佐藤の音楽にまつわる物語

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1名無しの歌が聞こえてくるよ♪
本スレです。物語は随時進行していきますので、よろしくお願いします。
2佐藤:2008/12/23(火) 10:09:34 ID:a0V5JRy6
こんな俺の話を聞いてくれ!頼む!
3佐藤:2008/12/23(火) 10:10:04 ID:a0V5JRy6
俺は中学生でした。北海道にいました。
4佐藤:2008/12/23(火) 10:16:37 ID:a0V5JRy6


レスは自由にしてくださってかまいません。感想でもいいです。法に触れないなら何書いてもいいです。
質問があれば、答えられる範囲なら答えます。よろしくお願いします。
5佐藤:2008/12/23(火) 10:17:15 ID:a0V5JRy6
書くと苦しいよ。でも書こう。
6佐藤:2008/12/23(火) 10:23:14 ID:a0V5JRy6
彼女との出逢いは衝撃的だった。
7名無しの歌が聞こえてくるよ♪:2008/12/23(火) 10:23:54 ID:RLDZYzNx
なにこのスレ、昭和?
8佐藤:2008/12/23(火) 10:24:26 ID:a0V5JRy6
僕は中学の入学式の日、教室にいたのであった。
周りは割りと静か。でもちらほら喋り声。
周りはDQNそうな人ばっかりだった。
俺は入学式に向かった。
騒がしい。
そして、校長先生が来た。
入学式は終了した。
そして、教室に戻った。
やっぱりDQNそうな人ばっかりだった。
Aが話しかけてきた。
「どこから?」
「××」
「××か。俺は××」
ここは私立中学である。
A「勉強、大変だったよな」
俺「大変だったな」
A「音楽聞く?俺、××が好きなんだよね」
××とは今流行りの音楽グループのことである。
俺「俺は○○が好きだな」
○○とは、そんなに売れてないが昔からの音楽グループである。
A「○○?古くないか。ところで、部活はどこ入るんだ?」
俺「まだ、決めてない」
A「そうか。俺はやっぱりサッカーかな。女の子にモテモテだぜw」
当たり障りない会話を繰り返した。
担任が入ってきた。女の先生だった。
改めて、周りを見回したが、やっぱりDQNそうな人
ばっかりだった。そんな中、俺は幻想を目にしたのである。
長い綺麗な黒髪の澄んだ目をした少女が座っていた。
それは正に幻想だった。
俺は見とれた。とりあえず見とれた。そして心の中でこう思った。
「神様ありがとう」
9佐藤:2008/12/23(火) 10:25:00 ID:a0V5JRy6
担任「まずは班を作ります。」
その時、奇跡が起こったのである。
何と、あの子と一緒の班。その時、俺は心の中で、こう思った。
「神様ありがとう」
「班で○○を作ってください。」
共同作業で仲良くなろう、というヤツである。
班は4人だった。俺とあの子とAとある女子Bである。
A「じゃんけんで分担しようか」
その時、奇跡が起こったのである。
俺とあの子で作ることになったのだ。その時、俺は心の中で、こう思った。
「神様ありがとう」
10佐藤:2008/12/23(火) 10:25:38 ID:a0V5JRy6
「お…おれ…佐藤っていうんだ…よろしく…」
やべ…何でふるえてんだ、俺…
「原田です。こちらこそよろしく」
すんなりと答えた。
俺「原田さんって音楽とか聞くの?」
原「たまに聞くかな」
俺「俺××が好きなんだよね」
××とは、Aが好きな今流行の音楽グループ。さっきAに○○が好きと言ったら
微妙な反応をされたので、反応への期待込みで本心を偽って言った。
原「私、××ってあまり好きじゃないわ。何か今流行りの音楽って気がして」
俺「そっそう…」
あまりにもストレートな反応に躊躇してしまった。
俺「部活は入るの?」
原「テニス部に入ろうと思ってるの」
その時、俺はこう思った。
「俺も入ろう」
11名無しの歌が聞こえてくるよ♪:2008/12/23(火) 10:30:30 ID:RLDZYzNx
つまんね
12佐藤:2008/12/23(火) 21:27:15 ID:a0V5JRy6
作業は順調に進んでいった。そして作業を完成させた。
そして、ある放課後、
担任「それではこれで終わります」
階段を下りると、原田さんが歩いていた。テニスバッグを持っている。
俺「原田さん」
原「佐藤くん、どうしたの?」
俺「俺もテニス部入ろうかなと思ってて。テニスバッグ持ってるから」
原「そうなの?じゃあ、一緒にコートに行こう?」
コートでは熱い練習が繰り広げられていた。
「新入部員はとりあえず玉拾いをしてもらう。俺はキャプテンの中田だ。
よろしくな。」
俺はいままでテニスをしたことがなかったので、先輩たちの熱いプレーに
釘付けになった。そして、俺は原田さんの姿を探した。
原田さんは体操服姿で同じように玉を拾っていた。かわいいな。
日が進むにつれて、テニスができるようになった。
ここで驚いたのが、原田さんがとてもテニスが上手いことだった。
俺「原田さん、上手いね。テニスやってたの?」
原「小学校の時、クラブチームに入ってたの。」
俺は、原田さんと話し、テニスをがんばったり、勉強をがんばったりしている
原田さんを見ていて、とても幸せな気持ちになる日々を送った。それは正に、
俺にとって薔薇色の青春だった
13佐藤:2008/12/23(火) 21:27:51 ID:a0V5JRy6
俺は夜、眠りにつく時、目を閉じて原田さんを思い浮かべていた。
普段は落ち着いてクールなんだけど、時々笑う笑顔が眩しい。そんな女の子。
俺は、原田さんの笑顔を思い浮かべ、幸せな気持ちを抱いていた。

そして俺はあらぬことか、こんな妄想を抱いてしまっていた。
原「佐藤くん、アーン♪」
俺「アーン♪おいしい!原田さんの手料理」
原「本当?嬉しいな♪」

それは普段の原田さんのテンションとは似ても似つかぬテンションだったが、
自然とそんな妄想を抱いている自分を発見し、一人照れていたのであった。
それは俺の初恋だった。彼女と結婚し、子を産み、幸せな家庭を築きたい。
そう、本気で思っていた。
14佐藤:2008/12/23(火) 21:28:41 ID:a0V5JRy6
ある日、Aがテニス部に入部した。そして俺に、こう言った。
「テニスも女にモテるしなwしかも女の子と一緒に部活できるなんて最高
じゃねぇかw」
Bもテニス部に入部した。Bは女子で名字は村田である。
ある日、加藤(A)がおもむろに俺に言ってきた。
「俺、村田さん(B)と付き合うことになったwウハウハだよwマジでw」
村田さんは、ギャルっぽくて口は少々悪いが、美少女で、正直、加藤を妬ましく思った。

しかし俺には原田さんという心の(?)彼女がいたので、全く気にならなかった。
彼女以外は目に入らないほど、彼女のことが好きだった。

中学2年になった。俺たちはというと平凡な日々だった。
偏差値の高い私立中学なので毎日勉強をガリガリ、放課後は部活と、
忙しい日々を送った。

俺は原田さんに告白しようと思っていた。しかし、できずにいた。
そして、2年の2学期の終わり辺りの、部活終了後、俺は原田さんに告白
することを決めた。

俺「原田さん」
原「何?」
俺「ちょっと話があるんだけど、いいかな?」

俺は原田さんを人気のない場所に呼び出した。
俺「俺、原田さんのことが、ずっと好きだったんだ」
勇気を振り絞って、こう言った。平静を装っていたが、内心は心臓が
バクバク状態だった。手に汗が滲んだ。
原田さんは少し下に俯いた後、一言こう言った。
「ごめんなさい」
15佐藤:2008/12/23(火) 21:29:21 ID:a0V5JRy6
俺は気持ちが一気に沈んだ。初めての恋は見事に砕けた。
しかし、俺は未練がましく、こう言ったのだった。
「好きな人、いるの?」

彼女はまた少し下に俯いて、
「ごめん」
そう言って、走り去ってしまった。俺はただ、その場に立ちすくんでいた。

俺は無気力な日々を送った。あれから原田さんとは一言も会話を交わしていない。

俺「あ…原田さ…」
原「…」

原田さんは俺を避けている。
薔薇色の日々は、薔薇ように散ったのであった。
16佐藤:2008/12/23(火) 21:30:12 ID:a0V5JRy6
ある日、原田さんから俺に話し掛けてきた。

原「佐藤くん」
俺「原田さん…」
原「ごめんね、最近。その…ちょっと、あって」

原田さんはその大きな目を伏せた。
原「実はね、私、本当は好きな人がいるの。」

俺は息をのんだ。
俺「好きな人って…?」
原「…その…川島先生…」
俺「せ、先生…?」

俺は彼女の発言が信じられなかった。先生は女である。
彼女は、また大きな目を伏せた。
その雰囲気から、俺はすべてを把握した。いや、しかし、そんなことって…。
その時の俺には、あまりにも衝撃的な発言だった。嘘と信じたかった。
川島先生は、俺たちの担任で、テニス部の副顧問でもあった。若くて、
美人で、人気のある先生である。もしかしたら先生の隠れファンも存在
しているのかもしれない。顧問は、高齢の男の先生だが、部活には、
ほとんど関心がなく、あまり来たことがなかった。その変わり、副顧問の
川島先生がよく来てくれていて、皆の面倒を見ていた。
俺「でも、どうして…?」
原「先生、楽器やってるの。私が音楽が好きって言ったら、こっそり教えてくれた。
それで、音楽室で先生のピアノ聞かせてもらったの。もう凄く綺麗な音で。先生も綺麗で…。
私、どうしたらいいんだろう…。胸が苦しくて…」
放課後、川島先生が来ていた。何食わぬ顔で涼しい表情をしている。
原田さんは今日も一生懸命、練習をしている。俺は、そんな原田さんと
川島先生を見合わせ、思わず、先生にテニスのボールを投げつけたい
衝動に駆られた。もちろん、そんなこと、できるはずがないが。
俺も胸が苦しかった。
17佐藤:2008/12/23(火) 21:31:17 ID:a0V5JRy6
ある日、加藤(A)が俺に、こう言ってきた。
「佐藤…やばいよ…村田さんが妊娠したって言い出したんだ…本当だよ…嘘じゃない…
もう俺の人生終わった…佐藤…助けてくれ…俺、人生終わりたくないよ…」
その数日後、学校は、加藤と村田さんの妊娠騒動の話題で
持ちきりになった。

その数日後、村田さんは転校、加藤は出席停止になってしまった。
18佐藤:2008/12/23(火) 21:31:57 ID:a0V5JRy6
俺は一本のギター買った。原田さんに、川島先生のピアノ以上の
音を聴かせるためである。毎日練習し、一曲を完璧に弾けるぐらい
までに上手くなるつもりだった。
手には、テニスでは作ったこともないような、マメが何箇所にもできて
いて、その何箇所かには血が出て来ていて血マメになっていた。

ギターを弾いていると、手に激痛が走る。マメが潰れ破れるのである。
手を見つめると、血やらマメやらでボロボロだった。それはいつか見た
原田さんの川島先生の授業のノートに似ていた。
そして、一曲を完璧に弾き、そして歌えるぐらいになった。
この曲を原田さんに捧げたい、そう思った。
俺「原田さん」
俺は原田さんを呼び止めた。
原「何?」
俺「ちょっと、いいかな」
19佐藤:2008/12/23(火) 21:32:28 ID:a0V5JRy6
俺は原田さんを近くの川縁に呼んだ。そこで俺はギターを持ち、
あの一曲を演奏し、歌った。それは中島みゆきの「空と君との間に」
である。

「君が笑ってくれるなら 僕は悪にでもなる」

俺は力強く、歌った。
原「ありがとう。気持ち、伝わってきたよ。」

原田さんは笑ってくれた。
原「でも、私、佐藤くんの気持ちには応えられない。ごめんね。」
そう言った。

その時、俺はなぜか幸せな気持ちになっていた。彼女のために全力を尽くし、
歌った。たとえ、気持ちが届かなくても、あの時の彼女の笑顔を俺は忘れないだろう。
20佐藤:2008/12/24(水) 21:13:34 ID:LzHvZtRG
その頃から、俺は自分で作詞作曲するようになっていた。独学で音楽を学び、
時々、ギターを買った店の、音楽に詳しい店主にいろいろと教わったりして、
曲を作っていた。全ては原田さんのためだった。また、あの笑顔が見たい、その
一心で、俺はギターを鳴らし、歌った。
また、加藤が、出席停止から回復し、戻ってきた。しかし、あの事件
のことは一切話さず、俺もそのことについて、加藤に聞かなかった。
俺は曲を作っては、原田さんに聞かせていた。普段の何気ない毎日から
フレーズを考え出し、書いたものだが、その一曲一曲に、原田さんは
感嘆し、また、あの時と同じように笑ってくれた。

それは俺にとって、第2の薔薇色の日々だった。好きな人に自分への気持ち
がなくても、その人が笑うだけで幸せを感じられるということを俺は
初めて知った。
21佐藤:2008/12/24(水) 21:21:20 ID:LzHvZtRG
ある日、加藤が俺にこう言ってきた。
加「佐藤、おまえ原田さんとできてるのか?」
俺「そんなわけない。それに彼女、好きな人がいるって」
加「川島先生だろ」
俺「何で、おまえ、それ」
加「そのぐらい見てればわかる」
俺「…」
加「おまえは原田さんのことが好きなんだよな」
俺「…」
加「俺は、原田さんが好きだ。」
俺「おまえ、自分が以前何やったか忘れた訳じゃないよな?」
加「…」
俺「彼女に近付いたら、許さないぞ」
加「俺は、はめられたんだ。あの女に。あの尻軽女に。俺だって、ちゃんと
恋したかった。でも、誘惑に勝てなかったんだ。本当は最初から、俺は
原田さんが好きだった。でも、おまえが原田さんと、いつも一緒にいるから…。」
俺「原田さんは本気で先生が好きなんだぞ」
加「そんなのすぐに冷めるさ。同姓だぞ。とにかくおまえには負けない」
そう言って、加藤は去って行った。
22佐藤:2008/12/24(水) 21:21:51 ID:LzHvZtRG
俺は相変わらず、曲作りに没頭していた。そんなある日、川島先生に呼び
止められた。
川「佐藤くん、ギターやってるんだってね。」
俺「えぇ、まぁ」
川「曲も作ってるんだって?君と仲のいい原田さんに聞いたんだけど。」
俺「素人レベルですけど」
川「でも素敵じゃない。実は私も昔音楽をやっててね。今は教師だけど、
今でも音楽が好きで、楽器やってたりしてるの。もし良かったら、今度
セッションなんてしてみない?音楽室とかで。」
俺「遠慮しときます。先生に時間取らせるの、悪いので」
俺は不機嫌をほとんど隠さずに答えた。
川「そうかぁ。でも、もし何か音楽のことで聞きたいことがあったら言ってね。
ここだけの話、私の父、結構有名な音楽家なのよ。かなり詳しいと思うから。
それじゃあね。」
俺「ちょっと、待ってください」
川「?」
川島先生は振り向いた。
俺「音楽家って?」
川「あぁwレコード会社で結構いいところのポジションなのよ。自身も
音楽をやっててね。佐藤くんも将来音楽家になりたいのなら、父に言って
見てもらってもいいわよwなんてね。」

俺は自分自身の利己心が湧き上がってくるのを肌で感じていた。
23佐藤:2008/12/24(水) 21:22:25 ID:LzHvZtRG
俺「川島先生」
俺は川島先生を呼び止めた。
俺「前に言ってた、音楽のことなんですけど、先生と一度、一緒に演奏してみたいと
思って」
川「あら、そう?音楽家に引かれたかな?wいいわよ、じゃあ今日の放課後
音楽室にいらっしゃい。部活はもう引退してるから無いわよね。」
ガチャッ 
俺は音楽室の扉を開いた。
川「あら、早かったわね。じゃあ早速、始めましょうか」
俺はギターケースからギターを取り出し、手に構えた。
川「ずいぶん古い感じのを使ってるのね。父に言って、もっと新しい
良いのを譲ってあげようか?お金は気にしなくていいから。こういう時、
使えるわよねw地位って。アハハ」
俺「アハハ…」
俺は息をのんだ。
24名無しの歌が聞こえてくるよ♪:2008/12/26(金) 04:22:16 ID:G4b8lbVm
あげ。
この小説、小説板にも投下してみては?
ニコニコにアップするのも面白い。
2年後ぐらいにマジで映画化されてるかもな
25佐藤:2009/01/04(日) 15:52:45 ID:feu8FZ1o
川「じゃあ、まずは佐藤くんが得意な曲を弾いて聞かせてくれる?」
俺は一番得意な曲を先生に聞かせた。
川「ふーん、いい曲だね。何か感動しちゃったwじゃあ、その曲、
今度は先生と合わせて、演奏してみようか」
俺「即興できるんですか?」
川「もちろん」
そして、俺と先生は何度もセッションを繰り返した。先生のピアノの腕は
予想以上に上手く、原田さんを惚れさせるだけはあると思った。最初にあった
先生との溝が何だか縮まっていくような気がした。先生は気さくに笑いかけ
俺も音楽の世界を心から、その時楽しんでいた。そして、今まで一人でやって
いたことが、とてつもなく小さいことのような気がした。
川「今日は楽しかったわ。また、セッションしましょうね」
俺「はい」
川「それじゃあね。気をつけて帰るのよ。」

帰り支度をしている先生の後姿を見ていて、何て綺麗な髪なんだと思った。
そのモデルかと思うほどスラリと細見で、でも出るところは出ている体系は、
一瞬、原田さんへの想いが消し飛んでしまうかと思うほど、魅力的に見えた。
26佐藤:2009/01/04(日) 15:53:47 ID:feu8FZ1o
その後も、俺は何度となく先生を誘い、先生もまた俺を誘い、セッションに
高じていた。先生とセッションを繰り返すうちに、どんどん自分の技量が増していく
のがわかる。
「随分と、前より、上手くなったね」
そう先生からも褒められた。
俺「先生は、こんなに上手いのに、音楽家になれなかったんですか?」
川「そうだね。学生の時は本気で音楽家になりたかったけど、いつしか
それも無理かなって思い始めたんだ。ほら、音楽家って、安定しない
イメージがあるでしょ。だから気付いたら、諦めてて、ここにいた。
本当は後悔してるのかもしれない。もしかしたら、あの時、本気で夢を
追っていたらって思ったら…」
俺「追いましょうよ!」
俺は思わず言った。
俺「今からだって、まだ間に合いますよ。先生は若いんだし。夢を追いましょう!」
先生は微笑んだ。
川「ありがとう。何か佐藤くんと話してたら、あの時の気持ちを思い出したわ。
佐藤くんもその気持ち、忘れないでね。」

先生と微笑みを交わし合った。先生の瞳は綺麗だった。
その時、ガチャンッ、と微かに扉が閉じる音がしたと思った。
27佐藤:2009/01/04(日) 15:54:53 ID:feu8FZ1o
しかし、気のせいだと思い返し、そのまま先生と別れ、その場を後にした。
その頃から、俺はよく職員室に行き、先生と音楽について話していた。
川島先生の音楽についての知識は豊富で、本当にためになり、面白かった。

俺「今日、音楽室、放課後来れますか?」
川「いいけど、ちゃんと勉強もしてよね」
俺「はいwはいw」

実際、俺は勉強の方も順調で、常に学年上位だった。
俺は川島先生に好意があるのかもしれない。そう思い始めていた。
原田さんには悪いけど、俺だって男だし、先生が異性である以上、
そう思ってもいいじゃないか。そう思っていた。

そして、音楽室の扉を開けた。
しかし、先生はそこにはいなかった。変わりに、原田さんがいた。
原田さんは不機嫌そうに顔をしかめている。
28佐藤:2009/01/04(日) 15:55:26 ID:feu8FZ1o
原「先生、用事ができたから、今日は無理だって、そう佐藤くんに伝えておいてって」
変わらず、不機嫌な顔。
俺「あぁ、そうだったのか。残念だな」
ピクッと原田さんの眉が動いた。
原「私に嫌がらせしてるの」
彼女はそう言った。
彼女は続けた。
原「私が先生のこと好きだって、知ってて、そうやって、いつも
ベタベタしてるんでしょ?私に振られたからって、当て付けみたいなこと
止めてよ!」
俺「別に俺はそんなつもりじゃ。先生は音楽に詳しいし、演奏も上手だから
教えてもらってるだけだよ。」
原「そうなの?あの時のあなたの目は『先生が好き』って言ってるように見えたけど?」
俺「あの時って…?」
原「…とにかく私の先生に近付かないでよ!」
そう言うと、原田さんは俺の腕に掴みかかってきた。
原田さんは俺の腕を掴んで、俺をピアノの傍に押しやった。
原「こうやっていつも、先生とベタベタしてたんでしょ?ここで!」
原田さんの目は涙と狂気で満ちて、滲んでいるように見えた。
テニスで鍛えていたはずの俺の身体がピクリとも動かない。全身が
まるで金縛りにでもあったかのように、それはまるで蛇に睨まれた蛙のごとく。
そのまま、一気に力が抜け、その場に沈み込んだ。

原田さんは出て行った。
29佐藤:2009/01/04(日) 15:57:00 ID:feu8FZ1o
俺は今でも原田さんのことが好きだ。でも、それはもう諦めたつもりでいた。
だから、とりあえず接点のあった異性である川島先生に自分の恋心を無理にでも
置くことで、自分をごまかしていたことに気付いた。

そう、俺は今でも原田さんのことが好きなのだ。原田さんしか見ていないのだ。
先生と関わっていたのも、すべては音楽の知識を深め技量を磨き、原田さんに、
もっと素晴らしい音楽を聞かせたい、ただ、それだけだった。時の流れは、
時に、心の声を聞こえにくくする。そのことに気付き、ただその場に座り込み、
うなだれていた。
あの日から、俺は、放課後、川島先生を誘うのを止めた。
しかし、ある日、川島先生が俺を呼び止めた。

川「最近、来ないじゃない?どうしたの?」
俺「いや、やっぱり受験だから。勉強しなくちゃって。」
川「そうなの。でも、あなた、この前の模試でも第1志望A判定だった
じゃない。私は音楽パワーかなwなんてちょっと思ってたのに」
俺「すみません」
川「じゃあさ、もう一回だけ、来れない?そうだな、来週の今日。放課後、音楽室。
ちょうど、話したいこともあるし」
俺「話したいことって?」
川「うん。その時話すから。」

そう言って、川島先生は行ってしまった。
30佐藤:2009/01/04(日) 15:57:44 ID:feu8FZ1o
一週間後、放課後、俺は先生に言われた通り、音楽室に向かった。
ガチャッ
扉を開いた。先生はもうすでに来ていた。
川「やあ。じゃあ、まず久しぶりにセッションしようか。」
そう先生は言った。
もう随分とこなれたセッションになっていた。俺と先生の息はピッタリだった。
お互いの音に対して、お互いが、もうわかっているように反応していた。
セッションを終えた後、川島先生は急に深刻な顔になった。
そしてこう言った。
川「私、夢を追おうかな、って思ってるの」
俺「あの時の」
川「うん。あなたに言われて、励まされて、そして一緒に音楽を
やっていて気付いた。私、音楽が好きなんだって。上手くいくかどうかは
わからないけど、やってみたいの。挑戦してみたい。たった一度の人生
なんだから。そのことに気付いたの。あなたのおかげよ。」
川島先生は凄く真剣な顔で俺の目を見て、そう言った。その真剣な眼差しに
俺は何か、ただならぬものを感じた。
川「あなたがこの中学を卒業したら、一緒に音楽の世界に飛び込みましょう。
あなたには才能があるわ。それは私にだってわかる。飲み込みの早さ、
リズム感、曲作りのセンス…あなたとなら、きっと成功できると思うわ。
二人で夢を追いましょう。…私、あなたのことが好きなの。ずっと一緒に
音楽をやりたいの。」
俺「…その」
俺はひどく戸惑った。その時だった。
バタンッ
強く扉が開いた。
31佐藤:2009/01/04(日) 16:33:36 ID:feu8FZ1o
立っていたのは原田さんだった。
俺「原田さんっ!どうしたの?」
原田さんは顔面蒼白で、今にも倒れそうな顔をしていた。そして叫んだ
「嫌っ!!」
そう叫んで原田さんは走り去った。俺は、反射的に嫌な予感を察知し、彼女の
後を全速力で追った。
原田さんは階段を駆け上がっていく。俺は、ただ必死に彼女を追い駆けた。
彼女は屋上の扉を開き、そのスピードを落とさぬまま、屋上の柵を飛び越えた。
彼女は目を真っ赤にして、泣いていた。俺は叫んだ。
「原田さんっ!」
「来ないでよっ!」
原田さんは叫んだ。
「私には、先生しかいないんだもん…」
彼女は泣きながら、そう言った。
川島先生が後から、追ってきた。
俺「俺がいるだろっ!俺なら君を絶対に幸せにできる!俺の作った
曲で君は笑ってくれたじゃないか!」
俺は、無我夢中に叫んだ。
川「さよなら…先生…」
そう言って、彼女は手を離した。一瞬の出来事だった。
「原田さん!」
俺は、彼女の名前を叫んだ。柵に手をかけたとき時、落下していく彼女を
俺の目線は捕らえていた。
32佐藤:2009/01/04(日) 16:34:20 ID:feu8FZ1o
俺は式場に向かっていた。式場に着くと、たくさんの人が
既にいた。川島先生もいた。先生は俺を見つけて、手招きをした。
そして俺に、こう囁いた。
川「原田さんね…」
俺「…」
川「両親がいないのよ。小さい時に親が離婚してしまって、父親の方が
引き取ったんだけど、幼い原田さんを捨てて蒸発したの。酷い話よね。
それで、親戚の元に引き取ってもらったらしいの。とてもいい子だし、
そんな境遇にあるような雰囲気はなかったから私も最初は驚いたわ。
…だから多分あの子、私に母親を求めていたのよ、きっと。
時々そう感じさせるようなことがあったから…」
俺はそのことを聞き、ただ、うなだれた。

眼前には、原田さんの爽やかな笑顔の写真があった。俺はそれを見た
時、急に涙が溢れ、どうしようもない感情を抑えることができず、その場から
逃げ出した。後方から呼び止める声が聞こえたが、俺はただ現実から
目をそらしたくて、走り続けた。

俺は、あの日の後、まるでセミの抜け殻のようになった。生きている理由とすら
思えた存在が俺の目の前から姿を消した。それも、酷く残酷な形で。
33佐藤:2009/01/04(日) 16:35:29 ID:feu8FZ1o
俺は、都合で、北海道を後にすることになった。名古屋に親戚
のおじさんとおばさんが住んでいるので、そこで暮らすことになった。
川島先生は泣いていた。俺はどうすることもできなかった。
東京に着き、おじとおばの元に向かったが、やはり誰とも顔を合わせる気に
なれず、無理を言って、一人暮らしをさせてもらうことになった。
「しばらくは、一人でゆっくり心を落ち着けたい」のようなことを言い訳に、
おじとおばの元を去った。

東京での新しい中学では、ほとんど周囲に馴染めず、しかし期間も短かったため、
そのまま何事もなく卒業した。高校は受験しなかった。というより、おじと
おばの家計だけでも、相当貧しかったため、一人暮らしをさせてもらっていて、尚、
受験をできるお金などなかった。完全に生きる目的を見失った俺にとって、勉強も
学校も無意味と思えた。

生活は怠慢を極めた。食事は、ほぼカップラーメンなどインスタント食品。
バイトはしていたが、ない時は、夜中ずっと街をふらつき、昼間は爆睡の
毎日を繰り返した。
34佐藤:2009/01/04(日) 16:36:06 ID:feu8FZ1o
そうやって暮らしているうちに、どんどん意識は朦朧としてきて、このまま死んでいくのか
と、本当に思った。むしろ死にたかった。眠っている内に、いつの間にか死んで、
あの世にいってしまいたかった。心も身体もズタボロで、一歩も前に進めない。
進もうと思う場所もない。もう楽になりたかった。あの日買ったギターは、部屋の奥
深くで、ほこりを被った。人を愛する心も音楽に対しても完全にシャットアウトした。
俺の人生は原田優子がこの世から消えた時から、もう終わったのだ。
残りは、死んだように生きるだけ。いつか、死が迎えに来たら、すんなり
とそれに身を任せ、自分も同じように消えていく。人生に意味はない。
俺はそのことを悟った。
35佐藤:2009/01/04(日) 16:36:40 ID:feu8FZ1o
ある日、いつものようにバイトを終えた俺は、街をぶらついていた。
人気のない通りに入った時、何人かの足音が聞こえ、集団に取り囲まれ
たことに気付いた。
「兄ちゃん。お金持ってる?」
集団の中の一人が口を開いた。
「持ってない。急いでるから、どいてくれ」
俺はそう答えた。その瞬間、思いっ切り、顔面を殴られた。
その場で倒れた俺に集団は腹部などに何度も蹴りを入れてきた。

結局ボコボコにされたあげく、持っていた財布から札を全て引き抜かれ、
その場にしゃがみ込んだ。取られたのが札だけだったのが不幸中の
幸いだった。俺が何とか立ち上がろうとしたその時だった。
バイク音がした。
36佐藤:2009/01/04(日) 16:37:07 ID:feu8FZ1o
目の前に一台のバイクが現れ、止まった。
「しまった…まだいたか…」
俺は心の中で思った。

その人間はヘルメットを取った。その時、俺は予想外の出来事に驚いた。
そのバイクに乗っていたのは女だった。
その女は持っていたバッグからハンカチを取り出した。そして、おもむろに、
俺に向かって、手でよこして見せた。

俺はその行動と、そして何より女というだけで、もう毛嫌いし、その手を無視し、
自分一人の力で立ち上がった。
「おい、待てよ」
女が口を開いた。そして、俺に近付き、俺の腕を掴んだ。
その時、俺の過去の記憶が蘇り、急な吐き気を感じたと思った瞬間、
反射的にその腕を取り払い、俺は腕を掴んできた女の顔を、思いっ切り
殴っていた。
「痛っ!」
女は声を上げ、倒れた。
「っつぅ」
女は俺が殴った箇所を手で押さえた。そして、また口を開いた。
「女に手をあげるなんて最低な男だな」
こう、言った。
そして、俺は冷たくこう答えた。
「俺はもう全うな男じゃないから」
その後は、女の顔を見向きもせず、立ち去った。
女は追い駆けて来なかった。
37佐藤:2009/01/04(日) 16:37:43 ID:feu8FZ1o
あの日の時と同じようにバイト帰りの俺は、以前トラブルがあったことなど
全く気にせず、同じ通りを同じ時間に横切った。
そして、俺はあの日の時と同じバイク音を耳にしたと思った瞬間、
目の前に一台のあのバイクが止まり、乗っていた人がヘルメットを取った。

その顔は正にあの時の女の顔だったが、そう思ったのも束の間、
鈍い左頬への痛みと共に、俺は地面に倒れた。

顔を殴られたのだ。頬を押さえる俺に女はこう言った。
「悪いけど、私も全うな女じゃないんだよ。借りは返さなきゃあ」
女は続けた。
「おまえ、名前は?見慣れない顔だなぁ」
女は俺に話し掛けた。
「人に聞く時は、まず自分が名乗るもんだろ」
俺は吐き捨てた。
女は澄ました顔でこう答えた。
38佐藤
「結城まひる。ここらじゃ有名な結城財閥の一人娘」
その童顔であどけない顔立ちとは似ても似つかないような、まるで
男のような話し方に俺は少し戸惑いを感じていた。
「まひるだぁ?何だかイメージと正反対な名前だな」
「うっせぇ。おまえに言われたくないよ。そんで、名前は?」
「佐藤健一」
「健一?ハハッ!とても健康に気をつかってるとは思えないけど」
「うるせぇよ」
女は初めて笑った。その顔は少女のようだった。
「年は?」
まひるは言った。
「16」
「じゃあ、私と同じだな。まぁ、どうでもいいか、そんなこと。」
彼女はヘルメットを手に取った。
「じゃ、また機会があれば」
そう言って、少し笑ったかと思うと、すぐにヘルメットを被り、行ってしまった。
「ねぇよ!」
俺は大声で叫んだが、聞こえていたかどうかはわからない。