25 :
可愛い奥様:
2013年(平成25年)3月17日付 読売新聞日曜版3面 皇室ダイアリー
No.189 皇太子さま 水の研究 弱者への思い
水くみ場の前にストールを巻いた女性や子どもが列を作っている。水は細々としか流れていない。1987年、ネパールのサランコットの丘。27歳の皇太子さ
まはその光景をじっと見つめ、カメラに収められた。「水くみをするのにいったいどのくらいの時間が掛かるのだろうか。本当に大変だな」。そのように思っ
たことを後に講演で明かされた。水専門家の尾田栄章氏は「皇太子さまの水と衛生研究の原点というべき1枚だろう」と話す。
皇太子さまの専門は歴史で、特に水運を研究されてきた。一方、2007年には国連「水と衛生に関する諮問委員会」の名誉総裁に就き、幅広い水問題の研究
に取り組まれてきた。なぜ水なのか。今年2月の記者会見で「水は貧困や衛生状況の改善、環境の保護、弱者の保護といった様々な視点から極めて重要な問題」
と語られている。
今月6日、米ニューヨークの国連本部で開かれた「水と災害に関する特別会合」で、皇太子さまは水災害を記録した古文書をひもとき、「水災害に備えるこ
とは、国際社会が緊急に議論するべき最重要の課題」と訴えられた。スピーチが高い評価を得たのは、歴史的な洞察に加え、ネパールの写真にみられるように
「弱者」への思いがにじみ出ていたからだろう。
社会部宮内庁担当 太田雅之