“韓流”ドラマ、音楽の次は「K文学」 魅力を伝える試み
産経新聞 7月24日(水)21時0分配信
ドラマや音楽はすっかり定着した「韓流」だが、文学となるとまだ影が薄い。
そんな現状を打破しようと、知られざる「K文学」の魅力を日本の読者に伝える試みが始まっている。(海老沢類)
◆相互に刺激与え
「日本社会は個を追求するあまり、人間の『情』を切り捨ててきた部分がある。
韓国文学にある人間の縁(えにし)の描き方を学びたい」。韓国をテーマ国にして今月開かれた東京国際ブックフェア。
父との相克といった普遍的な主題を静謐(せいひつ)な声で紡ぐ韓国人作家の李承雨(イ・スンウ)さん(52)との公開対談で、
作家の中沢けいさん(53)は、そんなあこがれにも似た思いを語った。
中沢さんは今年本格始動したボランティア団体「K−文学振興委員会」の委員長。
委員会は韓国書籍の情報を発信し、出版に向けた仲介役も担う。5月には、韓国語で書かれた50冊を選び、
あらすじや著者の経歴、日本でのアピールポイントをまとめた冊子「日本語で読みたい韓国の本」も作成した。
委員会設立の背景には「日本の輸出超過」ともいえる文芸書の出版状況がある。
大韓出版文化協会の統計によると、昨年1年間に韓国で翻訳出版された日本の文学書は計781点。
韓国の書店には、村上春樹、東野圭吾といった人気作家の翻訳が数多く並ぶ。
一方で、日本で翻訳出版される韓国の文学書は年間30点に届かないとされる。
中沢さんは「隣国同士で同じ感情表現をいくつも共有する、良き競争相手。
互いの作品を読んで刺激し合えば、豊かな創造につながる」と話す。
◆豊かな感性紡ぐ
韓国文学の潮流の変化も翻訳出版の機運を高める。
「直接的な表現を使った告発調の小説が多かったが、最近は個人の深い心の動きを自由に描く作品が目立つ」と話すのは、
新潟県立大学教授(朝鮮近代文学)の波田野節子さん(63)だ。軍人出身者の政権が終わり、1990年代以降、
経済発展と海外文化の流入が加速すると、個人の内面を豊かな感性で紡いだ小説が増えたという。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130724-00000575-san-ent