■恐怖の怪談話■

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4怖かった…
4年ほど前、仕事帰りのやや満員の電車内でのこと、
私のうしろに上品そうな細身の中年女性が乗り込みました。
しばらくすると彼女は「あつい、あつい!」とハンカチでぱたぱた
し始めました。風采に似つかわしくないので、周囲が一瞬「?」としまし
たが、私は駆け込み乗車なんだろうと興味を示しませんでした。
しかし、何となく周囲の緊張した視線を感じたので、混んだ車内で振り返ると
その女性は「あつい、あつい」と私をハンカチであおいでいるのです。
「何て失礼な女だ。」と思う間もなく、今度はふーふーと息をかけてくるのです。
真剣な目がギロリと私をにらみつけています。
こちらも、よせばいいのににらみ返してやったんですが、尚もふーふーと、
実に臭い息をお見舞いしてくれます。よけても顔を近づけてくるので、
さすがにこりゃヤバイと思って、混んだ車内をかき分け逃げました。
しかし追ってくる追ってくる。
「あつい、あつい!」と人々を突き飛ばし、鬼の形相で私を逃すまいと・・・。
半車両も逃げると、さすがに車内の緊張は極度に達し、周囲の乗客も
飛び火を恐れてサーッと道を開きます。
こうなりゃやってやると覚悟を決めて振り向いたとき、次の駅で降りようと
ある人が席を立ちました。
その瞬間、彼女は空席となった方向にくるりと首を返すや、速効で席に
座りました。座った途端彼女からは鬼の形相がうせ、実におだやかな表情
で、幸せそうに目をつむりました。
ひとときの静寂。
覚悟を決めた私は何だったんでしょう?