、
フォルクローレやブルースやロックで使用されている。
ヨナ抜き長音階=呂音階=メジャー・ペンタトニックはやや不安定で、自然発生的な音階ではない。
明治時代に作られた文部省唱歌には「蛍の光」など、この音階を持つスコットランドやアイルランドの民謡が多く取り入れられた。
それが演歌のヨナ抜き長音階にも受け継がれている。
アメリカのカントリーもこうした民謡が元だから、演歌とは正真正銘の「兄弟」と言える。
ただしヨナ抜き短音階の演歌は別である。
10 :
名も無き音楽論客:2010/05/08(土) 14:25:42 ID:CJW0gRzx
>>6 小泉説では呂音階(ドレミソラ)を独立して扱わず、律音階(ソラドレミ)の四度終止と考えている。
律音階の核音は「ソとレ」だが、稀に「ソとド」もあるとする。
民謡音階(ラドレミソ)の核音は「ラとレ」、稀に「ラとミ」だが、テトラコード中間音のドで終わることは無い。
同様に呂陰音階(ラシドミファ)も独立して扱わず、都節音階(ミファラシド)の四度終止と考えている。
都節音階の核音は「ミとシ」だが、稀に「ミとラ」もあるとする。
11 :
名も無き音楽論客:2010/05/09(日) 14:17:48 ID:ZZTNJXbP
五音音階は七音音階より音が少ないので、平板に歌うとつまらなくなってしまう。
そこで「ユリ」や「コブシ」を多く使って、いかに聞かせるかが重要になる。
ここが西洋音楽と東洋音楽の相違であろう。
沖縄民謡の三線のバッキングのリズムって基本的に口伝なのだろうけど、
あれを理論的に解析した資料とかってあるのかな?
単純に歌とユニゾンさせないタイプのバッキングって単なるコード分解とも違って
なんとなくラテンのモントゥーノみたいなお決まりの配列やリズムがあるのかちょっと気になる
14 :
名も無き音楽論客:2010/05/15(土) 15:32:04 ID:BioZaguf
古代に中国から伝わった雅楽には、五声(五音音階)と七声(七音音階)があった。
中国では、いずれも三分損益法によって理論的に求められた音階だった。
ところが日本では、五声・七声とも中国とは異なる奇妙な形になった。
五声は、中国では宮・商・角・徴・羽(ドレミソラ=呂音階)だが、日本では角(ミ)を半音上げて律角(ファ)とし、
「ドレファソラ」の律音階を作った。
七声は、中国では呂音階に変徴(ファ♯)と変宮(シ)を加え「ドレミファ♯ソラシ」としたが、
日本では律音階に嬰商(ミ♭)と嬰羽(シ♭)を加え「ドレミ♭ファソラシ♭」とした。
何故?
これは、日本古来の民謡音階(ラドレミソ)の影響だろうと考えられている。
「ラドレミソ」を「ドミ♭ファソシ♭」と書き直せば、民謡音階の要素が加わったことが容易に分かる。
面白いことに、アメリカで黒人奴隷がブルースを生み出した経緯もこれに似ている。
黒人本来のアフリカ音階も日本の民謡音階と似ていたと考えられており、
白人の七音音階に黒人たちが「ミ♭」「ソ♭」「シ♭」を加えて、現在のブルース音階が生まれたとされる。
15 :
名も無き音楽論客:2010/05/15(土) 19:57:38 ID:BioZaguf
16 :
名も無き音楽論客:2010/05/23(日) 15:06:06 ID:zg3yscMO
わらべうた・民謡は大昔からマイナーペンタらしい。
17 :
名も無き音楽論客:2010/06/06(日) 14:23:43 ID:NiXmuHen
民謡音階は完全にマイナーペンタではなく、微妙に違うようですね。
ペンタの世界では流派によって音高が変わったり、ピアノ通りにはいかないようです。
18 :
名も無き音楽論客:2010/06/20(日) 10:56:24 ID:04lH8+5g
ヨナ抜き長とニロ抜き短は平行調。
区別がつきにくい場合もある。
19 :
名も無き音楽論客:
>>13 黒鍵だけを適当に弾くと坂本龍一風になるとか?