昔々あるところに　可愛い奥様がいました

可愛い奥様は、糸を紡いでは町へ出かけ
僅かながらの銅貨を小麦に変え、家に帰る毎日でした。

To Be Continued・・・

野山にまじりて　竹を取りつつ　
よろずのことに使いけり。

野山にまじりて　竹を取りつつ　
よろずのことに使いけり。

そんな話がどこか遠い、ふぁーいーすと　の国にあったわね　と
思いながら、小麦の袋を持って帰ります。

山道を歩いていると、腰の曲がった、白髪のおじいさんが道端に座っていました。
おじいさんは可愛い奥様を見てこう言いました。

「もしもし、そこのお嬢さん、すまんがその小麦を少しばかり分けてはくれんかね？」

お嬢さんですと？
可愛い奥様はすっかり舞い上がってしまいこう言いました。

「もちろんですわ。どうぞ、全部お持ちになってください」

「いえいえ美しいお嬢さん、わしは老いた身。
ほんの一握りの小麦で良いんじゃよ」

とおじいさんは言いました。

「まぁ！なんて無欲なお爺さんなんでしょう(しかも美しいだなんて・・・)」

お爺さんは一握りの小麦をもらいました。
そして、大地に蒔きました。
するとどうでしょう、あたり一面小麦畑になりました。

しかし、あら不思議
小麦ばかりがなると思っていたら赤い変な木が混ざっている

>>3>>5>>6>>7の
美しい奥様有難うございます


どなたか美しい奥様　続きをよろしくです・・・　おやすみなさい
　　　　　　↓↓↓

それは赤い変な木だった。

みるみる育って雲にも届きそうなほどな大木になった。

するとその赤い木を伝って何か見たこともない生物が降りてくるのが奥様には見えた。

老人は言った「お嬢さん、あんたがくれたのは小麦じゃなかったのかい？」
「すいません。そのつもりだったのですけど」とまどいながら奥様は言った。

そうしている内に、おかしな赤い木から降りてきたおかしな生物はどんどん地上に迫ってきていた。

急に地上に強い風が吹き始め。空は轟き、鳥たちが騒ぎ始めた。
不吉な前兆に怯えた奥様と老人は
そのまがまがしい生き物から逃れる為に急いでその場から離れようとした。
だが焦りから足はもつれ、奥様はその場に倒れこんでしまった。
もう駄目だ。
振り返った時、目に映った物は赤い肌に赤い髪がとぐろを巻き、いわゆるホームレスのような男なのだが
ホームレスと違うのは、目がらんらんと光っており何か異様な殺気のようなものを充満させている点であった。
それはどうやら言い伝えられている、あの「赤鬼」のようであった。
まさか。でもそれ以外に名づけようの無い異様な容貌なのであった。

焦りから足はもつれ、奥様はその場に倒れこんでしまった。
もう駄目だ。
振り返った時、赤鬼はヨダレをふりまき咆哮をあげながら地上に降り立つ寸前だった。

そして赤鬼は口を開いた

「おい！今帰ったぞ」

そうよくよく目を凝らして見ると、それは3年前に失踪した夫その人なのであった。

「あなた.........!」
奥様は変わり果てた夫の姿にドン引きしつつも、抑えられない情動とともにその毛むくじゃらの胸に飛び込んでいったのだった。
「あなた、どこに行ってたの。」獣のような体臭にむせびながらも
涙とともに再会を祝福する二人なのであった。

3年前、奥様の夫は出張した先の長崎で失踪したまま行方がまったく掴めずにいたのだった。
小さくだが新聞にも載った事件だったが、手がかりの少なさと事件性の無さから
警察の捜査もすぐに打ち切りとされた。

「蒸発」その一言で、愛する夫は奥様の前から
まるで風に吹かれたようにかき消されてしまったのだった。
それ以来、奥様は深い哀しみとともに生きてきたのだった。

しかし、哀しみにひたってばかりいられない、と最近ようやっと
白髪が増えた髪も染め、
こうして野山に散策に出かけてみようという気持ちになった所だったのだ。

二人は長い口付けを交わした。

ふと見ると夫から赤い色が消えていた。

魔法が解けたかのように。不思議な想いがしたが
今目の前に起きている事の全てが不思議すぎて、奥様はその意味を精査することを止めた。

そんな事よりもこの人とまた会えた。

その事だけでもう充分だった。

夫は長崎で失踪した時の事をよく覚えていないようだった。

気がついたらホームレスだった。ということ。
無一文で九州から、関東の我が家へ帰る手段だけを必死で考えていたという事。

そんな話を聞きながら奥様は夫の胸に顔を埋め、今までの失った幸せをとりかえすように
強く抱きしめあう二人なのであった。

その時、耳をつんざくような破裂音がした。

そして、回された夫の腕から力が抜けていくのを感じた。

奥様には何が起きているのか理解する事が出来なかった。

目を上げるとそこには真っ赤に染まった夫が居た。
「うそ！」奥様を言葉を失った。
崩れ落ちる夫の向こうには、猟銃を携えた老人が立っていた。
鬼から奥様を守ろうと、猟銃を持って戻ってきたのだ。

「お嬢さん！大丈夫かい！」
奥様は気絶し、そのまま倒れこんだ。

翌日、奥様は病院の一室に居た。

奥様は一人、東京西部の山中で倒れているところを地元の小学生に発見され、
病院に担ぎ込まれたのだった。病院の診断は疲労、という事だった。

見舞いに来ていた母と、その横には見知らぬ男が居た。
男は警察だと名乗った。
「夫は...」
奥様のこの問い掛けに、男は一瞬怪訝そうな顔を見せたが
夫は関西のとある街で遺体として発見されたのだ、ということを告げた。

風体はまるでホームレスのそれだったが、指紋などが一致したため、
3年前に失踪した夫と身元が一致したのだ、という。
退院したら身元確認の為に署に来て欲しい、と事務的に告げると立ち去っていった。

母親が言いにくそうに
「顔がねぇ...ずいぶん酷いみたいなのよねぇ、殴られてねぇ...血もねぇ..」
そう言うと俯いたまま黙ってしまった。

赤い木、雲の間から現れた赤鬼のような姿になった夫のこと、銃を持った老人。
すべては夢だったのだろうか？

あまりにも辛すぎる現実の方が夢であるような気もした。
哀しみを感じるより先に、昨日の夫の感触のほうを心が懐かしがった。

奥様は起き上がるとベッドの横にかけてあったカーデガンを取った。
そしてポケットに手を入れると、そこには小麦の種が入っていた。

ｵﾜﾘ

乙！
おもしろかった！

なんか荒らしてしまったようでｽｲﾏｾﾝでした
思いついてしまったのでつい。。

>>8から続き再開してください。

>>17
奥様面白かったですわ

>>17
何をおっしゃるの奥様
無理を言えばポケットに入ってた小麦の種から、また続きを書いて欲しいですわ

９から続ける

その赤い木から降りてきたおかしな生物は、どこかの国
ふぁーいーすとのテレビで見た「みの　もんた」に似ていた。

みのは木の上から言い放った
「ちょっと！そこのお嬢さん！」

奥様は再びお嬢さんと呼ばれた事に浮かれた。だがしかし

死にました
おわり。

…太郎はそこまで読んで、思わず頭を抱えこんでしまった。
「何だこれ…何でセンター試験でこんな文章が…」
例年、第２問は小説文と決まっていたが、
まさかこんな型破りな文章が出題されるとは…

ハゲ死ね

「ハゲ死ね」

例題２に至ってはたったの4文字である。
あまりにも短い。これ以上どうやって要約すればいいというのか。

ｈｇｓｎ

太郎は投げやりな気持ちで書き込んだ

もうどうなっても構わない…
太郎はhgsnに続けてktkrと書き込んだ。

4問目解答欄：wktk
5問目解答欄：gkbr

太郎は確信した。今年もまた留年決定だと。

「もう終わりだ」

あまりに現代文が不出来だった太郎は錯乱した。
周りの風景が歪んで見える。
あはは、僕はもうだめだ。
そして次の英語の時、太郎は名前の欄にこう書いた。

「やる夫」

さらに試験会場に至っては

「やるき茶屋」

もう滅茶苦茶である。

はいよろこんでー！


うつろな目で太郎は叫ぶと試験会場を飛び出た。

試験会場を飛び出した太郎は、あてどなく、町をさまよっていた。
住み慣れたはずの町が、いつもと違って見える。
歪んで見える風景。一体これから自分はどうすればいいのだろう…

町外れの小さな公園のベンチに座っていると、
急に背後から声がした。

「もしもし、そこのお嬢さん、すまんがその小麦を少しばかり分けてはくれんかね？」

えっ？お嬢さんって、誰だ？
と言うかこの台詞、どこかで聞いたことがあるような…
恐るおそる振り返ってみると、そこには腰の曲がった白髪の老人が…

次の瞬間、耳をつんざくような破裂音がした。
そして、ゆっくりと崩れ落ちていく老人。

「お爺さん！」太郎は老人を揺すぶったが老人は息を吹き返す事はなかった。
老人の胸から黒い沁みが広がり、太郎の手にまだ暖かい血が着いた。
太郎はそれを見て恐ろしくなり、咄嗟にその場から逃げ出した。

だが、思いなおして交番に届け出てみようと、再び公園に戻ってみると
そこにあったはずの老人の遺体は跡形もなく消え去っていた。
太郎は自分の手を見た、血は着いていない。

狐につままれたような気分で太郎は家に帰った。

これで４浪決定。
呆然としながら壁の沁みを眺めていた。

何故芸大など目指そうと思ったのか、
毎年センターで錯乱を起して家に逃げ帰る、これの繰り返しではないか。
デッサンの一枚も描くことなく、試験に落ち続ける。なんという不毛。

親に言えば、もう実家に戻って就職しろと言うのだろう。
それもいいかもな。
親の縁故で会社に入って、絵は趣味で描いていく。そんな人生も有りだ。

―数年後

太郎は千葉のとある会社に就職し、そこそこ忙しく、そこそこのんびりとし、
そこそこの、平凡な日々に身を委ねていた。
会社に行きながら絵は趣味で...そう思っていたが、
実際働き出してみると絵の事などどんどん遠くなっていくのだった。

だが忘れたわけではなかった。
太郎はくすぶり続ける炎を何かの形で残さねばならないと思っていた。

少しづつ、太郎は身の回りのものをスケッチし始めた。
何年も描いていない手はずいぶんと鈍っている。
だが描く。描き続けてみよう。
あの頃と比べて、背負うものがない分、筆は軽やかだった。
俺は今まで、前ばかり見ていて描く事の楽しさを忘れていたのかもしれない。
会社の行き帰りに見る風景、独り暮らしの部屋、同僚の横顔...
絵を描く目線で周囲を眺めると、いつもの景色が違ってよりクッキリと見えた。
もっと、もっと観察するんだ。
そんなものの中で、太郎はある人物の顔ばかりを追っている自分に気づいた。

ある人物とは、ある同僚だった。
変わった名前だが、奥様という苗字の若い女だった。

やがて二人は恋に落ちる。

「また見てやがる...」

奥様はため息を吐いた。
チラチラと周囲を見ながら、今日もコソコソと紙に何かを書き込んで居る。太郎の事だ。
そこそこｲｹﾒﾝではあるが、挙動が不審で周囲に壁を作りがちな太郎は
はっきり言って奥様的には圏外だ。

「ちょーｷﾓｲんですけど..」
奥様は太郎の事をなるべく気にしないようにして、ネイルに目を落とした。

が、粘っこい視線を感じ、恐る恐る顔をあげると
ぬらぬらとハゲあがった課長が奥様を見つめている。

「ちょｗｗｗおまｗｗｗｗｗ」

「奥様さん、ちょっと、お茶。」

爪ばっか見てんじゃねーぞ。とでも言いたげに課長は立ち去っていった。

視線の主が太郎ではなかったことに、若干落胆している自分に腹が立ってしまう奥様なのであった。

あー疲れた

「あー疲れた」
奥様はつぶやいた。
結婚してから早５年。これほど結婚というものが大変だったとは。
思えば、主人の両親との同居を、安易に決めたのがいけなかったのだろうか？
あれほど魅力的に思えた主人も、内実を知ってみれば、
ただの狡猾な人間でしかなかった。

結婚に対する後悔、そして疑念…
そういったものを考える時、いつも奥様の頭に浮かんでくるのは、何故か太郎の顔だった。
どうしてこんなにも太郎のことが気になるのだろう…
私は太郎を嫌っているはずなのに…
こそこそと絵を書いている時の太郎、誰かに話しかけられると
とたんに挙動不審になる太郎…
魅力的なところなんて何も無いではないか。

太郎を思い出しながらマンズリ

とさ

土佐の〜　高知の〜　播磨谷ば〜しで〜
ぼんさ〜ん　かんざし〜　

買うと見せかけて、行ったのは空港。
チケットを買い、北海道函館行きの飛行機に乗り込んだ私は

取り敢えずトイレにかけこみ用を足した。
最近、頻尿ぎみなのだ。
これで一先ず安心だ。

奥様はトイレを出て冷たい水で手を洗う。
おもむろに顔を上げて、鏡に映る自分の顔に見入る。
太郎と過ごした時間から幾月・幾年が過ぎたことであろう？
太郎は今の奥様を見て、奥様と気づくだろうか？
太郎は今の奥様をぬめぬめとした視線で見つめてくれるのだろうか？

奥様はため息をつきながら、フリスクを一箱一気に口に放り込んだ。
覚醒が必要なのだ。
結婚・同居。
そんなものはもう奥様に必要ない。
革命を起こさねば。

まずはズンイチに相談することにした。
ズンイチのありがたい答えはこうだった。

「不倫は文化です」

更に理子が続けた。
「『ケイン・コスギ』の父は『ショー・コスギ』」
奥様はその言葉で全てを理解した。
革命とは…。
お祭り忍者のことなのだと。

そーれそれそれーおまつりだー…

一方、太郎も鬱屈した日々を送っていた。
もう一度握ろうとした筆を再び折り、日常に埋もれてしまっている。
何故ならばあの奥様が会社から去ってしまったからだ。

会議用の書類、20枚で良いというのに、
ストックしてあるプリンターのA4用紙全部をプリントしまう奥様。
トナー交換する度、辺りを真っ黒に染める奥様。
コピーを取る度、紙づまりを起こしていた奥様。
最初は舌を出してコピー機の前で笑っているのに、
最後には汗まみれになって、涙目でコピー機の修理マンに電話する奥様。
そんな奥様が、太郎の絵の情熱をかきたてていた。
いったい奥様はどこに行ってしまったというのか。

太郎は大きく開けた口に、ミンティア・アクアスパーク味一箱全てを放り込んだ。
目を覚まさなければならない。
まずは眠眠打破を買いに行くことにしよう。
「そーれそれそれお祭りだー」
太郎は歌いながらコンビニに向かった。

「いらっしゃいませー」

セブン１１に行くと必ず手に取るのがボノロン。
何度この物語に癒されたことか。

おっとブラックサンダーも忘れちゃいけねぇ。

そして眠眠打破がある棚へと向かった。

雑誌コーナーで立ち読みしていた老人がぼそりと呟いた。
「ズンイチの本名も太郎じゃったのう？フォッフォッフォッ」

奥様はふと気づいた。
ポラメル2月号をまだ読んでいないことに。
早くセブンに行かなきゃ、奥様の心はざわつきだす。
ついでにフリスクベリーミント味を買うことにしよう。
奥様はコンビニに行くため、パジャマの上からジーンズを履く。

そんな時、何故か奥様の頭の中に「さぁ、みんなで考えようー！」
という台詞がリフレインする。
何だったかしら？
誰の言葉だったかしら？
えーっと、えーと…。
奥様は90年代のバラエティ番組に思いを馳せる。
そして柄シャツに眼鏡姿で杉本彩と歌っている男を思い出す。
逸見政孝だわ、と。
そして彼の息子の名前は何だったかしら…？

……太郎？

奥様は一番近いセブンに向かった。
夜中のこんな時間でも煌々と灯る明かり、暗闇にポッカリ浮かんだように
見えるコンビニはまるで異空間だ。
外に向かって立ち読みする男たち。
足を踏み入れようとした、その時気付いた。太郎！

立ち読みの男たちの中に、まさにあの太郎が居た。

一見細身の太郎だが、本を持つその指先は意外と節くれだってゴツい。
あのストイックなねずみ色のスーツを脱いだら、実は凄い肉体をしているのだろうか。
ピッタリとした５部丈ボクサーパンツをまとった筋肉質な下半身が脳裏に浮かんだ。

奥様は思わず喉の奥で、唾を飲み込んだ。

　ゴクリ…

wktk

「靴下を履いていない。やっぱり太郎だわ」
奥様は確信を持って歩を進め、彼に声をかけた。

「アナタハ　タロウトイウ　ヒトリノダンセイ　デスカ？」
「ワタシハ　オクサマトイウ　ヒトリノジョセイデス」
奥様はすっかり片言になりながら、太郎に語りかけた。

太郎の背中がびっくううぅぅん！と波打ち
手に持った眠眠打破が滑り落ちた。

太郎はゆっくりと奥様の方に向いた

「ワタシ、タロウ、イイマス」

なぜか釣られて片言になってしまう太郎。

太郎の髪は猫っ毛だ。
深夜のLEDライトに照らされた太郎の後頭部は心なしか、薄い。
まだ若いのに。男性ホルモンの分泌が盛んなのだ。もしやあちらのほうも絶倫さんなのか。
奥様はあらぬ想像をしてしまった自分を責めるように恥じたが
秘密の花園は自分の意思とは裏腹にしっとりと潤ってしまったようで更に頬を赤らめた。

「ワタシ、オクサマ、イウヨ」
奥様は太郎が落とした眠眠打破を拾い上げてにっこりと微笑んだ。
「アナタ、ホルモン、スキカ」
奥様は男性ホルモンや女性ホルモンが頭から離れず、
打開策として、ホルモン焼き屋に太郎を誘うことを思いついた。

奥様は時湯はホルモンヌとして地元の商店街では一目置かれた存在だった。
しかも毎月２９日は肉の日で、お会計時に半額キャッシュバックされるのだ。

×時湯は
○実は

そう、その商店街の名は、実は、時湯葉銀座。
ふたりは言葉少なに連れ立って時湯葉銀座で一番美味しいと評判の
ホルモン焼き屋「やき吉」へと向かった。
ちなみに二番目に旨いと言われているのは創業30年の「ホルモンアケミ」。

奥様は本当は『ホルモンアケミ』に行きたかった。
アケミママはしゃがれ声のやさぐれたママで、
口数こそ少ないものの、歌はセミプロの域だった。
いや、実際に昔は歌手だったのだという。
アケミママも機嫌が良い時は、
使い込んだギブソンのギター片手に歌ってくれることがあった。
「エイビィシー、エイビシー、ぅはぁーんぁ、いいきもっちぃ」
沖田浩之のＥ気持が十八番だった。

何故か、馴染の「アケミ」を避けてしまう。そこに背徳があるのだ。

何故なら不倫は文化☆なのだから

『やき吉』の店の前には、額に三日月の傷を持つ猫がいた。
その猫の横には、赤いスカーフを首に巻いた茶トラの猫が座っている。
猫が店番とは不思議だが、奥様と太郎は気にせず店に入っていく。
店に入ると、髪に赤いポッチリを2つつけた下駄履きの小学生の女の子が、
忙しそうな顔でホルモンを焼いていた。

「ヘイらっしゃーい！」

「じゃりん子チエ？その無茶振りはなんなの？･･･」
いぶかしげに眉をひそめながら店に入っていく奥様と太郎。
そうだ話しとかなきゃ。
「私、主人から逃げてきたの、過去も何もかも捨て去って。
でもこの前、私と追いかけてきた主人とこの町で遭遇してしまって･･･
それでさっきみたいなカタコトで中国人の真似なんかしちゃって
なんとか誤魔化したんだけど、昔の私を知っている人に会うとなんだか
全てから逃げ出したくなって、ついカタコトが口をついて出てしまうの。」
奥様は言い訳がましく話しながら太郎の顔を見つめた。
「そう言えば、この人この前見た映画の主人公に似ている･･･」
奥様がこの前見た映画･･･それは「サヨナラ、イツカ」だった。
「確か西島とかいうあの俳優だわ。そう言えば私の名も美穂。フフフ。」
奥様は運ばれてきたホルモン鍋を太郎とつつきながら、この店を出てからのふたりを想像した。
私も今夜映画の中のようなめくるめくセックスを、この人とすることになるのかしら･･･。
今の私にそれもよいのかも･･･。
そう考える奥様の脳裏に、映画の中の美穂の旦那・仁子のキメ姫顔が浮かんでしまった。

「奥様を名乗ってるってことは」
唐突に太郎が口を開いた。視線は箸先のホルモンに落としたまま。
「正式に離婚した、ということか…」
問いかけというよりは呟きのようなそれに答えていいのか、奥様は一瞬迷った。
「今は『奥様美穂』よ」
それだけ言うと、ホッピーのグラスを唇に近づけた。頬が熱い。
浮かんでいたキメ姫顔のお仁の顔は、すっかり消えていた。

「にんにく爆弾一つ追加！」

「うちは日本一忙しい少女や…」
ホルモン屋を切り盛りしている小学生の女の子が呟く。
しかし奥様にはそんな声が耳に入るわけはない。
あの西島ナントカは、松岡純一郎役の頃から大好きだった。
その顔にどことなく似ている太郎。
その太郎が目の前にいるのだ。

ここはにんにく爆弾を一つぶちかまして、
めくるめく夜に備えるしかあるまい。
奥様はホッピーのグラスを飲み干して、自らの覚悟の程を太郎に告げた。

「真夜中のサンダーロード
　今夜も抑えきれないエネルギーを探し続けている
　ストリートの上のロックンライダー
　夜更けの固い小さなベッドの上で
　愛を待ち続けている　sweet little sixteen
　愛されたいと願っているパパも　融通の利かないママも
　そして今にも諦めてしまいそうな君にも
　今夜はとびっきりご機嫌なrock'n roll musicを届けよう
　アンテナをのばし、周波数をあわせ
　システムの中に組み込まれてしまう前に
　僕が送るHot Number をキャッチしておくれ

　愛を　愛を　愛を　今夜も　オールナイトニッポン！！」

太郎の心拍数は今やＭＡＸだった。

トラトラトラ！恋は一途
トラトラトラ！本気よ

世界中でたった一人欲しいものは貴方だけ

間違えた。
たった一つだった。shit!

『トラ！トラ！トラ！』
シブがき隊もそんな歌を歌っていたわ…
と、奥様は甘酸っぱい気持になった。
それに…と奥様は思う。
『神田正輝と松田聖子とSAYAKA』は
は寅年家族であったと。
トラトラトラ……

そんな昭和の豆知識なんていらないわ。
奥様はスーパーモンキーズのロッテのコマーシャルソングを
必死に思い出そうとしていた。

・・・・マスカット！・・・・OHイッツアミラクル

・・・言葉じゃないOHｲｴ〜・・・・

言葉じゃないOHｲｴ〜・・・・

OHｲｴ〜〜・・・・・


そうよ言葉じゃないんだわ！

奥様に覚醒しがおとずれた

奥様は肉に飢えた野生のトラのごとくらんらんと目を光らせ、
太郎のグレーのスーツの下の肉体に狙いを定めた。

　「太郎、あなた、昔、私の事よく見てたでしょう」

奥様はグラスに目を落としながら言い終えると、ホッピーを一気にあおった。

さぁーてこの先の太郎さんは？

「太郎、奥様を視線で陵辱してた」と
「太郎、奥様の姿を透視してトレースしてた」と
「太郎、今この質問にどう答える？」

の三本です。

太郎はひなあられを口にぽぉーんと放り込み、

んがっぐっぐ！

悶絶しながら、慌ててマッコリをあおった。

「･･･しかし、この女はさっきから一体何杯飲んでるんだ？」
ひとりホッピーを浴びるように喰らい、血走った目はすでに座っている。
そしてなぜか時々舐めつくすように自分の股間に絡みつく
奥様美穂ちゃんの視線に戸惑いながら、太郎は言葉を探していた。
･･･そうさ、昔は確かにお前のことが好きで好きでたまらなかったはずだ。
ところが今俺の目の前にいる、この血走った大トラのような女は誰なんだ。
これが俺がかつて求め続けた女なのか。
いや、そうではない。俺の奥様美穂ちゃんは全然違う！
俺の奥様美穂ちゃんは、こんな「サヨナライツカ」に出てくる淫乱女みたいではなかったはずだ！
太郎は、映画の中の中山美穂に対しても義憤を抱いていた。
「それにしても、パイオツも見せもしねーでいったいなんのつもりなんだよ･･･金返せ」
しかし、太郎はあの男優の西島ナントカに似ていることは意識していた。
最近ではあえて無表情に喋ったりして、あの西島ナントカのヘタうま路線を真似てもいる。
･･･だが、やめだ。
ひとりで飲んだくれてこの女、しかもヤル気マンマンじゃねーか。
やめたやめた･･･俺は俺流のやり方でなければ燃えない男だ。
･･･そう、こう見えて実は彼こそが日本発祥と言われて久しい「俺様セックル道」の開祖であったのだ。

「それなら、この奥様さんかて、時湯葉銀座のホルモンヌやでぇ？」
『やき吉』の看板娘が太郎の心を読んだかのように口を挟んだ。
「ホルモンヌ？」

耳慣れない、だが耳に心地よいフランスっぽい響きだ･･･。

「うん。俺、絵を描くのが趣味で。
暇なとき、職場の人スケッチしてたんだよ。」

そうとだけ言うと太郎は静かに口をつぐんだ。

スケッチ？奥様はまったく予想していなかった言葉に拍子抜けしそうになった。
と同時に太郎の意外な一面を知り、何か一瞬酔いが醒めるような心地がした。

太郎の西島作戦にまんまと引っかかる奥様。

狙った男は必ず喰らう凶悪グルーピー「北のミホ」として鳴らしていた奥様だったが。
今夜はやけにペースを乱される。
SHOW-YA！のコピーバンドで「限界ラバーズ」を歌っていた18の頃、
男は奥様にむらがり、奥様はそれをいなして適当に遊ぶ。
そんな毎日が当たり前だった。

だが、今夜は何故か自分のペースが乱される。
太郎はそんな美穂の心を読んだように言った。
「どうした？男日照りでも続いているのか？」
唐突な太郎の問い掛けに驚く美穂。
顔を上げると悪そうに唇を片開きにニヤつく太郎が居た。

攻めが得意なS気質は攻め込まれると案外弱い。
周りには聞こえない、しかし耳元でダイレクトに囁かれる
ウィスパーボイスはもろに子宮に響くようだ。
まるで言葉攻めのように続けられるS的台詞に
ホッピーの酔いも加わり、腰から崩れ落ちそうになる美穂。

天使の顔　悪魔の顔
繰り返して生きているわ
優しさより　激しさより
感じたまま
それでいいわ・・・

奥様のなかで燻っていたなにかがはじけた

バックトゥザファイヤー！！！

カリッとCMのような音を立ててマルゴトキュウリをかじる太郎。
白い歯がたまらなく眩しい。

　「きゅうりの丸かじり」
まるでショージ君の本の題名のようだが
淫獣になっている今の美穂には関係無い。

頭に浮かぶのは、ひたすらいやらしい淫らな妄想だけだ。
唇が乾き、ひたすら唇を舐めて潤わす美穂。

それをニヤニヤしながら眺めた太郎は丸かじりしてた
きゅうりを、やおら舐めまわすように食べ始めた。
唇をすぼめ、舌を出し先っちょをチロチロ舐め
いきなり喉の奥まで深く突き入れ苦しそうな表情を作る。

「美穂ちゃんの下唇って厚いんだな」
「そういう女って案外情が厚いんだよな」
「ねぇ、唇の形ってさ、オマ○ンコに似るって本当？」

もうダメ！美穂は耐え切れず太郎に言った。
「もう出よう。どこかに連れてって」

「どこかってどこだよ。ハッキリ言わなきゃ分かんないよ」
オレ様ｾｯｸﾙ道の太郎の本領発揮だ。
『これで完全に主導権を持ったぞ』
太郎は心の中で快哉の声を上げた。

勝利の予感に酔いしれる太郎。
その横顔を、ときおり、底知れぬ冷たい視線で美穂がみつめていることに、
太郎は気づいていなかった。

「太郎・・・あなたはまだ知らない。・・・いいえ、このまま知らないほうがいいのかもしれない。
そう、わたしは奥様美穂。でも、それが世をはばかる仮の姿だということを・・・！」
「知られたくない・・・ただの美穂として、このままあなたにさらっていってほしい・・・！でも・・・！」

組織の鉄の掟にしばられていることに、疑問すら抱かずに生きてきた美穂。
いま、はじめて自分のなかに生まれた、名づけることのできない初めての感情に、
戸惑うばかりの美穂だった。

ホルモンを焼く、小学生の女の子の目がキラリと光った。
そう、彼女も鉄の掟の世界に住む住人なのだ。
子供ゆえ、奥様美穂から女の感情が生まれたことを敏感に察知した。

「これはあかん、おっちゃんに知らせんと」

ホルモン焼き屋の女主人の小学生は、
店の前で番をする三日月型の傷を持つ猫にミッションを託した。

「お好み焼き屋のおっちゃん呼んできて」

「どこかいいホテル知らない？」
太郎は言った。
白い前歯にきゅうりのカスが挟まっている。
表情はふてぶてしいほどにクールだが、繋いだ手の平が熱く湿っている。

太郎のクセに生意気だ!

昔の奥様ならそう思ったことだろう。
だが今は違った、この男に身を任せたい。

奥様は「ホテル野猿」に太郎を連れ込む事に決めた。
調布・八王子のワルの御用達といえば「ホテル野猿」
こんな名前だが、内装は至極ラグジュアリーに改装されているのだ。
http://happyhotel.jp/special/nop_31.jsp

「野猿」の地下が組織に繋がっているとも知らずに、奥様と太郎はホテルのゲートをくぐった。

ラブホ。この淫靡でメルヘンな響き。
こんな場所へ足を踏み入れるのはいつ以来だろう。
そう、あれはまだまあるい回転ベッドや丸見え浴室、天井の鏡張りが全盛期だった頃、
確か名前はアド街でも紹介された目黒エンペラーだった。一緒にいた相手が誰だったかは思い出せない。
美穂はそんな思いを巡らせながら太郎の背に隠れるように薄暗い照明の下を進んでいった。

いっけなーい
寝過ごしちゃった！

奥様美穂は昼寝から目を覚まし、
ついぞ今まで見ていた夢から醒めた。

鏡貼りの天井に映る自分の姿を見て奥様は跳ね起きた。
見慣れぬゴブラン織りのカーテンの隙間から朝日が細く射し込んでいる。
「ここはどこ？」
奥様はあたりを見回した。円形のベッドの上には自分ひとりしかいない…。

そのとき、ベッドサイドテーブルの上に置かれていた奥様の携帯電話が
鳴った。
「この呼び出し音は…」
大急ぎで電話に出る奥様。指令だわ。
「はい。こちらホルモンヌ」

説明しておこう。指令の呼び出し音は、笑点なのである。

奥様美穂は恐ろしい指令を受け取り、工作員集合場所へと急ぐ。
「太郎…、ごめんなさい」
奥様はマフラーの下にマイクロチップを隠して、
黒いジャガーに乗り込んだ。

そこにまたしても、奥様のバッグから笑店のテーマ音楽が聞こえてきた。

チャッチャチャスチャララ♪チャッチャ

「ホルモンヌ、アジトAでコードネーム：ズンイチと合流した後、
『やき吉』でコードネーム：ジャリンコから例の物を受け取るんだ」

アジトAへ黒のジャガーを急がせる奥様。

「あれ？」
ブレーキが効かないことに奥様は気づいた。

「まさか、太郎…？」

奥様は絶望的な気持でハンドルを切った。

美穂の脳裏にこれまで通り過ぎていった歴代の男たちの姿が浮かんだ。
まるで走馬灯のように。

何かにぶつかる衝撃で、エアバッグがもりもりと膨らみだす。
「私生きてるの？」

「さぁ早く車を降りるんだ」
車の外には鬼気迫る表情の太郎がいた。

体中の痛みを感じながら車を降りる奥様美穂。
太郎はそんな奥様美穂を抱き上げて、大きなSUVの後部座席に美穂を寝かせた。

そこに奥様美穂のポケットから笑点のメロディが聞こえてくる。
「あ、携帯」
と奥様美穂が携帯電話を手に取った瞬間、
太郎は奥様美穂の携帯電話を奪い取って投げ捨てた。

「太郎？どうして？」
「今はその質問に答えられない」

太郎の言葉が言い終わらないうちに、
太郎が携帯電話を投げた方角から爆発音が聞こえてくる。

監督「カット、カットー！爆発タイミング早すぎ！」
助監督「ｻｰｾﾝ、もう一回お願いしまーす」

「もう、助監督のバカ」
奥様美穂は寝転んだ体を起こし、あぐらをかいた。

無理がありすぎるのよ、と奥様美穂はひとりごちて、
眠眠打破を一気に飲み干した。

太郎はそんな奥様美穂のやさぐれた様子を
クロッキー帳にスケッチしはじめた。

あの熱い思いはホッピーとホルモンが見せた夢だったのだろうか。
スケッチをする太郎のねっとりとした視線は、もう奥様を熱くさせなかった。
心のままに冷たい視線を太郎に送り、奥様は立ち上がった。
「スタントマンのバイトなんてするもんじゃないわね」

夫と別れてから奥様はあらゆるバイトに手を出している。
「助監督、早くしてくれない？太郎の視線はキモいし、午後からはホルモンの
キャンギャルの仕事があるのよ」

「キモい…？」
太郎はスケッチの手を止めて、奥様美穂にねっとりな熱視線を注いできた。
「嘘が下手な女だ」
そう呟いた太郎は、スケッチブックの絵を奥様美穂に差し出した。
「本物の君はここにいる」

「ホルモンヌ！何してるんや！」
どこから来たのだろう。
怒りの形相のジャリンコが、奥様美穂の前に仁王立ちしていた。

「アンタな、今日は店番する言うたろが！」
しまった！今日はやき吉のﾊﾞｲﾄが入っていたんだ。

撮影所のスタッフ〜の手前、ホルモンキャンギャルと見栄を張ったところで
実態はホルモン屋のお運びﾊﾞｲﾄに過ぎない。
「北の美穂」と鳴らした頃ならいざ知らず、今は呼び掛けられる声も
「オバちゃん、ホッピー3つとホルモン追加ね」
常にオバちゃんである。あぁ切ない…嘆く美穂であった。

ホルモンヌ　割に合わない　疲れたよ

ふいに頭に浮かんだ一句を詠みながら、でも、と美穂は思う。
額に汗して働く事はこの上なく気持ち良かった。
体を動かせば日常の些細な悩みなどどこかへ吹っ飛び、
それより何よりかにより、まかないご飯が魅力的なのだ。

労働の苦労、そして、まかないごはんの美味しさを知った美穂。

ふと、残してきた夫のことが頭に浮かんだ。
雨の日も雪の日も、ただ黙々と出社していく夫。
義両親にくわえ、ひどく年下の義兄義姉が同居するという、
一風変わった家庭にも、愚痴ひとつ言わず婿養子に入ってくれた夫。
義父との会社帰りの屋台での１杯を、ささやかな喜びとしてくれている夫・・・。

美穂の口元にやわらかな微笑みがうかんだ。

「・・・帰ろう」

ママー、カツオ兄ちゃんがいじめますぅ〜
そよ風にのって、最愛の息子の声がきこえた。

見上げた空は澄みわたり、どこからか花の香りがした。

季節は、新緑のときを迎えていた。

美穂はそのままトメ・ウトメだったのか実の両親だったのか、今１設定があやふやな
夫が待つスィートホームには戻らず、異国の空港に降り立ったところだった。
「我ながら、この展開の早さにはついていけないわ･･･、日本を発つ前にスタバに寄って来れば良かった。
　この国のスタバには私のお気に入りのエスプレッソ コンパナはあるのかしら？」

･･･この国･･･そう、ここはヤバいヤバいと言われて久しい
アラブ首長国連邦の１つ、ドバイだった。

「さてと、まずは健康サンダルをゲットしなくちゃ・・・」
美穂は、お魚くわえたドラ猫を追っかけて、裸足で駆けてきてしまっていたのだった。

破綻してしまった設定をうまくあいまいにし、
あらたな展開へいざなってくれた何者かへ感謝をしつつ、
美穂はオイルマネーへの野心を胸に街へと一歩を踏み出した。

そのとき、砂埃のむこうから、美穂へと近づいてくる人物に気づき、
美穂はとりあえず日本古来のリアクションをしてみた。

「ぎゃふん・・・お、おまえは・・・」

「仁子！!」

仁子は美穂と同い年、しばらく疎遠になっていた友人だった。
こんな所で再会するなんて！
「美穂、チョー久しぶり！！！
前に会ったのいつだっけ？ホラあの頃ジュリアナのお立ち台で一緒にジュリ扇振ってさー！！！」

・・・仁子のバカバカバカァ！！！！！！
美穂は年をサバ読み、上品に表現すれば年齢詐称していたのであった。
「ねー美穂、思い出すよねー♪私達が最初に出会ったのはさー」

まだアタシがごっつい男で、おかしなバンド組んだり
下手糞な小説書いてた頃ジャ〜ン？
え？今〜？今ね、アタシ姫オヤジに目覚めちゃってさ、
最近はもっぱらオイルマネーで潤ってるアラブオヤジに
可愛がられてウハウハなのよ。そうウハウハ。

>>115の展開から、仁子はまだ今１マイナーなのだな･･･そう悟った美穂は、
仁子に対して冷淡に言い放った。

「アンタはその臭いケツの穴で油オヤジと勝負したいのかもしれないけど、
　私は違うわ。私は私の能力で世界をめざしたいの。」

一瞬、砂塵の向こう側の仁子の顔が曇ったかのように見えた。

そしてピタピタのパンツのポケットからおもむろに取り出した携帯でその顔を自撮りし始めた

またどうせ、このｷﾓｲキメ顔をクソみたいなブログにうｐする気だわ…
もう半分壊れかけてる仁子を置き去りにして美穂は砂塵の中を
歩いて行った。
『私にはしなければならない事がある…』美穂は固く心に誓うのだった。

「美穂〜、どこへ行くのよ。やっと会えたと思ったのにん。
　あら、私、怒っている？
　そんな仁子も記録しておかなくちゃ。」

仁子は自分撮りを始めるのであった。

ママはニューハーフの金子もビックリの姫オヤジっぷりだ。

ブログタイトル「姫オヤジ」

仁子はニューハーフ金子と撮った写真もブログにうpした。

「もうこれ以上仁子ネタで引っ張るわけにはいかない。
　でも仁子の人気はやはりホンモノだったのね･･･」そう確認した奥様は、
地鶏に夢中なクリオネならぬクネ男・仁子をその場に残し、
秘密組織のヘッドクォーターから出国直前に受けたばかりのミッション遂行の為、
今やバベルと化したドバイの摩天楼に吸いこまれんとしていた。

「ドバイはヤバイ･･･フフフ。ヤバイのだ〜〜いスキ。」
奥様美穂は赤外線をくぐり抜けたリボルバーS&W M329の感触を右手に確かめた。

まだ十分に若く美しいその横顔は、アラブの赤い夕日に映え、神々しいばかりに輝いていた。

どうにかしよう…この破綻した状況と早い展開に付いて行けぬまま
次のスナイパーにミッションを託す美穂であった。

「おいで美穂、君を待っていたんだ」
「長い間探していた私の花嫁」
太郎がデイモスだったなんて！

美穂は壊れるならどこまでも壊れてしまえと、
ロケットランチャー片手に、ヤバイと言われるドバイの歓楽街に繰り出した。

「あらお姉さま、見て。ロケットランチャーを持ってるあの方。
私たちを狙っているんじゃないでしょうか。」

ドバイの歓楽街で、メンズを引き連れて歩いている
腰まである長い真っ赤な髪と、不自然なまでのバストをこれでもかと
強調している女が、隣にいる姉とおぼしき唇の厚い、これまた
不自然なまでの巨大バストの女に囁いたのが聞こえた。

「ミカさん、あの方、私たちがアラブ王のハーレムの女と気づいて
嫉妬しているのかもしれないわ。それとも･･･
私たちが魔法のランプを探しているのを知っていて、妨害しようとしているのかも。」

その時、一陣の風が姉とおぼしき女のドレスの裾をまくり上げ、
股間に施された蝶のタトゥーが露になった。

しかし露になったのはそれだけではない。
何と！股間のマリモッコリまで露になったのだ。
「お姉さま、見えてるわ！」思わず声を上げた美香。
ハッとして慌ててドレスの裾を押さえる恭子。

しかし、そんな一瞬の出来事をスナイパー美穂は見逃さなかった。

タトゥーと思われた蝶は突然羽ばたき、
白い鱗粉をまき散らしながら、美穂めがめて飛び立った。

それは太郎の双子の妹、ヴィーナスであった。
太郎ことデイモスはヴィーナスと禁断の恋に落ち、
オリンポスの楽園を追われたのだ。
神の怒りを受けた双子のふたり。
太郎は悪魔にされてしまい、
ヴィーナスは片目をくり抜かれ、体が朽ちていく。

そんなヴィーナスが永遠に生き続けるには、新しく美しい体が必要である。
太郎はヴィーナスの新しい体を手に入れるため、
美穂に近づいてきていたのだ。

しかし太郎は美穂を手に入れる失敗を何度もしでかすので、
業を煮やしたヴィーナスが自ら美穂の体を手に入れるため魔界からやってきた。
不自然な巨大バストの不自然な姉妹とメンズたちは、魔界の住人である。

美穂はヴィーナスの蝶が自分に向かってくることに気づき、
邪魔で仕方ないロケットランチャーをひとまず傍らに置いた。
そしてガーターベルトに隠していたリボルバーS&W M329を手に取った。

誰がこの状況をまとめるのかしら？
美穂はリボルバーS&W M329を構えた。

「やたらと無責任に銃や武器を出せばいいってものじゃないわ。
　あなたの女の武器をみせてごらんなさい！」

挑むように、不自然なバストの姉は人差し指を横に振りながら言い放った。
アラブ王のハーレムの女の前では、武器などオモチャのようなものだ。

「ミカさん、いくわよ？」　「ええ。お姉さま」
二人は片手にはめていたごつい指輪を一つに合わせ、叫んだ。

「出て来いシャザーン！」

「アイアイサー！」　もうもうとした煙とともに出てきたのは、魔人であった。

シャザーンは蝶を踏みつぶした

「ヴィーナス！」
いないも同然だった角のある太郎が黒い翼で飛んできた。

ボスッ・ボスッ」
ブルジュ・ハリファの広々としたエントランスに、リボルバーS&W M329の乾いた発射音が静かに響いた。
美穂の放った２発の内の１発はシャザーンの脳天を、そしてもう１発は太郎の心臓を正確に撃ち抜いていた。
「･･･この音が何度でも私を生き返らせるのよ。」そうつぶやき、美穂はリボルバーを構えたままくるっと不自然なバストの姉妹に向き直った。
「残るは４発･･･」不敵な笑いを浮かべる美穂がやたらと美しい。
「こいつは最高のドS女だ･･･。」太郎は消えつつある視界の隅の美穂を、この世で最期の絵として捉えた。
次の瞬間、美穂のリボルバーから規則正しい間隔で４発の弾丸が発射された。
そしてロケット・ランチャーの着弾音を聞いた所で、太郎の記憶は･･･消えた。

「大丈夫？太郎！」自分を呼ぶ声は誰だ･･･？
太郎は、左胸にかすかな痛みを感じながら目を開けた。
そこには奥様美穂の心配そうな顔があった。
「良かった･･･。私２発目にちゃんとゴム弾を入れたつもりだったんだけど、
あなたが本当に死んだかと心配しちゃったわよ。あなたを死なせはしないわ。
あなたにはまだやってもらわなくてはならないことがあるの。」
太郎は何のことか飲みこめないまま、なんとか状態を起こして周りを見た。
そこには、巨大な２つX２人分つまり合計４つのバストがなぜか萎んだ状態の、
とても低姿勢なバストの叶姉妹がケンカをしていた。
「美香さん！だからわたくしがあれ程、シリコン・パッドはダメだと言ったでしょ！
あの女のピストルから出た何かが当たって、シリコンが破裂してしまったでしょ！
万が一の場合に備えて、ホルモン療法が良かったのよ！ホルモン療法が！」

「ホルモン･･･ホルモン･･･あぁ早く日本へ帰って、ホルモン焼き喰いて＝！」
ひと仕事終えるとすぐ腹が減る、ハードボイルドな美穂の頭の中は、既に時湯葉銀座のホルモンのことでいっぱいになっていた。

だ、誰か…次を…ｶﾞｸｯ

「銃オタクの人が美穂と太郎だけの話に戻して仕切りすぎだから
広がらないのよ」

通りすがりのアラブの奥様が断食を終えて呟いて去っていった。

「てか、あそこでいっぱしの銃ヲタ気取りが、ロケットランチャー出してきた時点でおかしいだろ。
その処遇について誰もアイデアが出せない･･･」と、アルジャジーラの記者が不適切な発砲事件を
地元ラジオ放送で伝えた。
「リボルバーS&W M329は軽量でクールな良い銃なのに･･･実に残念だ。」
銃器評論家が遺憾の意を添えた。

「やぁ、内輪もめかい？君たちには新しい仲間が必要だよ」

ズンイチは連れてきた三人を皆に紹介する。
人相が悪いのに、笑顔になれば人を騙せると思ってるらしき布施博という男、
優男の成れの果てという表現しか浮かばない風間トオルという男、
平成の夜明け前は、いい女だと言われていたらしい浅野ゆう子、
なんだか平成夜明け前という裏ぶれた雰囲気の三人だ。

ズンイチは三人をドバイの町に置いて、
無責任な笑顔で颯爽と日本に帰っていった。

美穂はようやく目を覚ました。「暑い…」四畳半のアパートの部屋には
西日がもろに差し込んでいる。体が寝汗で気持ち悪い。
この蒸し暑さが行ったこともないドバイの夢を見せたのか？
寝る前に見るともなくつけっ放しにしてたTVでやってたアクション映画の
影響か、夢の中で美穂はピストル撃ってた気がする。
「どいかしてるわ、私」今の惨めな境遇があんな夢を見せたのか。
このアパートには風呂さえもない。
もう銭湯も開く時間だ。美穂はノロノロと風呂へ行く支度を始めた。

「おや美穂さん。どうやら銃オタクの男がまぎれこんで
　荒らしているようだよ。気をつけなさいよ。」

「あたしゃもうごめんだね」

美穂の住むボロアパートの管理人のおばちゃんは
そう報告してドアを閉めた。

美穂は銭湯へ行くためいつもの道を歩いていた。
おかしい…。
銭湯は確かにここにあったはずよ。

銭湯があったはずの場所には、一台の大きなトレーラーが停まっており、
そのトレーラーには求人募集のビラが貼られていた。

空中ブランコ乗り募集
未経験者おｋ
即日に覚えられる簡単なお仕事です
家庭的な職場です
団長の奥様手作りのおいしい食事付きです
寮完備（バストイレ別の快適マンション！）

風呂付きの部屋に住めるのね、じゃ、ホルモン屋のお運びよりいいわ。
美穂はサーカスに入団することを決意した。

「少しくらい銃に詳しいからって男認定ってなんなのかしら。
　あたしなんて映画「マトリックス」から入った銃プチヲタって程度だわ。
　いやねえ、年寄りのバアサンは。」
そう呟きながら、奥様は身支度を整え始めた。
「こんなボロアパートにいつまでも用は無い。部屋に戻らなきゃ。」
美穂は長い間留守にしていた港南のタワーマンションに帰るための
タクシーを拾った。

美穂の別人格？
双子の妹？
タイムトラベラーのいたずら？

サーカスに入団する美穂と、港南タワーに住む謎のスナイパー美穂
どうやって二人の人格を統一していけばいいの？

誰かがこの窮地を救ってくれるはず。
今までだってずっとそうだったわ。

運命に翻弄される美穂はカーディガンのポケットに手を入れて、
小麦の種をぎゅっと握りしめた。

      ,､_,,, '"~,ヾ,.
　　　ゞ､,!ﾐﾞ'▼)▼)
　　　 /"､<ー=)      ＜既女板にはマモノが住んでおるのじゃよ
　　 /ヾ＿#_~>._∩　 　　奥様美穂の心にもマモノがおったのじゃな
　　 i､　　 -　〃ミ3　　 　いよいよ美穂の人格は２つに分裂していくわけじゃ
　　{.,'` ､ _^_/. ｿ| |　　
　 ﾑ　　　v' iノ　| | 　　　　うんうん、わしはどこまでもついていくつもりじゃよ
　　L-ｰ､=,,A,､　∪ 　　　　じゃが、たまにはマモノスレにも来てくれよ
　　　''"''　''"' 　　　　　　　　ちなみにマモスレは地底祭りを楽しみにしておる
　　　　　　　　　　　　　　　　　マモ奥ばかりじゃからsageじゃよsage　　　
　　　　　　　　　　　　　　　仲良きことは美しき哉　ケンカするでないぞ　　　

マモノの爺さまｳｾﾞｰ！美穂は呟いた。

小麦の設定を覚えていてくれる古参の誰かに思わずほっとする奥様だった。

あれから半年、
港南の高級マンションを飛び出た奥様は放浪の末、引き寄せられるように太郎と再会した。
夫の事を思い出さないわけではない。だが、もう戻る気はなかった。

そう、私は元からこんな女だったのだ。

バンドの追っかけをして全国を移動する。その日に気が向いた男と寝る。
金なんて持たなくても体一つでなんとでもなった。
放浪の女、真性のジプシー。それが奥様美穂の本性だ。
今は太郎と一緒に、この空調さえない4畳半のアパートに落ち着いているが、この生活もいつまで持つのか。
太郎は毎日働きもせず絵ばかり描いている。だけど別に構いやしない。
奥様にとって最も嫌な事は、金が無い事よりも自由がなくなる事だ。
それに気がつくのに、奥様はなんという遠回りをしてきたのか。

そんな風に思っていた矢先、サーカスのトレーラーを見つけて心が沸き立った。
ジプシー女にも、迷いが無いわけじゃない。太郎のことは、まだ愛している。
私がトレーラーにのってどこかに旅立ったら、太郎は驚くかしら？
太郎は追ってくるかしら？
家賃はどーすんのかしら？
迷っているつもりでいて、奥様の心はもう、トレーラーに乗る事を決めているようだった。

奥様は最近おかしな夢ばかり見る。
夢の中の自分は素早い身のこなしで銃を撃ちまくる女スナイパーだ。
港南のマンションは夫と住む柔らかな牢獄ではなく、
スナイパー美穂の日本での拠点となっている。
最近ではどちらが現実なのかが解からないほどのリアルな夢だ。
やはり、自分の心は冒険を求めて居るのだろう。だからこんな夢を見るのだ。
そんな風に結論付けると奥様は煙草に火をつけた。

奥様美穂は煙草の煙をふーっと天井に向けて吐いた。

吐き出す煙の向こうに、さっきまで見ていた夢の中のドバイの砂漠が浮かんでいる。
生き生きと砂漠を駆け回り、堂々と駆け引きをする自分はまるで無敵。

私はいつからこうだったのだろう？

奥様は長いグルーピー生活に疲れて、腰掛OLをしている時に合コンで知り合った夫と結婚した。
結婚相手に選んだ理由？そうねそれは優しくてお金持ちだったから。
それ以上に理由なんてない。
まさかその時は太郎とこうして、うらぶれた町で暮らすとは思ってもいなかった。
奥様は自分の人生を振り返り思わずふっと笑った。

それ以上に理由なんてない。
だけどそれは本当なのだろうか。
奥様は時々夫の笑顔を思い出している自分に気が着いていた。まさかね。
だけど、あの港南のタワーマンションには、戻らない。

奥様美穂は、太郎にも告げずに明日あのトレーラーに乗り込む事を決心した。

太郎は週に一回行く空き缶拾いのﾊﾞｲﾄから帰ってアパートのドアを開けた。

部屋にこもった空気が流れ出てくる。
むっとする空気は奥様と太郎の汗と息が交じり合った匂いだ。
太郎は堕ちて行く自分を楽しむようにその空気を肺一杯に吸い込んだ。
どこまでも堕ちて行けばいい。
親のコネで入社した会社で、死んだように生きていたあの頃に比べれば今の生活の方がずっとましだ。

だけどまさか夜のｺﾝﾋﾞﾆであの奥様美穂と再会するとは思わなかった。
今こうして2人、うらぶれた街でずぶずぶと沈むように生きる自分に太郎は妙な心地よさを感じていた。

「ただいま」
返事が無い。奥様はもうスナックに出勤したのだろうか？
この時間に居ないのは珍しいな。
太郎は深く疑問を持たずにそのまま部屋で奥様を待つことにした。

奥様はホルモン屋に行くとこう告げた
「突然ですいません。私、辞めます。いままでお世話になりました。
残りのお給料は後から太郎が来るので彼に渡しておいて下さい。」
ホルモン屋の店主と手伝いの少女に頭を下げると奥様は店を出た。

そしてスナックに行きその日の取っ払いを受け取ると、その足で奥様はトレーラーに向かった。

「笑わせないでよ、シワが増えるわ」

ジェットコースターも真っ青の急展開に不本意ながらも腹がよじれる程笑ってしまったのは
通りすがりのビリーだった。

「ふたつの人格ですって･･？ふ、フフフ」

鼻で笑いつつ、ミリガンは通り過ぎていった。

トレーラーに向かった美穂は再び我が目を疑った。
トレーラーなど、影も形もない。
そこにあったのは1本の赤い木だった。

そう言えば、男の道具袋を取ってくるよう頼まれていたわ。
奥様は赤い木の根元から男の道具袋を取り、
小さな小屋の男に届けることにした。

こ、小屋っ！ｶﾞｸｯ

よく分からないけど調べてみたら、男の道具袋と交換に普通のチーズがもらえるらしい。
奥様はその知識を目の前の魔法の箱で手に入れた。

チーズを手に入れて早一年。
そのチーズの意味は分からないままだけど、とにかく一年が経った。

昨年の怒濤のような日々は一体どういうことだったのか？
今は穏やかな時間が流れている。
港南のタワーマンションでもなく、古い風呂なしアパートでもなく。
潮風が気持のよいベランダで奥様は海を眺めている。

その時一羽のカモメが飛んだ。

ハーバーライトが朝日にかわる・・・そんなときだった。
「ホルモンヌ、指令だ」
チーズから声がした。

今フィギィア対決で忙しいんだよっ！美穂は答えた。

チーズに向かって吼える奥様。
「キー！あっちが007のテーマでくるなら、こっちはスパイ大作戦のテーマで
キメるわよっ！」
しかし、チーズから流れてくるのは笑点のテーマ。
「ホルモンヌ、もちつけ」

うるさいっ！思わず美穂は怒鳴った。

イライラするなんて、私どうしたのかしら？
でも古い記憶に足を取られては前に進めないのよ。
美穂は気を鎮めるためにも外出することにした。

もちろん、チーズを持って。

えーい、このクソ忌々しいファッキンチーズめ！
イライラと怒りのせいか、美穂の言葉はとても下品になっていた。
投げ捨てちゃえーっ！
美穂はチーズを海にぶん投げた。

すると、どうだろう。
海の底から海神ポセイドンが神々しい光を背負い現れた。
「奥様美穂よ、あなたが落としたのはこの金のチーズか？それとも銀のチーズか？」

「金メダル以外ありえません」

「こんの罰当たりめがーーーーーっ！！！！
おめーが落としたのはこっちの普通のチーズだろうが〜〜〜ｗｗｗｗ」

ポセイどんは待ってました！と言わんばかりの顔でそう言い放った。
最初から答えの中に含まれていない２択をちらつかせ、
人間の欲望を刺激しておちょくるというポセイどんのいやらしさがそこには滲み出ていた。

「今からぁ、おまえにぃ罰を与えるね！ｗ」
嬉しそうな顔でポセイどんはそう続けた。
ポセイどんは神様のくせにドSなのだ！

「今からぁ湖のほとりでスクワット１０００回やって！
やんないと呪うからｗ全身チーズ臭くなる呪いかけちゃうからｗｗｗｗ」

チーズ臭いのはごめんだ。
奥様は渋々スクワットを始めた。
浅田真央ちゃんだってダンベル持ってスクワットしていたではないか。
どうして筋肉ムキムキにならないのかしら？羨ましいわ。

新しい自分になるために、奥様はサクッとスクワット1000回を済ませ、
スケートリンクへと向かった。世界を目指すのだ。
「たのも〜！！」

その前に腹ごしらえ。スケートリンク前の定食屋に入り
『ポセイ丼』を食べ再びスケートリンクへ。
「頼も〜！」
出てきたのはストッキングを被り引っ張り上げてる夜泣き先生だった。

夜泣き先生？
夜回り先生ではないの？
奥様は腑に落ちないまま『ポセイ丼』をガツガツかっ込み、
変身したロデムの背中に乗りバビルの塔を目指そうとした。

おっと忘れてた、スケートリンクにも行かなきゃ。
奥様はあやめ池スケートリンクに向かう途中、夜鳴きそばを食べることにした。

「頼も〜〜〜〜！」

「何度もうるさいイムニダ！」
再び夜泣き先生、こと、ヨナ先生が不機嫌なストッキング顔で出て来た。

何度も呼び出されて精神的に被害を受けたイムニダ。
謝罪と賠償を要求するイムニダ。

「ﾁｯ」思わず美穂は舌打ちをかました。
ゴチャゴチャ言う前に、まずその顔に被って、引っ張り上げてる
ストッキング取れや！

「えっ！それ素顔？ストッキング被ってなかったの？」
美穂は驚愕した。

どう考えても入門するリンクを間違えた。後ずさりする奥様の肩を誰かが
そっと叩いた。
「太郎スケートクラブへおいでよ」
笑顔のズンイチが立っていた。
「コーチが全員『太郎』だよ。ボクの本名も太郎だし」

なにそれ、なんか怖い…奥様は思った。前門の狼後門の虎…どちらを選べば良いのか。

天然ストッキング顔を見ながら練習なんて出来る訳がない。
アイゴー！アイゴー！と煩いヨナ先生を無視し、
美穂は太郎スケートクラブの門をくぐった。

数日後、何とか滑れるようにはなったものの、一つの問題が浮上する。
「太郎先生〜」
「おう」
「なんだ？」
「呼んだか？」
美穂が太郎先生を呼ぶと、全員のコーチが一斉に振り向くのだ。
これでは練習になりやしない。

＜太郎先生〜〜〜）


　　　(ﾟдﾟ)
　　 ﾉl　L　　　　　　　　 (ﾟдﾟ)
　　　ハ　　　　　　　　　　ﾉ　）、
　　　　　　　　　　　　　 　 ハ
　　　　　 　 (ﾟдﾟ)　　　　　　　
　　　　　　　（ L'
　　　　　　　ハ

＜太郎先生〜〜〜）

　　　(　ﾟдﾟ)
　＿(__つ/￣￣￣/＿
　　　＼/　　　　 /
　　　　￣￣￣￣
　　　( ﾟдﾟ )　
　＿(__つ/￣￣￣/＿
　　　＼/　　　　 /
　　　　￣￣￣￣
　　　(　ﾟдﾟ)
　＿(__つ/￣￣￣/＿
　　　＼/　　　　 /
　　　　￣￣￣￣
　　　( ﾟдﾟ )
　＿(__つ/￣￣￣/＿
　　　＼/　　　　 /
　　　　￣￣￣￣

その様はえもいわれぬおかしみがあったが、真剣に世界を目指す奥様は解決策を
考えた。そして、お気に入りのコーチだけを太郎と呼ぶことにした。
そう、あの奥様OL時代の同僚だった太郎。彼も、スケートのコーチに転身して
いたのだ。
残りの太郎には適当にあだ名をつけた。

その後、眠っていた才能が開花した奥様は、
太郎と一緒にペアを組んでフィギュアの大会に出場。

破竹の勢いで好成績を残しついに全国優勝。

あれよあれよという間に冬季オリンピックに出場することになってしまった。

奥様は戸惑った。こんなに目立ってはｲｹﾅｲ！旦那に見つかってしまう。

奥様は再びこの地から旅立つ事を決心した。

旅立つ前に選手村の宿舎に戻って荷造りしなきゃ！

どうやったら太郎やズンイチに会わずに済むのかしら。
ホルモンヌと呼ばれるのも困りものよ。
もう自分の能力で生きていくほか道はないわ。
奥様は自分の才能を使って生きていく覚悟をした。

確かに奥様は夕方のスーパーで買い物しているような、
この板でおかずの作り方や買って良かった商品をロムしているような、
そんなごくありふれた平凡な女である。
でも、ただ一つ、違っていたのは…


奥様は魔女だったのです。

奥様は宅急便をやることにした。

屋号は「魔女の宅急便」で登録した。

うちが元祖・魔女の宅急便ですの。
たまに金曜夜9時から日本テレビ系列で放送してるやつはニセモノですわ。
差別化をはかる為にツーチャンネルに宣伝を書き込みしましょう。

奥様が書き込んだ板は…

奥様はツーチャンネルをやるのが久しぶりだった。
11時を過ぎたらテレホーダイになるので、
その時間を待って電話回線のモデムでネットを繋いだ。
「さてと…広末涼子板はどこ？」

奥様の時間はいろいろ止まっていた。

広末は何かもう、色々と凄いことになっているのを初めて知った。
一体今は誰がトレンドなんだろう？

奥様美穂は頭を抱えた。

トレンド？
ドレンディ俳優？
愛と平成の色男？
呼んだ？

奥様は振り払いたかったはずのズンイチを召還してしまった。

「貴重なテレホタイムを邪魔しないで！！」
奥様はズンイチに必殺Wアサノアタックをかました。

見事にズンイチを追い払った奥様は
ツーチャンネルで勢いがあるスレッドを探し始めた。

そしてついつい開いてしまった板であることに気づく。
『宅急便』とはヤマト運輸の登録商標だったのだ！
屋号変更を余儀なくされる奥様。
「魔女の・・・魔女のホルモンヌ。なんか違うわ・・・」
姓名判断サイトに飛ぶ奥様。

どの名前もピッタリこないわ〜と、奥様はパソコンから離れた。
ずっとパソコンに貼付いていたせいか、とても空腹だ。

奥様は鼻歌でルージュの伝言を歌いながら、
かぼちゃとニシンのパイを焼くことにした。

奥様にとって平成22年はどうやら居心地が悪いらしい。
心にちょっとした隙間ができると、前世紀の世界に還ってしまうようだ。

8位でも金メダルを貰ったかのように晴れやかな笑顔の人もいれば
銀メダルでもお通夜のようにしめやかな表情の人もいる。
ひとの心はわからないものだ。

オーブンからかぼちゃとニシンのパイを取り出しながら奥様美穂は心の中で唸った。

マスコミが煽りすぎよ。銀でも充分頑張ったわ。本当におつかれ様...

奥様はパイをがっつきながら思った。

8位の人、何かケロヨンに似てる…ﾊﾟｲを口に運びつつ美穂は思った。
ところで、今食べてる、かぼちゃとニシンのﾊﾟｲ。美味しいのか？

わたしこれ嫌いなのよねー( -д-) ､ﾍﾟｯ

奥様は自分が作ったことを忘れて、
配達先の女の子のような口調になった。

みらいちゃんはリロ、みきちゃんはスティッチ…。
そう思いながら奥様はパイを冷凍庫にしまった。
そして例の彼女の最後のポーズはバキューンよりゲッツ！が似合ってるわ。
とりとめのないことを考えていると、ドアチャイムが鳴った。

そこにいたのは、飛脚の格好をした男だった。
ちょんまげに褌姿のあられもない格好で長い棒を担いでいる。

「あ、あなたは･･･？」

「VIP宅配便でーす。奥様にお届け物でーす。ﾌﾋﾋwww」

あれはまだ奥様美穂がセーラー服姿の女子高生時代。
真夜中の12時に校舎のマリア像がバック転するという都市伝説があった。
それと同時に有名だったのが飛脚の褌をなでると幸せになれるという言い伝えだった。
渋谷の交差点で、二子玉川の駅前で、歌舞伎町一番街で、奥様美穂は同級生たちと
路駐してある飛脚便のイラストの褌を何回撫でた事だろう。
その褌が、今、目の前にある。

「生褌･･･。」

条件反射で、思わず手を伸ばす奥様だった。

ゴクリ…

（誰かAAを）

　　　　　　　ヽ|/
　　　　 ／￣￣￣｀ヽ、
　　　 /　　 　　　　　　ヽ
　　　/　 ＼,, ,,／ 　　　|
　　　|　（●） （●）|||　 |
　　　| 　/￣⌒￣ヽ　U.| 　　・・・・・･･･ｺﾞｸﾘ。
　　　|　 | .ｌ~￣~ヽ |　　 |
　　　|U ヽ ￣~￣ ﾉ　　 |
　　　|　　 ￣￣￣　　　 |

奥様はゴクリとヤクルトを飲み干した。
宅配便で謎の紳士がヤクルトを届けてくれたのだ。
ではお腹に良い菌を増やすことにしましょうと、
奥様はジョアに手を伸ばした。

届いた箱を畳もうとすると一枚のブルーレイ・ディスクが落ちてきた。
「あら、これは･･･｡」
ハードディスクに入れると懐かしいボスの声が聞こえてくる。
「おはよう奥様美穂くん、君の次の指令はエール・フランスをハイジャックだ。」

その５時間後、美穂はパリ行きエール・フランス夜行便の機上の人となっていた。
そしておもむろに座席シートから立ち上がり、微笑みながら言った。

“OK, Ladies　and Gentlemen,This is High-Jack”
その両手にはもちろん･･･

「また銃オタクの人が語彙がなくて同じ事を書くのかしら」

奥様美穂こと、コードネーム「ホルモンヌ」は呟いた。

両手に持っていたのは金のメダルと銀のメダルだった。
美穂は乗客に問い掛けた。
「あなたが持っていたのはどちらだった？」
すると顔面ストッキング女が
「ウリのメダルは金イムニダ」と言った。
ムカついた美穂は卑猥な微笑みを浮かべ指パッチンした後で
指鉄砲バキューンをしてやった。

フランス語で話さなかったため、何事もなく飛行機はシャルルドゴール空港へ。
到着ロビーで任務失敗に涙するホルモンヌこと奥様の肩を叩く人がいた。
振り返ると、そう、そこにはストレートヘアを独特のおくれ毛を残しながら
結んだお仁が立っていた。
「やっと会えたね…」

そう言いながらも仁子は、すかさず写メで自分撮りをするのだった。

これはなにかの間違いか夢に違いない･･･。そう感じた奥様美穂は、すぐさまそこから立ち去ろうとした。
だがそれは間違いでも夢でもなく、デジャブだと気がつくと、
誰も続きを書かなければ両手に持っていたはずの
ジョア・ストロベリー味とジョア・ブルーベリー味を
仁子が欲しそうにジト見しているのをスルーし、一気飲みした。

三十にして立つ。 四十にして惑わず。 五十にして天命を知る。
お仁は五十にして天命を知ってこうなったのだ。ジョアを飲みながら
奥様はしみじみとそう思った。

私も40代になってんのに、惑わずどころか２ちゃんやってる
場合じゃねーよな、と美穂は思った。

それは奥様がＫＧＢの指令により素性を隠して場末のキャバレーで働いていた頃。
幅広い年代層の常連の中に、その古い店に不釣合いな精悍な顔立ちの若者がいた。
筋肉質で整った顔立ち、寡黙でシャイな彼は辻なんとかいうミュージシャンのライブに
よく行く、と言っていた。

そんな彼がある日帰り際に美穂の胸の谷間に小さなカード状のモノを無言で押し込んでいった。
それはシングルＣＤだった。タイトルは「僕たちの結婚」。

帰宅して流してみると
「一緒に暮らそう、今すぐ暮らそう〜なんたらかんたら」と楽しげな曲だった。
鈍い奥様はこんな曲をおっぱいの谷間に入れてくなんて、何か意味があるの？
と思う程度で彼とはその後、何も起こらなかった。
一度店外デートして食事をご馳走になった位だ。
いつも個性の強い大勢の男たちに囲まれていたからすっかり彼の事は忘れていた。

彼が今の辻なんたらの変貌ぶりを見たら一体なんというだろうか。
心の中で奥様美穂はほくそえんだ。

「のどか！」
そう呼ばれて奥様は咄嗟に振り返った。
とても懐かしい記憶の扉が開いた。

奥様を『のどか』と呼んだ男は、
もう亡くなってしまった天才漫才師にどこか似ていた。
カジャ・キムラだ。一か八かのギリギリで生きていたがる男だった。
しかし、『のどか』と付き合っていた頃の彼はもっと可愛かったはずだ。
何故険しい表情のVシネ顔になってしまったのか。

カジャ・キムラの登場と共に、ゆで玉子好きなお爺さんや、
作家と結婚したキレイな元女優さんや、
イエローキャブの原点である豊満な女性や、
竹刀を持ったデスメイクな女子プロレスラーの面々、
髪の色がカラフルなバンドメンバーたちが次々にやってくる。
奥様が唖然としているのにも関わらず、
彼らは止まらないロマンティックの中、乱闘を始めた。

シャルルドゴールは大混乱。
逃げるようにパリの街へと向かう奥様。
目指すはスケートリンク。
そう、奥様は40代にして現役トップフィギュアスケーター。
待っててキャンデロロ。

しかし、奥様はメトロで運命の人と会ってしまう。

「あなた......!!!ヨシカズさん......」

奥様はうめく様につぶやいた。

奥様を追って夫が遂に現れたのだ。

「おぬし....やっと見つけた。今までどこに行ってたの。」
のんびりした口調で夫は言った。

彼の職業は漫画家で、伝説の漫画雑誌「ガロ」出身の漫画家であり、
90年代にはテレビタレントとしても活躍していた。

夫に近づいたのは金の為。
そして平穏へのちょっとした憧れ。
そんなものは奥様美穂にとっては飽きた玩具に過ぎなかった。

そのつもりだった。

だが、奥様は気がついていた。
最近のこの荒れ狂う嵐のような生活の中で、奥様の心によぎるのは太郎の事でもなく
また指令のことでもなく、この夫の顔だという事を。

「あなた.....ヨシカズさん.....おぬし...」

奥様は夫に駆け寄ろうとした、その時
奥様の胸に突き刺さるような灼熱が走った。

「お....ぬ...し...あ...い........し...(ｶﾞｸｰ」

奥様はドゴール空港の床に崩れ落ちながら、床に広がる血の海を眺めながら
咄嗟に自分の口からこぼれ落ちた言葉に驚いていた。
ふふ、まさかね。
この奥様美穂こと北の美穂。またの名をコードナンバー774の私にも、
こんな感情が残っていたなんて。
私もヤキが回ったもんだわ。

「おぬし...おぬし、どうしたの〜〜〜血ぃ出とるよ〜？」
夫はあいかわらず鈍い。
「ちょっと待ってよ〜せっかく会えたのに〜おぬし〜起きてよ〜〜」

奥様が息も絶え絶えという時に夫は笑いを堪えている様子なのだった。
「ちょっと〜あんたﾎﾝﾄにどうしちゃったの〜〜〜ｐｐｐ」
なんでこの人は笑っているんだろう？
そう彼はいつでもこうだったわ。本当におかしな人。
奥様は自分の中に芽生えた初めての感情に戸惑っていた。
カピバラのようななりをしてこの夫、なかなかの絶倫なのである。
奥様はめくるめく新婚当時の事を思い出していた。
そうあのままあそこに居れば今ごろ.....

それにしても誰？私を撃ったのは？

物陰にさっとみを潜める男の顔を奥様は素早く捉えた。
その顔は「ゴルゴ........？!」奥様の元セフレだった。

そして奥様は気づいた。
ゴルゴが今、夫ヨシカズの背中に照準を合わせようとしている事に....!


「ふんっ！ぬおおおおおおお〜〜〜〜〜〜〜！」

奥様は雄たけびをあげると、渾身の力をふりしぼって立ち上がり、

そのまま夫を小脇に抱えて、ゴルゴめがけて突進。

ゴルゴはまさかの奥様の行動にひるんだ、その隙に

「ホルモンヌ。あれほど背中には注意しろといっただろう。」
デューク東郷ことゴルゴは表情一つ変えずに奥様美穂に言うのだった。

彼のコードナンバーは５６５。
彼への報酬の金を払い込むスイス銀行の口座番号も５６５である。

だが、ゴルゴは無言でID:jcR7HrJR0に標準を会わせ
「チュン」という軽い音をたてて撃った。

「調子に乗って連投しているんじゃない。」

ふっと気が抜けて奥様はデュークの腕の中にくずおれた。
パリの病院に運び込まれた奥様。
意識が戻るまでの三日三晩手を握っていてくれたのは…

袖口から手の甲にかけて広がる体毛。
それは五分丈ボクサーパンツの太郎だった。

「どうして.....パン１なの....？」

奥様は痛む頭で考えた。

ID:jcR7HrJR0は連投しすぎてゴルゴに撃たれ
IDを真っ赤にさせながら、執念深くそう言うのだった。

「連投したっていいじゃまいかっ人間だものっ！」
そう言いながら割って入って来たのは、詩人の「みつを」だった。
どうも最近、銃器ネタでご満悦な奥を銃器ヲタ扱いしたり、
つまらない批判めいた繋ぎレスに終始する輩が多くなってきた･･･
嫌な世の中だ･･･。前レスを尊重しながら繋げるのが腕だろうがっ！と
「ガッ！」を入れながら「みつを」は奥様の手を取りダンスに誘った。
「奥様お手をどうぞんっ」
「でも、この曲は・・・？」
懐かしい小室の♪お〜ど〜るう君いを見てぇこーいがぁはじまぁってえ♪が
“ＰＲＩＤＥ男祭り”のような風情漂う、
男だらけの奥様の病室に流れていた。

「みつを、ありがとう...」奥様は涙を拭うと立ち上がった。

けして私はゴルゴを恨んでなんかいないの...
たしなめられた事、私意外と素直に反省していたのよ。
決して真っ赤になんてなってやしなかった。
確かに私は調子こいていたのかもしんまい。
背中に気をつけるべきだったわ。

そんな事より踊りましょう！

奥様は四股の体勢をとるとやおらヘッドバンギングを始めた。

ID:jcR7HrJR0がうざすぎる件
おまけにいつも長文で執着しすぎてキモイんだよ！

誰もがそう思っていた。

ID:B5auG80G0ってヒステリーで性格が悪いのね･･･
奥様はむせかえるような男臭さに満ちた病室で、ひとりつぶやいた。
そうよ、ブスってたいがいが性格悪いものだもの。
きっとID:B5auG80G0もヒドいデブスなんだろう
そして料理もヘタで旦那に嫌われているに違いない。
私には到底理解できないアイデンテティーだわ。

このスレに時々出没する、なにか「俺が掟だ！」的な勘違いをしている
鼻息荒い奥の下品で攻撃的なレスに、奥様美穂を取り巻くすべてのオーディエンスが
●に触ろうか触るまいか、息を潜めながら見守っていた。

騒ぎはごめんだぜ、と奥様はまだ癒えぬ身体をおして病院を出て、ボクサー
パンツの太郎とシャンゼリゼ通りを歩いた。
アパルトマン、アパルトマンを探さなければ…。

みつをがくれた掛け軸を売るしかない。そう決心し裏道にある骨董品店に入った。
「ボンジューゥ」

ID:mSiSGUuJ0の長文は紛れもなくIDを変えた

ID:jcR7HrJR0なのであった。

その執念深さは誰もが周知していた。

「ボンジュール！！！」

そこに居たのは何とヨシカズ。
「長い散歩に行ってたんだね美穂、僕は反省しながら君の帰りを待っていたんだ」
長い旅、そして邂逅。奥様美穂の胸にあの忌み嫌った柔らかい牢獄だった
東京の狭苦しいマンションが懐かしく思い出された。
「貴方…」思わず美穂は呟いた。
あの柔らかな牢獄での日々、子供達の騒ぐ声、モッサイ夫とのめくるめく夜。
「私一体どうしたらいいの…」美穂は泣き崩れた。

店の中にいた店主らしき、カジャ・キムラが、
飲んでいたジョアブルーベリー味をテーブルに置いて、ニヤリと微笑んだ。

オーマイガー！
邪魔するつもりはなかったんだ。
リロードって大切。

しどろもどろになりながらカジャ・キムラは、
空想Kissのメロディーの中、踊りながら消えていった。

「じゃ、そろそろ行くね。レースはじまるけん。」
そう言って、夫ヨシカズは耳の上に赤鉛筆をさすと
泣き崩れた奥様を残してそそくさと店を出て行った。競艇の始まる時間なのだ。

奥様は呆然としながら夫の背中を見送ると、
カウンターの上に置いてあったジョアブルーベリー味を掴んで一気に飲み干した。

なにか必ず物を出すのはどういうパターンなのだろうと
いぶかしむ奥様美穂。これは罠なの？銃の次はジョア。
これはいったい・・・

ヨシカズはギャンブル漬けの火星人(−)だった。
もう元夫に未練はない。
「今が私の青春。」
美穂は春の気配を感じた。

無視されていた太郎がおずおずと言った。
「とりあえずかけじく売って金にしないとアパルトマン借りられないお」

「そのかけじく私が買いましょう、１タラントンで」
イエスが言った。

イエス様に「連投宣言っ！」と書かれた「みつを」のかけじの価値が分かるのだろうか･･･
疑問を感じた奥様は、とりあえずイエス様に売るのはやめにした。

そこに現れたのは、ブッダであった。
キリストのライバルである。

彼はいかしたヘアスタイルをしている。
それにキリストと違って彼は優しそうだ。

処女信仰のきついキリスト教よりも仏教のほうが自然よ。
奥様美穂はブッダに近寄るのだった。

「『聖☆おにいさん』だけ読んでれば幸せです」
意外にそっけない態度で奥様と太郎は骨董品店を出た。
掛け軸を売ってアパルトマンを借りるという目的は見失ってはいない。
「別の骨董品屋を捜しましょう」
二人は細い路地へと入った。

右に進みますか？
左に進みますか？
まっすぐ行きますか？

フランソワーズ・モレシャンが、
たどたどしい日本語で二人に尋ねた。

「地下のカタコンベに」

話を広げようとしないのはいかがなものかしら。
頭の悪い人もいるものだわ…

美穂は軽く舌打ちをした。

「ヒロガルトオモッテカイタコトデシタガ。アナタノオキニメサナイト
アタマガワルイ、ノデスカ。シキルコトハ、シラケルコト。チョーブン
タンブン、ウエット、ハードボイルド、コメディ、クソテンカイ、
ナンデモアリガリレーモノノダイゴミデス。タブーハヒトツ、ホカノ
ヒッシャノヒハンヲスルコトデス。キニイラナイナラヒトリデノートニ
ショーセツヲカクコトデス」

わけの分からないことをのたまうモレシャンを置いて、奥様と太郎は
カタコンベの中にあるという謎の骨董品店に向かうことにした。

ID:h8R+lnK30　は、いつものあいつだったのねと
誰もが気づいたのであった。

ID:gpz5mXbv0の口癖は「誰もが」なのだわｗ･･･美穂はいい加減ウザさを感じていた。
評決でも取ってみたのか？なんだ？そのコンプライアンのゴリ押しは･･･
いや、そんなことをID:gpz5mXbv0に言ってみたところでID:gpz5mXbv0のＫＹ残念な性質は直らないのだろう･･･。
ここはあの方をお呼びしよう。
あの方ならオカマが腐ったようなID:gpz5mXbv0の根性を叩き直してくれるの違いない。
もしかして、ID:gpz5mXbv0は仁子なのかも･･･。
ここで散々ネタにされているから、邪魔しに来ているの？
まあそれはどうでも、ID:gpz5mXbv0は何度でもＩＤを変えて来るのだから、
やはりあの人でなきゃ駄目だわ。
美穂はあの方を召喚した。

コンプライアン！違うわ！私はコンプライアンなんて召喚していない！
正しくはコンプライアンスのゴリ押しよ！
単なるタイプミスだわ！
こんなとこをオカマが腐ったようなID:gpz5mXbv0に突っ込まれたくない！
美穂は、速攻でというわけでもないが、一応自己レスを入れてみたりした。

チローリア〜ン　チローリア〜ン♪

その時鐘を鳴らしながら天使の羽をつけて舞って行ったのは
きんどうにちようだった。

「あらあら。あんたたち仲良くしなさいよっ」

つづいて、黒い翼、ねじれた2本の角、獣の下半身をもつやたらに色っぽい男もあらわれた。

「デイモス！」

静謐な地下墓所のはずのカタコンベは、天使と悪魔と仏陀が入り混じり、わけのわからないことになりだした。

「わけのわからない名前をしおって。おまえは膝方と母乳をストローで吸っているがいい！」
「美奈子をヴィーナスと呼ばせるほうが、よっぽど無理があるわよ！」

とつぜん、洞穴の奥から光がさし、何者かがあらわれた。

「あなたは伝説の・・・カタコンベ・・・カタコンブ・・・コンブ・・・ コンプ☆ライアン！！！」

ID:IkVK2OZ70の病的な書き込みは
太郎と美穂だけに絞るワンパターンの話をぶったぎって戻す
ID:h8R+lnK30の「いつもの行為」なのだわ！

いい加減にしてよとオリンポスのヘラは酢コンブを
しゃぶりながら思うのであった…

てｓ

バカチョンはサイバーテロとやらを仕掛けてくるわ、
また統合失調症のばばぁが来てるわ最悪だな･･･
太郎はゲンナリしていた。
「大体こいつ、いったいなんで俺を嫌うんだ？」
それに俺はID:IkVK2OZ70だがID:h8R+lnK30じゃネーシ・・・ｗ
こいつ、しょっちゅうこんなカキコしてるよな
誰かと誰かを関連付ける関係妄想ってヤツだわ
こりゃあガチで統失だわヤベっｗ
以後スルーなスルー！
太郎は『統失患者がここに出入りしています。
遭遇された方はもれなくスルーしてください。
仕切りたがりですがマトモな文が書けません。』と書いたメモをあちこちに貼り付けた。
「これで安心っとｗ」

「ところでコンプライアンを召喚してしまったのは誰なの？」
美穂は、ここではじめてコンプライアンスとコンセンサスを取り違えていたことに気がついた。
そして、洞窟の入口に立ち、逆光の中でまだ顔が見えないでいるコンプライアンが
最近ストーカーばりに出没する太郎よりもイケメソであったらいいな・・・と願った。

可愛い奥さんよ。勘違いしてるね、昔話してどうすんの？
バカｘｘ丸見えってオマエのこと

tes

「復旧オメ！」
美穂はもうどんなことがあっても、２度と韓国面には行かないと誓った。

話を戻し・・・
洞窟から出てきたコンプライアンはどことなく北村一輝に似ていた。
「まるでイケてるやん･･･。」
美穂は思わず舌舐めずりをした。

でも奥様は知っていた。
北村一輝の息子の顔を。

「いけないわ、彼と子供を作ったらあの顔が生まれてしまう…」

奥様は激しく高鳴る胸の鼓動が、都々逸のリズムに変わっていくのを感じた。

「だ〜れが殺した　クック・ロビン♪」

都々逸のリズムにのって華麗に現れたのは

あはははははっ！トシちゃんで〜〜〜〜すっ

爆音の『抱きしめてトゥナイト』の音楽に乗って、
髪の薄いおっさんが現れた。

バックダンサーは赤いワンピに女子より美しい指先ののおちんだ。

ID:dQa4t+L00の下品な文体がいつもの痛い人なので
みんながガン無視完全スルーしている美しさ…

ホワイトブレンド・春の日差しに〜♪と美穂もサイドステップを踏みだした

のおちん…ジャPAニーズよ永遠に…

美穂は資生堂のホワイトブレンドで唇を染め、セーラー服に着替えた。
学園を救うため、反逆同盟の一員になることを決めたのだ。

モレシャンの言ったことはもっともだお、とのおちんは思った
ID挙て仕切る奴さえいなきゃ読んでてめちゃ面白いスレなのにバカじゃね？
と初カキコする美穂

反逆同盟は口が悪いのだ
さー、学園へ

>>255ﾊｹﾞﾄﾞだわ
ヌルーされてるのは自分だと気がつかないのねなんかかわいそうだわ
でも、こんなこと書けば
今度は私がまた仕切りたがりの精神病の患者さんから
ＩＤ挙げられてわめかれるのかしらん･･･
キティちゃんさえいなければ、面白い流れのまま進むのに･･･
よっぽど粘着質なのね

さてさて、学園学園！

>>255つるりと禿げ上がるほどﾄﾞｳｲですわ
この手のスレで仕切られると一気に醒めるのよね。まったく。

北村一輝似のコンプ☆ライアンとパンツ一丁のままの太郎を引き連れて
奥様は学園へ向かうべく、グーグルで学園の位置を調べた。

広げたマップには、丸い人魂マークが点々とついていた。

「何何？平成22年3月3日本スレを読み笑い死に･･････？」

奥様は間違えて大島てるを開いていたのだった。

そこに学園の看板があった。

『ようこそ！ハレンチ女学園、こちらです⇒』

更に小さめの看板には毒々しい色の文字で

「花びら３回転ｖ明朗会計ｖ写真見学無料ｖ」と書いてある。

奥様は又しても間違えてしまったのだった。

でも美穂は漢であった。

「頼も〜う！」

「いらっしゃ〜い」

首からショッキングピンクのフェイクファーをまとった恰幅の良い男おばさんが
現れた。営業スマイルのその男おばさんは島大輔だった。

一方その頃、学園はとてつもない危機に瀕していた。
船頭ノブ子は、浅田飴の缶を見つめながら絶望感に打ちひしがれている。
ピンチなのに、爆発する赤いバラが飛んでこないからだ。
「ミホは学園を救わないつもりなのかしら？」
ノブ子は永井GOの漫画を読みながら、
北海道シチューを貪り食っているケン・オガタjrに問いかけた。

「いやな予感がする」

セーヌ川のほとりで花売り娘が呟いた。
もちろん花売り娘とは仮の姿でありコードネームはひばり君だった。

「ひばり君、速水様からの注文だ。今すぐに紫のバラを大量に集めてくれ」
ひばり君は暗号まみれのミッションを受けた。
ひばり君は目の部分をくり抜いたアイマスクを装着して、花を剣に持ちかえた。
『シルバーフライファミリー〜男の勲章〜』でボスが待っているのだ。

私はゆくわ　乙女の胸に
清く咲く　あしたの花
私は…

Kindo-Nichiyo, c'est moi !
(あらあらあらあらあたしはきんどーちゃんよ！)

Pour mes parents, mes soeurs et mes amis,
(略)

Je vais à Versailles, à Versailles !!　
(あたしはベルサイユへ行くのよ、ベルサイユへ!!)　

「僕はグロいチューリップだ。お供しよう」
と、薄汚い青年が現れた。

あなたはイケメンホームレスの中国の人ね？
美穂はそう呟いた。

楽しいロンドン、愉快なロンドン！

「世界の女は俺のもの、俺はダイアモンド☆ユカイ」
と、もう青年とは呼びづらい年代の男が美穂にドヤ顔で答えた。

やばいわ。ものすごいスピードで状況が展開し拡散し収集がつかなくなっているわ。
美穂はとまどった。
とりあえず、今いるモノを把握しよう。
美穂は、指差し確認をはじめた。

ええと・・・
北村一輝似のコンプ☆ライアン、
パン一の太郎、
嶋大輔、船頭ノブ子、ケン・オガタJr、
ひばり君、
きんどうにちよう、
ダイアモンド☆ユカイ・・・

あはははは！と高らかに笑い、やたらに足を振り上げるハゲと、のおちんを袈裟懸けに斬り捨てながら、
美穂は数え終えた。

「とりあえず、向かうところのあるらしいひばり君ときんどうにちようはそのまま解散させよう」
「きんどうにちようはフランス語も達者で、ベルサイユに行くようだし・・・ベルサイユと言えば、ルイ王朝、といえばマリーアントワネット・・・
革命・・・バスチーユに白旗が・・・今宵、お前の妻に・・・・は！！やばい！！」

美穂は、危うくベルバラ関連を召還しそうになり踏み止まった。

「いまは、これ以上混乱させるわけにいかないわ。とりあえず、全員に適当な用事を言いつけて追っ払おう」

「大輔、セブンでいちごスペシャル買ってきて」
まずは、嶋大輔をパシらせた。

「さて、次は・・・」

美穂はラセーヌの星を名乗って銀の剣をふるったら温水の頭にチップした。

そこでオスカル登場！

「アーーーーーンドレ！」
豊穣な大地から真央ちゃんが登場！

それを見た通りすがりの婆さん
「その者蒼き衣を纏い金色の野に降り立つべし」
を残しシマムラに買い物に出かけた。

バルス

バルース!!!!!!!!

凄まじい轟音と光が炸裂し、奥様は吹き飛ばされた。

「♪バルス…　バルス…　ムスカの味
バルス…　バルス〜バ〜ル〜ス〜〜ゥ♪」
奥様は譫言のように歌い続けた。

奥様は決めた。
学園を救うとかどうでもいいわと。
そんなの暇を持て余した「あはははははっ！」のハゲと、
のおちんに任せればいいのよと。

奥様はパルナスのケーキを手みやげに持ち、
男おばさんの島大輔の店を訪ねることにした。

「あ〜らいらっしゃい。遅かったのね。セブンのいちごスペシャル買っておいたわよぉ」

気づけば北村一輝似のコンプ☆ライアンと5部丈ボクサーパンツの太郎は
すでにソファでくつろいでいた。かわいいニューハーフ達に囲まれて。
その中には勿論黒髪ロン毛ストレートの姫オヤジ仁子もいた。

「さあそろそろショータイムよ。スタンバイしなくっちゃ」
フーミンとうららちゃんがニッコリと席を立つ。

「IT'S SHOWTIME!!」

耳をつんざくボリュームで、あの曲のイントロが聴こえてきた。

誰も寝てはならぬ！とばかりに口ひげデブのイタリアおやじと
えび反り返っているキツめの女がクルクル回りながら登場。

　美穂！寝てんじゃないわよ！

はっっ！

私はどれくらい眠っていたのかしら？
美穂はだだっ広い高原の丘で一人目覚めた。

「遅れる遅れる、急がないと！」

懐中時計を片手に、ウサギが走り抜けた。

追っかけた美穂は瓶の底に落ち、身体が小さくなった。

美穂はポケットの中で飼われることになった。

おしまい♪

「ちよみ･･」

誰かしら？私をちよみと呼ぶのは。

「ちよみ、お前の着替えを手作りしてみたぞ」

切りっぱなしのフエルトで出来た小さな洋服を見せながら南くんが言った。

『この人の顔みたことあるわ』
ちよみは黒縁メガネの男を見てそう思った。
『それにしても、彼はなんと大きな男なのだろう？』
と、ちよみは男を見上げてそう思った。
ちよみは自分がミニマムサイズなことを理解していなかったのだ。

「私はちよみじゃなくて美穂なんだけど」
主張してみたが、黒縁メガネの男にはキーキー声にしか聴こえない。
「すいませーん、ここどこですかぁ〜？」
いくら叫んでも黒縁メガネの男は
「ちよみ…」
と美穂を呼ぶ。

ちよみと呼ばれる美穂は現状を打破するべく、頭を抱えた。
ピコーン！ひらめいた！
ちよみと呼ばれる美穂はポケットの中の青いキャンディを口に放り込んだ。
『マンガの神様の開発したキャンディだもの、
　これで大きくなれるはず…』
美穂ことちよみと呼ばれるホビットは、微かな望みに願いを託した。

青いキャンディの甘酸っぱさが口に広がると、美穂は自分の体がでかくなるのを感じた。
元々線が細くしょぼい日本人体型の美穂だったが、あっというまに化膿姉妹も真っ青の美巨乳美女に変身した。
体がでかくなると同時に着ていた洋服は張り裂け、今は胸元と下半身に僅かな布が残っているのみだ。
変身すると何故かデニムがバミューダになってしまう超人ハルクもビックリだ。

「こんなの・・・ちよみじゃない・・・！」
美穂は黒縁メガネの男の家を追い出された。

「へーハルクってデニムがバミューダになっちゃうんだ。ビックリ」
のんきにうららかな住宅街を半裸で歩く美穂。

「もしもし、そこのマドモアゼル。これを差し上げましょう。」

執事風の男が美穂を呼び止めた。男は慣れた手付きで美穂に手早く洋服を着せた。
それは白いペチコートが裾から覗くラブリーキュートなロリイタ服だった。

「この衣装が気に入ったら是非ここへいらっしゃい」

男は一枚の名刺を美穂に渡すと足早に消えて行った。
そこに書かれていたのは

「しまむら」

とってもお買い得な匂いがした。

美穂はゴージャスなメイド服に身を包み、
しまむらシャンゼリゼ店にてファッションアドバイザーとして働き出した。

シャンゼリゼ店の店長はあの男だった…。

そう、全身しまむらでちょい悪オヤジ風にキメたケン・オガタjr。

一番のお得意様は、超ロングなストールを絶妙なたらし具合で巻いた、ナカタ氏だった。

ナカタ｢俺はこの先どこへ行くのだろう？｣

それは美穂にも直人にも誰にも分からなかった。

2番目のお得意様は玉置工事氏だった。
昨年は太った島大輔のようにむくんで往年の彼女に介護されていたが
今はスッキリ痩せて顔もお直ししてお目目パッチリ
超元気そうにお気に入りのドドメ色スーツに身を包んでいた。
「6月からのツアー頑張ります」

「き、きもい…。あんたは変なベンチウォーマー着て、ニトリに行くのがお似合いよ」
と、美穂は工事の黒髪に反発心を覚えた。

やがて昼時。店員達の動きが激しくなる。

「アズマ行きます！」
「ヒカリ行きまーす！」

アドバイザー達の隠語である。
アズマはトイレ、ヒカリは食事を意味するのだ。

「みんなどっかへ行っちゃえ、あたし一人で生きるわ」

さびしげな瞳で、あの女が呟いた。

「やがて洪水ですべて夜の青の色に染めていくごとく君よ！しまむらで変われ」

クリアレックスを手にしたあの女は船頭ノブ子だった。

「僕は知ってる　Your heart！」

ケン・オガタjrはニヤニヤしながら、ノブ子を見つめていた。

にわかに表通りがにぎやかになったと思うと、
軽快な音楽にあわせて、一歩間違えれば往年の竹の子族風と見えないこともない、
そろいの衣装をまとった若者たちが、踊りながらパレードをしてきた。

「”シャンゼリゼよさこい”が今年もやってきたね〜モナム〜セシボーン〜」

美穂は、うずうずする身体を抑えきれず、パレードに飛びこんだ。

釣り目の男にガン見されているのを美穂は感じていた。
「彼は…、沖田ぴろゆき？」

キツネ目の少年のまわりには少女達が群がっていた。

「ついて来いよ〜(ハーイｖ)」
「ついて来いよぉ〜(オッケーｖｖ)」

群集の中にあり一段と派手な集団は楽しげに盛り上がっていた。

♪ABC〜
美穂の踊りはジャクソン5のような、フォルダー5のようになっていた。

ウンチャッ♪　チャッ♪

「素敵よおお！お客さん！！」

教師生活25年のくま先生ことチューリップ熊美も大熱演だ。

狂乱を巻き起こしながらパレードは進み、
気づくと、すでにそこはシャンゼリゼではなかった。

美穂の肩に、誰かの手がポンと置かれた。

「お帰り、ホルモンヌ」

そう、そこは、とうに捨ててきたはずの、時湯葉銀座だった。

「ああ、帰ってきたのね」

とホルモンヌは懐かしい街角の匂いをかいだ。

「この匂い…、何だったかしら？」

味のある巨大な猫が足元にとぐろを巻いていた。
幸せそうに寝息を立てている。

食欲をそそるその匂い。それは

『ホルモンアケミ』の一押しメニュー、

「ああ、ヤミツキ豚塩ホルモンだわ･･･」

その時だ。奥のテーブルから精悍な若者の声がした。

「チビッコキュウリ1本！」

「ｽﾏｿ、チビッコキュウリは売り切れだ」

精悍な若者だと思ったその声は、実は初老の半裸の男性だった。
初老の男性はチビッコキュウリのかわりに、
ヌンチャクを振り回しながら、美穂に近づいてきた。

「アチョーっ！キエエエー！チョンワチョンワ？」

ヌンチャク男に追い詰められた美穂は
｢ニーハオ！シェイシェイ！チンジャオロースー！焼肉定食！！｣
と、知っている限りの中国語で応戦した。

おお、小姐。やはり君だったのか…。
ヌンチャクをポトリと落とした男が放心状態で呟いた。

「お命頂戴いたします」
と、美穂は太極拳の優雅なポーズを決めながら、
放心状態の男に向かって妖艶な微笑を浮かべた。

瞬間、美穂の指先が宙を切り裂き、男に必殺の一撃を加えた。

崩れ落ちながら、男は幸福に満ちた笑顔を浮かべた。

「・・・完璧だ・・・美穂、お前に・・教えることは・・・もう、なにも、な・・い・・・
・・・・・・・ありがとう」

美穂は、訝しげに男の顔を凝視した。

「あ、あなたは…！」

この男が誰なのかは、次のレスで謎が明かされるだろうと美穂は思った。

えーっと

…た、太郎が初老の男性に化けて…あ、初老って本当は40歳なんだっけ？
じゃあ、40がらみそのまんまの太郎だった。

「太郎!?　あなたなの？　しっかりして！」

kill bill…

汁　煮る…

出汁。キムタコが呟いた。
まるで家でとぐろ巻いてる草履のようだ。

命を取り留めた太郎を入院させ、書き置きを残した美穂は、エジンバラに
向かう列車に乗っていた。
キングスクロス駅、そう、ハリポタに出てくるあの駅から北へ北へと向かっていた。
隣には男が乗っていた。

愛の逃避行である。

あの日、病院で出会ったキムタコと美穂は逃げてきたのだ。
「ラブ　ショーンズ…」
キムタコは呟いた。
「エジンバラにいるような気がするんだ」
キムタコはショーンズさんの処に行きたいと言った。
「そこへ行けばどんな愛も叶うというよ。誰もみな行きたがるが、あまりにも
遠い〜オーイエ」
ラブ=ショーンズ師の前でキスをしたカップルは、永遠に幸せになれると言い張る
キムタコを信じて、美穂はついてきた。
「帰りは、ミセススーザンにも挨拶に行こうな！トマトの皮は超ヤバいんでぇ、
歯磨き必須で！」
話は合わない。徹底的に。しかし、美穂は『愛の逃避行』という美しくも儚い
言葉に酔っていた。

その一方で、美穂は、駅弁を買ってこなかったことを後悔していた。

「ご当地弁当の車内販売があるって言ったじゃないの。ありゃしない。
列車の旅の最大の楽しみなのに。このタコが」

しかも、冷凍みかんとティーパックのセットされたお茶も販売していなかったのだ。

「まったく、いまどきの国鉄はどうなっているのかしら」

唯一手に入れたワンカップをちびちび舐めながら、おつまみがほしくなった美穂は、
このタコに酢をかけたら食えるんだろうか・・・なんてことを考えていた。

「国鉄じゃない、E電だ」
初老の巨漢男性が眼鏡をずりあげながら、美穂に耳打ちした。

「それよりハギスはないんかハギスは。アテにしたいんや」
いつの間にか酔っ払っていた美穂は巨漢男性に乱暴な口をきいた。

「ちょ、まてよ」
キムタコが諌めようとしたのか口を挟んだ。

「でじるでも飲んでろ」

と、巨漢の男性は
パッとサイデリア〜のダンスを踊り始めた。

はぎ酢って何だろう？巨漢の男は美穂に尋ねた。

「ハギス（Haggis）とは、羊の内臓を羊の胃袋に詰めて茹でたスコットランドの
伝統料理」
wiki丸写しで美穂は答えた。
「wikiでは写真も見れるしオヌヌメ！」

カワハギ関係だと思っていたタコは、
言わなくてよかった・・・と内心ほっとしていた。

wiki見て来たわ。サラミなのか動物なのか皮肉なのか
何が何だか分からないわ！美穂が言った。

ともあれ、何が何だかわからないハギスが名物のスコットランドに列車は到着した。
「ここがエジンバラ…」
美穂は辺りを見まわしてキムタコに訊いた。
「で、どこにいるの？ラブ・ショーンズさんは」

美穂の言葉を全無視のタコは、
愛妻手作りのメタボ丼をかっこんでいた。

つーか、これヤバくね？
相変わらずキモタコは馬鹿丸出しで美穂はつくづく愛想が尽きた。

とりあえずスコットランドに来たからにはネス湖まで行かねば。
「ちょ、待てよ」

ネス湖はバリバリに各国からの観光客を意識していろんな言語で書かれたパンフが置いてあり、
断る間もなく、可愛いぼんぼりのついたニット帽を頭にのせられ、
スコットランド民族衣装のイラストが書かれたエプロンをつけさせられて記念撮影だ。

ネス湖はどんよりしていてネッシーには会えそうもない。
小さなみやげ物やを兼ねた建物の中庭に記念撮影用にしょぼい池があり、
首の長いネッシーのオブジェが涙を誘う。

少し離れた所には同じように記念撮影用のエプロンをつけさせられた
羽振りのよさそうな中国人家族がはしゃいでいる。

ロンドンはまさに人種のるつぼだったが、ここには観光客と地元の人しかいない。
学校帰りらしい地元の小さな男の子達が美穂に向かって
「アジアン！！」と吐き捨てるように叫びながら走り過ぎた。

その時、背後でしょぼい作り物ネッシーの眼がキラリと光った事に
美穂は気づかなかった。

まずは腹ごしらえ。
「フィッシュ＆チップスのお店は…？」
美穂は屋台を目指して歩いた。

「あらそこのおふたりさん。テイクアウェイの中華は如何？」

可愛いコックさんの衣装をつけたきんどーちゃんが小さな中華屋さんの前で誘惑する。
だが美穂の目指すものはそれではなかった。

美味しそうな香りの中華に釘付けになっているキムタコをひっぱって先を急いだ。

「オソォシップヨー」派手なチマチョゴリを着た整形チェ・ジウと
ヨン様風の若者が営む韓国屋屋台の従業員が美穂とキモタコに声を掛ける。
鼻腔を刺激するカルビの匂い…肉食いたい…。

「心と心、つながってるお」

ちょっと髪がはねた鮎川まどかがホットチョコの屋台から声をかける。
素敵な甘い香り･･･甘いもの飲みたい･･･。

それでもやっぱりハギス！ハギスを食さねば！
美穂はキムタコと超古いパブのドアを開けた。
「汚なシュランで三ツ星みたいなパブね…」
「マジで？」

「ハギスはないけど、タコ酢ならありますよ」
と、真っ赤な鼻のアイリッシュ訛りのじいさんが言った。

「ちょ、ここアイルランドじゃなくてスコットランドｗ訛るならぁ、
スコットランド訛りだろｗｗｗ」
キムタコは嗤ったが、美穂はにこりともせずに言った。
「津軽の居酒屋の店主が甲州弁だってこともあるし」
そして、流暢な英語で言った。
「ミスター、ワンタコ酢プリーズ」

ハギスはね、サラミ風と思って切るといきなりミンチ風の
肉がワラワラとはみ出すんだよ。
ちょっと見、虫の固まりみたいでグロいんだ。
爺さんが言った。

タコスではなくタコ酢でもなくハギスが運ばれてきたが、
美穂とキモタコは、一切それについて触れなかった。

「そうだったわ、フィッシュ＆チップスを頼むはずだったのよ。
マスター、フィッシュ＆チップスプリーズ！」
「ハギス、超うまくね？嫁のメタボ丼の次にうまくね？」
愛の逃避行をしてきたはずなのに、嫁の話を出す無神経なキムタコを
美穂は冷たい目で見た。
「酒でも飲まなきゃやってらんないわ。マスター、スコッチある？」

小洒落たおちょこみたいなミニグラスに入れられたスコッチを煽る美穂。
すし屋の湯のみでぐいぐい呑みたい気分だ。
隣ではキモタコがフィッシュ＆チップスにタルタルソースとケチャップを山ほどかけて頬張っている。
美穂は塩とビネガーをたっぷりふりながらキモいものを見るような目でそれを凝視した。

やがて二人の前にはマーマイトがべったり塗られたトーストが出された。

「どうやらスコットランドに行ったことがある人が書き手にいるわね…」
美穂はマーマイトトーストをかじりながら呟いた。
「悪いことじゃないわ…」

そのときであった。
パブのドアが乱暴に開けられた。
そこに立っていたのは…

ロバート・カーライル！

ではなく…

小麦を握り締めた爺さんだった。

「ラブ・ショーンズじゃね？」
キムタコが爺さんを見て言った。

「俺、リスニングは超得意だし」
キムタコは得意な英会話能力を発揮するため、
美穂が止めようとするより早く、どんどん爺さんに近づいていった。

「ユーアー　ア　ミスター　ショーンズ、イズヒー？」
スピーキングはやばいんだね…美穂はそう思いながらキムタコを見つめた。
「フカ疑問文とかも俺、超使えるしぃ」
爺さんは片方の眉を上げてキムタコを見ると、口を開いた。

「なんでファミリーピュアのアロエinの方が生産終了やねん！」

マーマレイドなら新潟の奥地に住んでるウチの婆様だって食べてるわよﾌﾟｯ
何がスコッとランドよﾌﾟｹﾞﾗｯと思ったが、マーマイトと聞き
何それ？知らないわ、誰か教えて、都内在住7年目だけど
やっぱオラいなかっぺ？と激しく動揺する美穂が居た。

「なんでファミリーピュアのアロエinの方が生産終了やねん･･･!!」

それはまさしく美穂だけに理解できる暗号だった。

>>361様に説明しよう。
マーマイトはオーストラリアのベジマイトと並び、食すと
うまい！と感激する者とうへぇ！と絶叫する者のまっぷたつに分かれるが、
イギリス全土及び旧英国領では大衆食として広く愛されている。
ビールの酒粕を主原料とする。最近ではベジタリアンにも人気。

ウィキペディアより
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%88

何者かに呼び覚まされたような表情の美穂を尻目に、
キムタコはクロテッドクリームをべったり載せたスコーン片手に
アホ面下げてポカンとしていた。
クイーンズイングリッシュが聞き取れなかったのか？

あ、ありがてぇ。マーマイトもクロテッドクリームも知ったからには
オラ世田谷住民として胸張って東京で生きて行けるよ、婆っちゃん！
美穂の心の中のいなかっぺが叫んだ。

でも、そろそろ海外も飽きたわ。新潟にでも行こうかしら？
このタコ置き去りにして。心の中の悪魔が美穂に囁いた。

トンネルを抜けるとそこは雪国だった。

「うっ！この匂い･･･モツ煮の出店があるのね」

トラファルガースクエアのライオンの上にまたがりはしゃぐキモタコに別れを告げ
美穂は次の地へやって来た。
ヘタな男と一緒にいるよりも一人のほうがずっと気楽で楽しい事に気づいたのだ。

越後湯沢の駅中には楽しげな出店が沢山でていた。澄んだ空気は冷たく頬に心地よい。

「ほんと、一人のほうがずっと気楽で楽し…」
振り返ると男がいた。しまった、彼のことを忘れていた。
「なんでファミリーピュアのアロエinの方が生産終了やねん！」
といいながらもエキゾチックジャパンの風景をにこにこと見回している、
スコットランドの愛の守り人、ラブ=ショーンズ氏である。

「今日のお宿はあそこにしましょうか」
「なんでファミリーピュアのアロエinの方が生産終了やねん！」
「……」

んなもん欲しけりゃネットで買やぁいーじゃん･･･と美穂は心の中でつぶやいた。

「ロクな男はいねーわ、金はねーわ、最悪･･･。」
美穂は「出汁」と書かれたＴシャツを着たキモタコファンらしいラブ＝ショーンズを
置き去りしてひとり歩き出した。

「！」美穂の顔に突然笑みが浮かんだ。
ボスからもらってガーターベルトに挟んであったまま忘れていた
アメックス・センチュリオンカードの存在を思い出したのだ。

「ランラランララン♪」いつの間にか美穂の歩調はスキップに変わっていた。

そこへ笑点のテーマ曲がスキー場の拡声器から流れ出した。

ゴメ。上げてしまった。

チャッチャチャスチャララ♪チャンチャン♪

「あの円楽はにせものよっ、腹黒め」

美穂は変化が苦手だった。
当然、好楽の存在にもまだ違和感がある。

「もちろんドラの声はのぶ代派よ」
のぶ代は初代ドラではないのだが、美穂は知る由もない。
「さあ、新潟に来たからには

>>361様の婆ちゃんに挨拶に行かないとね。」

婆ちゃんの住む奥地までバスでひとっとび。
奥地と書かれたバス停の前には渋い日本家屋が建っていた。
目元と口元に>>361様の面影を宿す新潟美人の婆ちゃんに美穂とショーンは手土産のマーマイトとミンスパイを手渡し
一礼すると駅前までとんぼ帰りした。次を逃すと今日のバスはもう無いのだ。
お婆ちゃんから笹にくるまれた手作り風の飴を頂いた二人はバスの中で頬張った。

「口の中がずるむけになるけどうめー」

窓の外は雪景色。
寒さでほほを赤くした２、３人の女子高生が乗車してきて、二人の姿を認めると、
恥ずかしげにほほえんで、「こんにちは」と挨拶してくれた。
拡声器は繰り返し笑点のテーマを流しているが、もう、それが意味するところなんて、
美穂にはどうでもよかった。

「あれはもう、過去の話・・・覚えている人なんていないわ」

ふと気づくと、ショーンズの手が美穂の手にそっと重なっていた。
見上げると、ショーンズのほおを一すじの涙がつたっていた。
美穂は思った。

「そう・・・わたしたち、必死でがんばってきたもの。
ここが、旅の終着地。
それで、いいわよね・・・？」

ショーンズの膝から、ドサリとコートが落ちた。
もたれあい、目を閉じた二人の小指と小指は赤い毛糸で結ばれていた。

陰気な顔をしたおかっぱのバスガイドが、死にそうなかすれ声で歌いだした。
「春のほほえみのなかで、きみの優しさに埋もれていた僕は弱虫だったんだよね・・・」

元高校教師だった>>361の婆っちゃんが更なる土産を手渡そうと乗り込んで来て
ふたりを見つけ言った。
「早まっちゃなんねえだ！」

婆っちゃんの手には、ファミリーピュアのアロエin１ダースが！
ショーンズはぱっちりと目を開けた。
「ミフォ！ミフォ！オキテクダサイ！」
美穂はショーンズが初めてまともにしゃべったのに驚いて目を覚ました。

「オーマイガッ！」

驚いた美穂の目が縦長になる。熊田陽子もビックリだ。
ファミリーピュアのアロエin１ダースを婆っちゃんからうやうやしく受け取るショーンズ。

そして>>361には想像もつかない現実があった。
婆っちゃんはくのいちだったのだ。

オ、オラ>>361だけんど秘密がバレちまったら仕方なかっぺよ。
オラんちは先祖代々忍者の家系だ。
特に女系は『夜も凄っいんだよ、くの一』として有名なんだよ〜！

二人の無事を確認すると婆っちゃんは目にも留まらぬ速さで夕刻の闇に消えていった。

さすが！若かりし頃は伊賀のカバ丸と共に大活躍した婆っちゃんだ。
当時の婆っちゃんの魔性は>>361が立派に受け継いだから安心して奥地でゆるりと過ごしておくれ。
一瞬でも自らこの舞台の幕を閉じようとした事を美穂は恥じた。

いつしか雪は止み、そっと手を取りあう美穂とショーンズの頭上には満点の星が降り注いでいた。
ファミリーピュアのアロエin１ダースには美穂のお気に入りパックスナチュロンキッチンスポンジ(ピンク)もオマケにつけられていた。
にくいね、婆っちゃん！

ふぅ〜〜。一戦終えてベッドから起き出した>>361はボロ布のようになった
ベッドの旦那を冷たい目で見ながらタバコを吸った。

「だから言ったでしょ。新潟のくの一は夜もすっごいって。
大体伊賀者風情が太刀打ちしようだなんて、百年早いわ。
つーか、あんたもホント早過ぎるんだよっ！」

「得意技は早業でござる、にんにん」

一方、新潟の美穂とショーンズは…

越境してきたなまはげに襲われていた。

「わるいごいねが〜」

構わん　続けろ

どさくさに紛れて女湯にもやってきたあの有名なエロなまはげに
まさかここで出会うとは！！

オラなまはげだど。ずるむけと違ゃうんだど。
姉ちゃん、ずるむけ知ってっか？
そんな毛唐のフニャフニャばっか相手にせんと
カッ千カチのずるむけ味わってみんせい。
遅まきながら「おばんでごわす」
エロなまはげはジリジリと美穂を追い詰めて行った。

「ミフォ！ファミリーピュアのアロエinヲユカニマクノデス！」

「ゴキブリかっっ」

ツッコミを入れながらもファミリーピュアのアロエinを床に撒く。

「何すんじや〜」エロなまはげはスッテンコロリン
なまはげの仮面が取れた。
その下の素顔は何と…超イケメン！

山口達也だった。

「微妙……」
つい本音を漏らす美穂。

更に山口達也のお面をはずすと現れたのは

TOKIOのリーダー!!!!!

なまはげの衣裳の下から現れた白い割烹着姿が目にまぶしい。
城嶋茂子、節約家族の母だ。

と思ったら、出てきたのは和泉節子！

に、よく似た廃業した船場吉兆ささやき女将！

どんどん皮を脱いでいったなまはげは、最後には、体長30センチのコロボックルになっていた。

このマトリョーシカ人形は、百均で買って良かったものスレで大絶賛された。

熟年既婚女性、殺到！
売れ切れ、続出！

美穂は思う。自分は百均でこんなものを買うようなクラスの人間ではない、と。
でもコロボックルには遠い昔の記憶を呼び戻すような、
何か神秘的なものが心の奥から呼び戻ってくるのを感じ、ふとそれを手に取ってみる。

　あれはいつのことだったのだろう？　
　私は以前、コロボックルに出会ったことがある。

今まで忘れていたものが閉じた瞳の奥に次々と浮かんできて、
美穂は思わず眩暈を感じ、その場に立ちすくんでしまった。

美穂が100均の売り場で突っ立っていると、舌打ちが聞こえてきた。
「ちょっとー、買わないんだったらｱﾃｸｼが頂くわよ」
最後の一個だったマトリョーシカ人形は、
プリティなマダムがさっさとレジに持って行ってしまった。

今は昔、埼玉のageageというところに助さん格さんが会社を経営してました。
助さん格さんには穴がたくさんある場所に可愛い奥様を住まわせていました。

ところがこの奥様は大変なセコケチの上、自分は神だと信じている奥様だったのです。
サークル会費は八年間払わず、他人の家には手ぶらで来てタダ飯を食らい、お菓子を
幼い高校生の自分の子供の分を持って帰り、自分の自慢話だけ喋りまくる。
ゴミ出しはいい加減だし、５０過ぎての「アタシって〜オンナノコだし〜」と
高校生の娘と一緒にギャル風味になった。でも、セレブだから上品なの！とかいって
上から目線の神の御言葉は、アンタ、バカー？とでもいい返したい。

マトリョーショカ人形をマダムに買われてしまった美穂は、あまりに
呆然としすぎて訳がわからなくなり、埼玉のageageが舞台の昔話を
一気に語った。
我に返ると、１００均のレジのバイトの女の子が訝しげに美穂を見ていた。
恥ずかしさがこみあげてきた美穂は、店を飛び出した。
「ミフォ！マッテクダサイ！」
ショーンズもついてきた。
「まだいたの」
すっかり忘れてたけど、ここは新潟の１００均だったのね！
こうなったら北へ北へ行ってみよう。そう決心する美穂であった。

津軽海峡、冬景色〜〜〜〜

そして
はーーーーるばる来たぜはーこだでーーーーー

とりあえず函館の中村商店で美穂の好物イカの粕漬けと鮭の飯寿司を購入。
ショーンズのお口に合うだろうか？

「…ウマイデス」
気に入った様子のショーンズ。
「ソレニシテモ、キタノチハサムイ。サムスギル。ミフォ、アナタトワタシ
ダケデハ、コノタビハサミシイデス。タビノトモヲフヤシマセンカ」
「そうね。なんだか物語も停滞してきてるしね。思い切って、斬新な
旅の友を見つけましょう」

その時ショーンズは、美穂の分のイカの粕漬けまで食べてしまい
ちょっと気持ちが悪くなっていた。

同じ設定に固執してる人が粘着しているのでつまらない、
美穂は心の中でつぶやいた。

スコットランド編くらいから身動き取れなくなっている美穂だが、
「誰か何とかしてよ」と、切実な思いで現状が動き出すことを待っていた。

固執も何も閑散と
美穂は走り出した。閑散とはしてるけど、北海道はでっかいどうだ！好きに生きるわ！
まず手始めに

漁港に迷い込んだアザラシを助けようと頑張るニトリのシロクマ家族（次男）を手伝うことにした。

シロクマ次男は泳げないのだ。危うし！

溺れそうなシロクマ（次男）は、助けようとしたアザラシ（まめごま）に
しがみ付きプ〜カプカ。「クピ〜〜！」

海へ飛び込むべきか迷う美穂を尻目に、迷うことなく海へ飛び込んだのは

美人に弱いりくそうむ〇の村長さんでした。

とりあえずりくそうむ〇の村長さんのフォロワーになることを決めたニトリのシロクマ次男だった。

「クピー！」 何度もお礼のお辞儀をしながら沖へ向かって泳ぎだした
アザラシ（まめごま）に手を振りながら美穂の記憶の奥底に何かが蘇りかけた。
何だろう、大切な何かを忘れていたような・・。
記憶の奥深くで何者かが美穂に語りかけた。

「にゃんご！明日は２９の日にゃ！にゃんご！」

肉屋は休みだにゃんご釣りに行くにゃんご！

美穂とショーンズはシロクマ次男とたま駅長を伴い、釣りを楽しんだ。
その脇では木彫りのヒグマソックリのクマがバシッと水面の鮭を叩いては
鮭のお腹を引き裂き、いくらの所だけを選り好みして食べていた。
岸辺のそこらじゅうにお腹を引き裂かれた鮭が落ちている。もったいないにゃんご！？

…そこまで読んだとき、太郎は思わず頭を抱えた。
５年ぶりの再受験。またセンター国語で俺は失敗するのか…
かつての嫌な記憶が太郎の脳裏に浮かぶ。

いやいや、落ち着け、落ち着けば大丈夫だ…
そう自分に言い聞かせながら、太郎は選択肢を見た

問２　次の中から本文の内容と一致するものを一つ選べ
�@「にゃんご」という言葉は、美穂の肉屋へのスコットランド的な思いを表現したものである
�Aシロクマ次男は主にセーヌ川のほとりで魚を釣ろうとしている
�B美穂に向かって「アジアン」と叫んだ子供はシャンプー売りだった可能性もある
�Cマーマイトはオーストラリアのベジマイトと同格ですか？ああそうですか。
�DPour mes parents, mes soeurs et mes amis,　Vous etes con！

…分からない。�Cは勝手に自問自答しているし、�Dは何だ？
太郎は錯乱し、「どげんかせんといかん！」と絶叫すると、
前に座っている受験生に頭突きを食らわせた。

よく見たらジャガー横田だった。

万事休す---

恐ろしい形相のジャガー横田とどつかれそうになった太郎の間に
割って入ったのはモンスターリッパーだった。

突然響き渡る木下氏の声。
木下氏が連れてきたアザラシ(三男の嫁)は出し巻き卵を作るのが上手かったが、
３年前からアル中になってしまい、手が震えて上手くできないのだった。

だから必然的にマークシートを塗る手も震えていた。
モンスターリッパーはそれを見て大粒の涙を流し、千羽鶴を折った。

おじいさんは山に芝刈りに
おばあさんは川に洗濯に行きました
すると

大きな江頭が、丘を転げ落ちてきました。
あっ！おじいさんが危ない！！

と、太郎は解答用紙に書き込むと
一年前のあの時と同じように試験会場から走り出したのだった。

だが、一年前と違っていた事は憤怒の形相のジャガー横田が
猛スピードで追いかけてくる事だった。

「何かある・・・！」
あっというまに遠ざかっていく太郎とその数百倍は雄雄しい
ジャガーの後姿を物陰から覗き目を光らせたのは
執事から旦那に昇格しても執事服の藤堂でしたなう。

誰もいない丑三つ時うふふ

ひどい（陰湿）、イジメの話。
俺は、工業高の時、汽車内で勉強してたら目をつけられ、１００人
からイジメに遭い、自殺させられそうになったよ（進学高、工業高の奴から。
場所は、鹿児島県の加治木町、霧島市周辺）。このあたりの住人は、９９％が無学、高卒
三流私立大卒の地。
そのイジメが、ものすごかった。駅や町内で罵声を浴びせられたり、
家の前が道路で、罵声を浴びせる池沼もでてきた。地元の新聞社の読者の欄に投書し、奴らの声を封じたよ。
人に対して故意に、大きい音を浴びせるのは、刑法の障害罪等で犯罪行為だ。
もし、女に生まれてたら強姦レイプだったと思う。
命からがら、工業高から国立高専に編入し、国立大学に編入したよ。
俺をイジメやつは、高卒で就職か、福岡あたりの私立大に進学したようだ。
もともと高卒や、私立大に行くゴロツキだからしかたないが。
刑務所に入ってる奴の９９％は、高卒、私立大卒（犯罪者集団、諸悪の根源）。