皇室御一行様★part2530

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364可愛い奥様
2012年(平成24年)12月16日付 読売新聞日曜版3面 皇室ダイアリー
No.177 両陛下
収容所の生活に心寄せる
 70年ほど前、アメリカの強制収容所で作られた品々は、当時の暮らしや人々の思いを雄弁に伝えていた。
 天皇、皇后両陛下が6日、東京芸術大学大学美術館で鑑賞された「尊厳の芸術展」会場には、太平洋戦争中、米西海岸などの収容所に隔離された日系アメリカ人ら
が作った実用品や装飾品が並んでいた。仏壇や茶わん、すずりや日本人形もある。
 荒れ地のバラックに押し込まれ、当初は最低限の家具と食事しかない状況で作られたのに、とてもきめ細やかで精緻な品が多い。生き抜く意志、切なさ、望郷、
いたわり、子への愛。様々な感情が表されていた。
 天皇陛下は、丁寧に彫刻されたステッキに見入り、「何か書いてあります。還暦祝い、ですね」と、説明者に語りかけられた。木材や掘り出した貝で製作した
ブローチ、コサージュも見事な出来栄えで、鳥の意匠が多いのは自由に飛ぶ姿に思いを託したのだろう。
 出征する兵士の安泰を願い、赤糸で縫った千人針もあった。当時、米軍日系部
隊に属し欧州戦線で戦った息子のために母が縫ったものだ。「千人針!私もいたしました」と皇后さまは感じ入られていた。困難を強いられながらもたくまし
く生き、日本の心を忘れなかった人々が残した「証言」。両陛下はその場から離れがたい様子でいらした。
編集委員 小松夏樹