博物館の批評・感想を!

このエントリーをはてなブックマークに追加
185名無しさん@お宝いっぱい。
■大阪市立美術館
■特別展 「北斎」 ―風景・美人・奇想―展、2012.10.30−12.9
ttp://hokusai2012.jp/index.html
■結論から言うと、2005年に東博でやった北斎展につぐ規模で、十分観る価値が
ある展覧会です。難を挙げれば、『富嶽三十六景』らの揃い物が、どれも数点抜け
があり、前後期で半分ずつ展示される点です。スペースの関係上仕方がないので
しょうが。観覧者を観察すると、最初から列を並んで見てる人が多いですが、
最初の浮絵はぶっちゃけ前座で、真に観るべきは後半にある以下の展示だと
考えます。

この展覧会の大きな特色は、大阪開催ということもあり、大阪と北斎の関わりです。
北斎は大阪を訪れたことがあり、弟子もいました。図録収録の論文も、大阪における
北斎の活動とその弟子たちのことに費やしており、開催者が最も力を入れた部分で
あることは明らかです。大阪の浮世絵は流光斎如圭の影響が大きいですが、
北斎来訪によって、流光斎と北斎の画風を折衷しようとする絵師たちの取り組みが
窺えます。北斎のネームバリューに惹かれて展覧会に訪れた人は、肩透かしを
食らうかもしれませんが、作品の質は全体に高く、こうした上方の浮世絵師の
作品をまとめて見られる機会はそうはありません。

北斎の読本挿絵も見所の一つです。挿絵は白黒で、錦絵と比べるとどうしても地味
ですが、北斎のイマジネーションと激しく幾何学的なムーブメントが最も端的に
表れているのが、この読本挿絵の分野です。現代の劇画でも及ばない、激しく
迫力ある絵が多いです。本展では、後半も半ばに版本を3段に並べて集中的に
展示しており、非常に見ごたえあります。この辺まで来ると皆さん疲れてくるのか
足早に通り過ぎる人が多いですが、北斎の読本版本をこれだけ一気に鑑賞
できる機会はなかなか無く、勿体無いと思います。

最後に肉筆画です。注意点は会期後半に優品が集中している点です。作品リスト
ttp://www.osaka-art-museum.jp/special/documents/listhokusai20121030.pdf
を見ると、ポスターに使われている重文の「二美人図」、三の丸
尚蔵館の「西瓜図」、東博の「扇面散図」、妙光寺の「七面大明神応現図」といった
晩年の肉筆画を代表する名品が全て後期展示です。こうした作品が関西で展示
される機会は少なく、肉筆画好きは後半行くことを強く推奨します。