597 :
名無しの歌が聞こえてくるよ♪:
この汽車は乗せていないよ、ばくち打ちも、ウソつき野郎も、
ドロボウも、羽ぶりのいい流れ者も、この汽車は栄光に向かって走っているんだ、
この汽車は!――――――
今にも泣き出しそうなくもり空の下、甲州街道をまたぐ歩道橋の上で
(重いクルマが通るたびに揺れている)流れていく自動車を見ている。
こんなに沢山の自動車はいったいどこから来て、どこへ行くんだろう。
去年の夏、親父のダサイカローラでむし暑い夜を走り出た時、美しい夜明けの光の中で
道ばたの教会の看板が輝いていた。その看板にはデッカイ文字でこう書いてあった。
――あなたの人生に勝利を!!――
「はい、どうもありがとうよ!」と言いながら僕はコンビニエンスストアの
前にカローラを止めて、冷たいコカ・コーラを飲んだ。
信号が変わって歩道橋の下の横断歩道を買い物カゴさげたオバサンや
学生や背中のまがった老人が各々のスピードで渡っている。
そこで僕は自分にとっての栄光と勝利について考える。
激しい雷鳴のなかで抱きあい、kissを交しあった恋人達について、
苦労ばかり多くてむくわれる事の少ない人々について考える。
1930年代のほこりまみれのアメリカ大陸をギター片手に放浪し
風と共に去っていった吟遊詩人のウディ・ガスリーは言ったものだ。
「おれがやめることになれば、今度はあんた達が仕事をやめて
旅に出るべきだ。やるべき旅は山ほどあるのだから」
自由でいることの責任は、いつだって自分自身で背負うべきモノだから、
僕は強くなりたい。そして流されるのではなく、流れていきたい自分の意志で。
なぜかというと流れずによどんだ水は、やっぱりクサってしまうんだぜ、ベイベー!
THE BLUE HEARTSの明日はどっちだ!!それじゃあ、またね。Guitarのましまです。
(86年に書かれたマーシーのエッセイ。「THE BLUE HEARTS1000の証拠」より)