【台場入門】〜The DIVER〜【初心者必読】

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1伊達 堕伊庭 ◆AeB9sjffNs
この物語はノンフィクションである。

海とは無縁だった男が、ダイバーとして生きてゆくための半生を描いた物語である。
2伊達 堕伊庭 ◆AeB9sjffNs :04/07/20 23:15
アンコール!、アンコール!・・・僕達の演奏を聞き終えた群衆は、未だ興奮から収まらない。
とっくに、幕は下りているのに、観衆は立ち上がったまま、ホールから、帰ろうとしない。
僕は、自分の汗を拭くのも忘れて、バンドマスターとして、幕が下りたステージの上で、他のバンドメンバー達にねぎらいの言葉をかけた。
感謝の気持ちでいっぱいだった。
ヴォーカルのA、コイツがいなければ、どうにもならなかった。最近雇ったばかりの新入りで声量はまだまだだが、演出に長けている。ダンスも申し分ない。後数回ステージを踏めば、もっと慣れて上手いヴォーカルを聞かせてくれるだろう。
ベースのB、後輩のドラマーCによく指導して、バンドに溶け込む雰囲気を作ってくれた。影の立役者だ。このバンドには欠かせないメンバーだろう。事実、俺がいないときはバンドマスターとして、よく動いてくれる。
ドラムのC、コイツもこのバンドへ入ってまだ1年と経たないが、天性のリズム感、そして、バンドへ溶け込もうという姿勢、「何より練習が大好きっすよ!」というだけあって、上達は早い。俺を始め、先輩を尊敬してくれてもいる。・・・可愛いヤツだ。
そして、キーボードの、ケイコ、こいつ、訳分からんのだが、上手いことは認める。練習にはいつも遅刻、出られないとの電話、いつものことなのだが、本番のステージでは、誰よりも上手く演奏をこなす。
さすが、クラシック出身の事はある。だが、ロックの魂は、まだわかってない。音符を追いかけてるだけだ。
3伊達 堕伊庭 ◆AeB9sjffNs :04/07/20 23:17
まあ、いい。上出来だ。ここまでくれば、聴衆も満足してくれただろう。ライブハウスの支配人からは、「来週も頼む」と言われることは間違いない。もしかしたら、レコード会社のスカウトも来ているかもしれない。
え?俺たちのCDデビュー?それは、ちょっと早すぎるな。でも、話しがあればもちろん乗るけどね・・・まあ、今日のライブは上手くいったと、メンバーをねぎらうべきだろう。
俺はメンバー一人一人に、「お疲れ!」と言って回った。みんな笑顔だった。
ライブ版として、CD−Rに焼いてもらってあるから、デモンストレーション用に、後でコネ使って、聞いてもらってみるわ。CM製作くらいの仕事はもらえるかもしれない。

なにしろ、今日はお疲れ。バンドのメンバー、ここ2日、寝る暇なかったろ?打ち上げの飲み会でもしたいところだが、みんな寝不足で疲れてる。今日は、早々と解散とするか・・・。
4名無SEA:04/07/20 23:20
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5伊達:04/07/22 06:26
今度の特別ライブの日程が決まった。毎週定期的に出演しているライブハウスのステージとは違う。
実は先日のライブにレコード会社の人が俺達の噂を聞いて来ていたらしい。その人から誘いの声がかかったのだ。

そのライブに俺たちと同時に出演するバンド名を聞くと、噂でもよく耳にするバンドばかりだった。とは言ってもメジャーデビューしているバンドではなかったが。
しかしなるほど、俺達もそのバンドと同列に業界から見られているのか。俺はその話しを聞いて正直嬉しかった。

俺達はプロ・ミュージシャンを目指して音楽をやってきたのではない。音楽が好きだからやってきただけだ。その結果、音楽業界からちょっと目にとめてもらったってワケさ。メンバー達に電話で了承を取って、すぐに出演依頼にオッケーした。

レコード会社の人は「君達みたいなバンドがこんな小さなライブハウスのステージで満足しているのは、自分達の才能を殺してるよ、もっと大きなライブをどんどん経験しなくちゃだめだ。」と言った。
おだててやがるなと、心の中で苦笑したが、まあ、そう言われて悪い気はしない。俺は早くもそのステージで披露する、新曲のいくつかを頭の中でピックアップしていた。

4 メンバー達との合同練習は週2日。あらかじめ課題をメールで渡しておき、近くのスタジオを借りて練習する。
全員学生なので、ある程度時間はある。あらかじめ渡された課題はみんな真面目にやってきてくれる。
メンバー達との合同練習は週2日。あらかじめ課題をメールで渡しておき、近くのスタジオを借りて練習する。
全員学生なので、ある程度時間はある。あらかじめ渡された課題はみんな真面目にやってきてくれる。

今度の練習は、特別ライブのため新曲を3曲追加したから、ちょっと課題が多かったかなと思ったが、特別ライブが出来るということもあってか、みんなちゃんと自宅で個人練習してきてくれた。

取りあえず、新曲を合わせて数回演奏してみる。すると、メンバー達から色んなアイディアが出てくる。「ここ、こうした方がきまるよ。」「エンディングは、こうした方が新鮮だよ。」・・

メンバー達もやっぱり音楽好きなヤツばかりだ。家ではジャズやロック漬けになってるのだろう。バンドマスターの俺でも浮かばないアイディアを色々出してくれるから助かる。
おっと俺もみんなの手前、みっともないギターは弾けない。

いつものとおり、ケイコは黙々と譜面を追いかけているだけだ。まあ、クラシックからロックに入ったのだから、ロックのアイディアなんて浮かばないのが当然かもしれない。
だが、いつものとおりミストーンが少ない。しかし今回は特別ライブの話しを聞いてやる気を出したのか、遅刻もせず、定期練習への情熱がいつもと違う。

さて、練習時間も終わりに近づいた。みんなが課題をちゃんと家で個人練習してきてくれたおかげか、思ったより新曲の出来上がりも良くなった。まずまずだな。
メンバー達に「お疲れ!今度の特別ライブは、思いっきり盛り上げてやろうぜ。」と、少し練習に疲れたような顔をしているメンバーに声をかけて、その日の合同練習は終わった。
特別ライブの直前。楽屋で同じステージに出演する他のバンドの面々を見て、メンバー達は少し気後れしている様子だったが、まあ無理もないな・・・。

練習は十分にしたはずだ。後は俺達にできる演奏を客に聴いてもらえばいいだけだ。受けなかったとしても、その時は俺達の演奏はそれまでだったと思えばいいだけ。
何も固くなることはない。いつもの俺達どおりにやればいいだけさ。
ステージに立つ前に、「いつもの調子で行けば良いだけだよ。俺達のロックで、客を楽しませようぜ!」と、軽くカツを入れた。

俺の気持ちがみんなに伝わったのか、メンバーはすぐにリラックスしたようだった。
手前味噌だが、こういうときの俺のメンバーへの勇気づけの言葉をメンバー達は素直に受け止めてくれる。俺は普通に励ましているだけなのだが、メンバー達にとってはそれで何より勇気付けられるらしい。

さて、俺達の出番だ。みんな、ステージに行くぞ!
特別ライブの途中のことは、俺も気持ちが高揚していたのか、俺もいつものライブハウスでの演奏のように良く内容を正確かつ冷静には憶えていない。
なにしろ、最初に新曲を演奏して、客が思ったより盛り上がってくれた。それで内心、ほっとした感じだった。

客が盛り上がってるな。途中、穴を作らないで、このまま引っ張っていけばいい。メンバーも一曲演奏したら、さらにリラックスした様子だった。ヴォーカルのAの喋りと演出は、いつもながら客を盛り上げ続けさせてくれる。今日は声量もいつもよりあるな。

ベースのBとドラムのCは、先日の最終合同練習のときより、コンビネーションが洗練されていた。こいつら、俺に黙ってリズムセクションだけでパート練習していたな。
ギターでリズムを刻みながら、思わず俺は、ベースのBとドラムのCを見てニヤリとしてしまった。こういうヤツらがいて、バンドが成り立ってる。俺は感謝しなくちゃなと、ステージで演奏しながら思っていた。

でも俺も負けてないぜ。客が盛り上がっているのを見て、ギターソロをステージ前に出てアドリブでやってみた。終わって振り向くと、ベースのB、ドラムのC、そしてキーボードのケイコ、ちょっと驚いたような顔をしていたが、すぐに笑顔に変わった。
後ろの客席からは、客の盛り上がった声が聞こえていたのを憶えている。
特別ライブが終わった。まずまずだったな。客も盛り上がっていたし、演奏、演出の出来もまあまあだ。楽屋に戻って、ステージで吹き出した汗をタオルで拭きながら、俺はひとまず安心していた。

気が付くと、ベースのBとドラムのCがいない。ケイコに聞いたら、俺達より後の出番のバンドの演奏を客席に行って見ているらしい。あいつら、本当に音楽が好きなんだなと、またも俺はニヤリとしてしまった。

ヴォーカルのAは、少し疲れたのか、頭からタオルをかぶり、イスに座ったばかりで動かなかった。まあ、あれだけ頑張って歌い、ダンスを見せたのだから、疲れて当然と言えば当然だが。

ケイコは、自分のステージでの演奏が心配だったのか、自分の演奏がどうだったか俺に聞いてきた。俺は「最高だったよ。言うことない。ありがとう。」と言った。いつものケイコとは違う、嬉しそうな顔をしていた。

一通り全部のバンドの演奏が終わったので、俺達はそのホールの裏口から出て帰ろうとした時だった。後ろから、あのレコード会社の人の声がした。

「君達、最高じゃないか。もっと他にライブがあるから、出てみる気はないか?」と言ってきた。

俺は他のメンバー達の顔色を見て、すぐに、「はい。俺達でいいなら、いつでも出させてください。」と答えて、俺達はそのホールを去った。
それから、何度となく、同じ様なライブに出ることになり、ますますメンバー達は音楽に対して情熱を持つようになった。以前より増して、練習にも力が入るようになってきた。

毎週出ているライブハウスでの演奏は、それまでは、練習の結果を客に聴いてもらうものだったが、いつのまにか、ライブハウスでの演奏そのものが、特別ライブのための練習になっていた。

ライブハウスの支配人からは、俺達の演奏は喜ばれていたようだ。もっと大きなライブを定期的にこなす様になってから、俺達の演奏を聴く目的の客が少し増えたようだ。
大きなライブとは言っても、しょせんは、メジャーデビューもしてないバンドが出るライブだがね。

でも、俺達はそれで満足していた。まさか本気で音楽で喰っていこうなんて思ってるメンバーはいなかったし、趣味の延長が少しはプロの世界から認められているってだけで十分満足していた。

今から思えば、あの頃が一番良かったのかもしれない。あのままでいれば、俺達メンバーは一生、良き友人として、付き合っていけたのかもしれない・・・・。俺達に取っては音楽も大切だが、友人はそれ以上に人生の財産だと、メンバーの誰もが思っていた。

だが、ある日のあの事から、それが壊れて行った・・・・・。
大きなライブステージをいくつか踏むうち、俺達とあのレコード会社の人はすっかり顔なじみになっていた。

それまで、よくメンバー達だけで飲みに行くバーに、その人もたびたび来る様になっていた。

あのレコード会社の人はきっと俺達みたいな、アマチュアバンドを多く知っているのだろう。おそらく俺達は、その多くのアマチュアバンドのひとつにしか過ぎない。だが、そんなことはどうでも良かった。
音楽を好み、バンドをする者にとって、演奏の機会が与えられ、聴衆も盛り上がって聴いてくれる。それだけでも、この世界では幸福だと思わなければならない。

だが、何度となく、そのレコード会社の人と飲んでいるうち、その人は、バンドマスターの俺にこっそりと、「折り入って、バンドマスターの君と二人だけで話しがしたい。この件は他のメンバーには秘密にしてくれないか?」と言ってきた。

俺は少し戸惑った。「他のメンバーに秘密の話しってなんだろう。言いたいことがあるなら、メンバー全員の前で言って欲しい。」と思ったが、普段世話になっている人からの申し出だ。断るわけには行かない。

メンバー達が飲み終わって、その日解散した後、俺はそのレコード会社の人と、他の店で一緒に酒を飲みながら、話しを聞くことにした。
12伊達 堕伊庭 ◆AeB9sjffNs :04/07/22 07:50
他の店のカウンターに座り、俺は、いつもと違う妙にこわばった顔をした、レコード会社の人から、「これから話す私の話しは、今のところ、二人だけの話しにしてくれ」とさらに念を押さた。
ますます俺は、「何の話しなのだろうか。」と疑念を持ったが、話しだけは聞き続けた。

「ヴォーカルのA、それとベースのB、あの二人はプロの世界では使い物にならない。君のギター、ドラムのCと、ケイコさんはプロの世界でもやって行ける。どうだ?
あのAとBを、私の薦めるメンバーと入れ替えれば、君達をもっと大きなステージに立たせることができる。メジャーデビューも夢じゃないかもしれない。
いやいや、バンドマスターの君に取っては、メンバーを裏切ることは、何よりつらいことは理解できるよ。でも、君もバンドマンなら音楽の世界でもっと認められたいだろう?
ここでもっと大きく成長したいなら、つらいのを我慢してヴォーカルのAとベースのBは切れ。すぐに答えを出せとは言わない。考えておいてくれないか。」

俺は愕然とした。今まで苦労を共にしてきたメンバー達を裏切れというのか。できっこない。それに、俺達はプロミュージシャンを目指して音楽をやっているわけじゃない。
メンバーどうしの友情も人生の財産だと思っている。もちろん、メジャーデビューも夢だが、まさか、そんな夢が現実になるかもしれないなんて・・・。

唖然とした俺の顔を見たそのレコード会社の人は、ちょっと笑い顔を浮かべ、一人でその店の勘定を済ませたと思ったら、また俺のところに来て「いい返事を待ってるよ。」といって、一人でその店を立ち去ってしまった。

俺はその人が立ち去った後、しばらく何も考えることはできず、ただ、グラスを持ちながら小刻みに震える手を見つめていた。
13名無SEA:04/07/24 09:07
海に無縁な奴が、台場になってショップで成り上がって、客からぼった来る話しか?
14名無SEA:04/07/24 18:17
>13
なんでイントロがバンドの話なの?
もしかして、バンドマスターとダイブマスターをかけてんじゃね〜の?
15名無SEA:04/07/24 20:40
これからのあらすじ

バンドマスターをやってた俺は、スカウトをされプロになったが鳴かず飛ばずで
半ばやけくそになっていた時に、海に誘われダイビングに出会う。
頭から音楽を消し去ろうと必死にダイビングに打ち込む俺。
そして、いつしかインストラクターになり、海とともに生きる様になる。

海とともに生きる生活の中で、幾多の出会いと別れを経て、さら本物のダイバーを
目指すようになる。

ところが袂を分かった昔の仲間が、突如強力なライバルとして現れ、俺の行く手を
阻む様になった。そのライバルとの葛藤を抱えつつもデットヒートを繰り広げる俺。
そしてついに悲劇が俺を襲った。

その悲劇から逃れるかのように、日本を離れ彼の地で心をいやす日々。
そのゆっくりとした日常の中で再び音楽がこの手の中に戻って来たのであった。
 
16名無SEA:04/07/24 20:49
なんかメタメタなストーリー展開だなあ
1715:04/07/25 09:04
>16
このメタメタっぷりが粋なの。
1815:04/07/25 09:11
スレ主さん、
>13-17なんかほっといて続き読まして。
俺はそれから深い迷いに悶々とする日々を送ることになった。この件は秘密にしておいてくれとレコード会社の人からは言われていても、いつまでこのままメンバー黙っていていいのだろうか?罪悪感や不安感が俺を苦しめ続けた。

くり返し言ってきた様に、俺達はプロミュージシャンを目指して音楽をやって来た訳ではない。純粋に音楽を愛し楽しみたかったからバンドをやってきたのだ。俺も含めたメンバー全員のその気持ちに揺るぎがないなら、この件をメンバーに話す必要はない。

だが、俺もメンバー達も音楽を純粋に愛するバンドマンだ。遠い夢だと思っていたものが目の前に現れたら、心は揺らぐはずだ。事実、今の俺さえも揺らいでしまったいるのだ。

もしメンバー達の心にも揺らぎがあったら?この件をメンバーにずっと話さずにおき、後でこの話がメンバーに知れてしまったら?俺は、メジャーへの夢を絶った者として、メンバーから恨まれるかもしれない。

では、この件をメンバー達に話すか?
だが、メジャーへの夢にかけるなら、ヴォーカルのAとベースのBを入れ替えるという条件なのだから、メンバーを裏切り見捨てることになる。

かといって、ヴォーカルのA、ベースのB2人メンバーを裏切り見捨てるのを覚悟で、ドラムのC、ケイコだけに、こっそりと事情を話したところで、ドラムのCとケイコにしてみれば、
今度はいつ自分がヴォーカルのAやベースのBと同じに、自分が裏切られるかわからないという疑念の気持ちを持たせてしまい、今までのようにバンドマスターとして俺を信じてはくれまい。

バンドマスターとしてメンバーからの信頼を得られないということは、致命的であり、一度でもメンバーからの信頼を失えば、それは取り戻すことのできない、決定的な大失敗なのである。
しかも事が事だ。メンバーを見捨てる結果になるかもしれない話なのだ。

いずれにせよ、メンバーに打ち明けなければならないことなのだ。どのみち打ち明けるなら早い方がいい。機を逸するとメジャーデビューの夢も消えるかもしれない。

レコード会社の人は、俺とドラムのCとケイコに誘いをかけてきたのだ。最低でもこの3人のうち一人でもメジャーへの夢なんかないと言い出せば、この件はなかったことになる。

メンバーに話してみて、メジャーへの夢などないとメンバーが言うなら、そのときはメジャーにかける夢を捨てればいいだけの話じゃないか。半分開き直りだよ、自分にそう思い込ませるようにしていた。
なあに、つい先日まで、アマチュアバンドで十分だと思っていたのだから、メジャーへの夢が絶たれたところで、ダメでもともとってことだろう?

俺は、メンバー全員を集めて、誰を入れ替えるのか個人の名前を言わずに、レコード会社の人の話をメンバーに伝えるのが最善だと考えた。誰にも言わないでくれとレコード会社の人からは言われているが、それは無理な話だよ。正直俺ももうこれ以上苦しむのはいやだ。

そんなとき、ちょうどベースのBから電話があった。次回の集合練習の課題がメールで送られてこないがどうしたのか?という内容だった。俺は、次の集合練習はミーティングだと言い、俺の部屋に集まってもらうよう伝えた。
俺の部屋に集まったメンバーは、みんなけげんそうな顔をしていた。無理もない。ミーティングだけなら喫茶店や、メンバー行きつけのバーで酒を飲みながら話をしてもいい。わざわざ俺の部屋まで呼ぶことはない。

話の切り出しをするのにはやはり勇気を必要とした。だが、いつまでも躊躇していたって始まらない。俺は、ヴォーカルのA、ベースのBの名前も、入れ替えの人数も言わず、メンバー達に話し始めた。

「実は、あのレコード会社の人から、もっと大きなステージの話があった。もしかしたらメジャーデビューも夢じゃないとは言っていた。だが、それには条件があって、メンバー数人を入れ替えてくれ、っていう話しなんだよ。
この話はメンバーには秘密にしておいてくれと言われているが、いくらなんでもそれはできない。それで俺も悩んだ末、こうやって集まってもらったってワケなんだ。」

みるみるうちに、メンバーの表情は、驚き、迷い、喜び、それらが複雑に絡み合ったものに変わった。
「誰を入れ替えろって話だよ?」「もう返事しちまったのか?」「そこまでしてメジャーの夢が欲しいのかよ?」メンバー達は不安そうに声をあげた。無理もないことだ。
ケイコは「入れ替えるってどうせ私でしょ?」と言い出す。ヴォーカルのAは自分がまさか外されるかもしれないとだとも知らず、早合点して喜んでいる。
リズムセクションのベースのBとドラムのCは、無言のまま顔を見合わせたままだ。俺はそれぞれのメンバーの反応にただ、寡黙にうつむいているしかなかった。

結局、その日の気まずいミーティングは、翌朝まで及んだが、メンバー達の主張は様々であり、とうとう意見の一致を見ることはできなかった。

「バンドマスターの判断に任せるべきだ。結果については誰も文句を挟まない。」
「俺達はプロミュージシャンを目指しているんじゃない。メンバーが別れてまで大きなステージなど望むべきじゃない。」
「誰を入れ替えるのかはっきりとしてもらわないと、相談にもならない。」
「誰かを切ってでもメジャーデビューを目指すべきだ。」
「レコード会社の人とバンドのメンバーのどっちを信頼してるんだ。そんな話だったら自分はこのバンドを辞める。」

様々な意見があったが、どれを選ぼうが、俺にとってはつらく、また迷う選択だった。メンバー達も同じ思いだったに違いない。
俺は、これまで何とかバンドのメンバー達をまとめてきたつもりだ。だが俺はここで自分のバンドマスターとしての限界を、切実に思い知らされることとなったのである。

さらに追い打ちをかけるように、誰かが俺に言った。「メンバーを入れ替えれば、メジャーなステージに立てるって言ったって、その入れ替えのメンバーの中には、どうぜバンドマスターのお前は入っていないんだろ?いいよな。お前だけ。うらやましいよ。」

この一言が今までバンドマスターとして俺のやってきたことを、一瞬にしてすべて破壊つくした。これまで作りあげてきたものが俺の胸の中で音をたてて崩れ落ちていくようだった。
その後、メンバー達、少なくとも俺にとっては、バンドに対して良い思い出は残らないものになった。

果たしてバンドは解散することになったのである。話し合いがつかず、半ばメンバーどうしでけんか腰になってしまい、結果として解散を選択するしかなかったのだ。

俺は、バンドマスターとしての自分の不甲斐なさと、今まで楽しく音楽をやってきたこのメンバー達とも同じステージに立てないことが混じり合って、悔しさと自己嫌悪に包まれた。

だが、「こんなチャンスを手放すなんて、そんな馬鹿な話はない」という意見もあったため、バンドは解散するが、それぞれの判断でレコード会社の人と直接話をするのは個人の自由であり、それには誰も口を挟まないという約束をした。

それはバンドのルールというより、友人どうしの堅い約束とも言えるものだった。

しかし、せめてもの救いは、俺が苦渋の選択をしたことをメンバー達全員が理解してくれていたことだった。今後、一緒に音楽ができなくても友人どうしでいようという俺の提案には皆賛成してくれていた。
それから以後、俺はギターを手にすることもなくなった。音楽を愛する気持ちは失っていなかったが、自分のバンドマスターの力量不足からメンバー達へ悪いことをしたという思いが抜けなかったこと、
そして何よりメンバー達を思うと、自ら楽器を持たないことが、今まで俺を信頼してくれ、一緒に頑張ってきてくれたメンバー達への謝罪になるかもしれないと思ったからだ。

とは言うものの、正直なところ、バンドマスターとしての自信を失った自分とあの日のメンバー達のことを思うと、とてもギターを手にする気にはなれなかったのだ。

誰かが言った「・・・いいよな。お前だけ・・・。」その言葉が、脳裏からどうしても離れなかった。
もちろんそれからバンドのライブでの演奏はなくなった。俺とレコード会社の人とも会う事もなかった。音楽をやってゆく気がしなくなったのだから、メジャーへの夢なんて沸いてくるわけがない。

そしてバンドが解散した後は、メンバーとも段々疎遠になり、いつしか会うこともなくなっていった。考えてみれば、メンバー達を結んでいたのは音楽だけだったのだ。それがなくなった今、別段会う必要はなくなっていた。

そんな日々を過ごすうちに、俺も卒業年次生となり、周囲の学生達との話題は、もっぱら就職活動のことになっていた。

入社試験の結果だけが頭をよぎり、採用、不採用の通知に一喜一憂する毎日だった。いつしか俺のギターは埃をかぶり、弦は錆びつき、部屋の端に追いやられていたが、気にもとめないようになっていた。

暑い夏もそろそろ終わりを告げようとし、卒業論文の締め切りを気にしながら、時折窓の外を見ると、涼しい風を感じ、秋の訪れを感じていた頃だった。
時は過ぎ、俺は大学を卒業し、そこそこの会社に就職して2年以上が経っていようとしていた。俺は毎日毎日会社の仕事に追われていた。

会社での仕事は、全部うまく行くものではない。社会の矛盾、不条理、正しいものが必ずしも勝者ではない・・・。どれが正義なんていう話はまったく不毛である。理想論など、ゴミほどの価値しかない。

社会で生きて行くためには、両手で汲みとった、たった一杯の水と引き換えに、虚像、嘘、悪意、偽善、それらを平然と飲み込めるようでなければならない。

ある日いつものように、取引先会社の社員に接待の酒を勧め、帰りのタクシーの運転手にチップを渡しながら粗相のないように頼み、それを見送った後で、今日の仕事もこれでやっと終わったなと一息ついて、カウンターにいたママに改めて、バーボンのロックを頼んだ。
俺は一人カウンターでグラスを持ちながら、一人飲む酒で仕事の疲れを癒すひとときを過ごしていた。

その時だった。酒場に流れるBGMに懐かしい音が鳴っているのに気付いた。このドラムとキーボードの音は・・・。

そう、学生時代一緒にバンドをやっていた、Cのドラムとケイコのキーボードの音だ。あいつら以外にこんな音を出すヤツはいない。すぐに直感した。間違いない。

俺は思わず格段に腕の上がったCとケイコの演奏に驚いて、しばし真剣に耳を傾けていたが、ベースはBではない。ヴォーカルはもちろんAではない。

あいつら、本当に音楽の道で生きていこうとしていたのか?すっかり忘れていた過去の友人を思い出し始めた。

歌詞は誰が書いたのだろう・・。遠く望郷の海への想いを歌っていた。蒼く美しいかけがえのない海へ捧げる歌、この歌詞は俺達がバンドで歌っていた歌詞と内容が非常によく似ていた。ただ、それは俺が作詞したものではないと思っていた。

聞き終えると、いつかのレコード会社の人と二人きりで飲んだときと同じ様に、小刻みに震えている手に、俺は気付いていた。
30名無SEA:04/07/26 01:27
読みにくい。

文才なし。
31名無SEA:04/07/26 17:14
>30
それを言っちゃだめって。

音楽とダイビングをどうつなげるか楽しみにしてるのに。

でも表現が回りくどいのは確か。
32名無SEA:04/07/26 22:13
スレ主さん、
>30-31なんかほっといて続き読まして。
33名無SEA:04/07/28 18:02
わたしからもおながいします。
音楽とダイビングがどうつながるか楽しみにしてるのに、
読ませてくんないので、気になってしょうがないです。
34名無SEA:04/10/13 00:03:22



覚醒剤常習犯の精神異常者!北澤晃男(35歳無職パラサイト)


【精神異常】きたざわあきお パケ2【覚せい剤】
http://sports7.2ch.net/test/read.cgi/msports/1087733973/l50








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【精神異常】きたざわあきお パケ2【覚せい剤】
http://sports7.2ch.net/test/read.cgi/msports/1087733973/l50





35mocorocomo:04/11/13 11:37:04
test
36名無SEA:05/03/09 02:20:12
テスト
37名無SEA:05/03/09 08:21:03
.
38名無SEA
田原浩一に習いrikakikuchiは逝きますた
http://www.give.co.jp/asdi/list/tech.html
                                           TDI カバーン
                   三苫健一さん 04/07/25  浅川圭子さん 04/07/11
小川まゆ子さん 04/07/11  小川基法さん 04/07/11  矢中光三さん 04/07/11
臼井裕美さん  04/07/11  日置忍さん  04/05/24  高野秀明さん 04/05/24
笠井信利さん  04/05/24  佐川純さん  03/10/03  田原浩一さん 03/10/03
高橋陽子さん  03/06/29  杉本圭司さん 03/06/29  十河則子さん 03/06/29
http://www.tdi-japan.gr.jp/news/archive.html
2004 年 2 月
IANTD Deep Diver
IANTD Advanced EANx Diver
2004 年 3 月
IANTD Inspiration CCR Diver
http://www.qab.co.jp/01nw/04-07-27/index8.html
                                        TDI イントロ ケーブ
                  小川基法さん 04/10/02  小川まゆ子さん 04/10/02
臼井裕美さん 04/10/02  浅川圭子さん  04/10/02  高橋陽子さん 04/10/02
日置忍さん  04/05/28  高野秀明さん  04/05/28  笠井信利さん 04/05/28