■恐怖の怪談話■

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765可愛い奥様
学生時代の先輩の話。

ある日うたたね寝をしていると、
寝転んでいる頭の上の方に何かの気配を感じて目が覚めた。
目をつむったままジッと様子を窺っていると、
「グルッグルッ…」と鳴きながら近づいてくる。
どうやら開け放した窓からハトが入ってきているらしい。
動くと逃げてしまうと思って、そのままジッとしていると
ふたたび眠ってしまい、次に目を覚ましたときは
もうハトは出ていってしまった後だった。

その日を境に、毎日ハトはやってくるようになった。
最初は遠くの方でウロウロしているようだったが、
日を重ねるに連れてどんどんこちらへ近づいてくるようになった。
先輩はハトがやってくるのが楽しみだった。
いつも寝ている時にしか来ないので
姿は見たことが無いのだが、タタミを移動してくる音と
「グルッグルッ」という鳴き声が近づいてくることで
どんどんと距離が近まっているのが嬉しかった。

そしてとうとう、ちょっと手を伸ばせば届く距離まで近づく日がやってきた。

いつものように飛んできてドサッとタタミに着地。
「グルッグルッ」という鳴き声がだんだん近づいてくる。
…鳴き声?
いや、なんだか様子がおかしい。
今までは遠くてハトの声だと思い込んでいたが、これは…これは人の声?
くぐもったような、しかし意味はわからない男のつぶやき声。
そう気がつくと、先輩は余計に怖くて身動き出来なくなった。
そうこうしている内に、“それ”は確実に近づいてくる。
ズズ…ズズ…ズズ…そして耳元で

「おまえ…」

と言われた途端に、先輩は失神した。