69 :
可愛い奥様:
私は果樹園農家の嫁…
彼は袋掛けの短期の住み込みバイトにふらりとやって来た。
初夏の果樹園で一緒に汗を流して仕事するうちに
親しくなった…サラリーマンの夫は本なんて読まないけど
彼とは暗ようした詩を教えあったり私気が合うみたい。
ある日…突然の雷雨を避けて逃げ込んだ山の小屋で
思いがけず二人きりになった。
いつも一緒に作業する姑は朝から出掛けてる。
何故かドキドキする胸。(ダメよ…私)
彼もなんだかそわそわしてる…
「…………」雨の音だけが聞こえる。
ずぶ濡れの彼が眼鏡を拭く為に外した瞬間気…
「………!」気付いてしまった。彼は逃亡犯だった。
私が気がついたことに彼も気がついた!
「…………」無言で彼が近付いてきた!
殺される…!
「………!?」
彼は私の身を引き寄せた。
「…助けてくれ…頼む。」耳元で彼が囁いた。
雨に濡れた彼の体は冷たかった。
私はたった一回過ちを犯した。
後悔はしていない。
彼は優しく力強く抱いてくれたから。
次の日かれは果樹園から消えていた。
「ありがとう」と書いたメモを私の好きな詩集に残して
他に独身キャリアウーマンが匿うバージョンも妄想済み