福岡市博多区のクリニックが、さまざまな病気の治療などをうたい、
研究段階にある幹細胞投与を毎月500人近い韓国人に実施していることが分かった。
韓国ではこうした行為は薬事法で禁じられているが、日本には規制がない。
幹細胞を使ってさまざまな病気を治す「再生医療」に期待が集まる中、
効果や安全性に議論のある治療法が広がっている実態が明らかになった。
複数の関係者によると、韓国のバイオベンチャー「RNLバイオ」(本社・ソウル)が
韓国人に同院を紹介している。R社が培養・保管する幹細胞を、同院で複数の
日本人医師が点滴や注射で投与している。韓国人患者の多くは日帰りだ。
同院で投与に当たる榎並寿男(えなみひさお)医師(65)は
「韓国人に、本人の脂肪から取り出した『間葉系幹細胞』を投与している」と説明する。
糖尿病や心臓病、関節リウマチ、パーキンソン病など多くの病気を治せるとしている。
韓国の厚生行政当局や関係者によると、R社は幹細胞の保管料などとして患者と
1000万〜3000万ウォン(80万〜240万円)の契約を結ぶ。
日本など規制がない外国の医療機関に協力金を支払い、患者を紹介する。
厚生労働省は10年3月、医政局長名で通知を出し、医療機関が幹細胞治療をする場合は
施設内倫理委員会の承認を得ることや、実施後のデータ公表などを求めた。
榎並医師によると、同院ではこの手続きを踏んでいない。
幹細胞治療の効果や安全性をめぐっては多くの課題がある。
動物実験では、幹細胞投与後に血管が血栓で詰まり死ぬ例が報告されている。
10年にはR社が所有する京都市内のビルに開設したクリニックで、
幹細胞投与を受けた糖尿病の韓国人男性(73)が、血栓が肺動脈に詰まる
「肺塞栓(はいそくせん)」で死亡した。
R社は「患者は来日時にエコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓症)を起こしていた
とみられる」と、投与と死亡の関係を否定している。
榎並医師は「ほかに治療法がなく幹細胞に最後の望みを託す患者もいる。
今は韓国人対象に勉強も兼ねた準備の段階だが、将来は日本人にも投与したい」と話す。
http://mainichi.jp/select/news/20121222k0000m040113000c.html