皇室御一行様★part1618

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198可愛い奥様
(続き)
「こちらこそ、よろしくお願いします。どんな洋服ができるか楽しみですね。」
 自己紹介や雑談などで、30分ほどがあっという間に過ぎた。夢のような時間だった。
帰り際に、女官さんからお土産として白い箱に入ったたばこをいただいた。
たばこには菊の花のマークが入っていた。私はそれを自宅に持ち帰り、まっさきに仏壇に
供えて天国にいる父と母に報告した。
 浩宮さまに仕立てたお洋服はダブルのスーツだった。そのハンサムな浩宮さまの姿の
凛々しかったこと!私はまず採寸し、仮縫いを1,2回してから洋服を仕上げた。
スーツの出来栄えに美智子さまも浩宮さまも大変満足されたようだった。
 まだ赤ちゃんだった弟の礼宮さまのお洋服を仕立てたこともある。まさか仮縫いには
ピンを使うわけにもいかず、セロハンテープで代用した。でも礼宮さまが元気に
動き回るのでセロハンテープがどうしても外れてしまう。何度もやり直したのを今でも懐かしく
思い出す。
「芦田さん、今度、わたくしが着るお洋服の仕立てもお願いしてよろしいかしら」
やがて、美智子さまから、こんなご依頼をいただいたときは、まるで天にも舞い上がりそうなくらいの
喜びを覚えた。人生で最高の瞬間だった。大学も満足に出ていない私が皇太子妃の衣装を
作るなんて・・・・・。父や母が生きていたらどんなに喜んだことだろう、今までの苦労が
報われた気がした。
「ありがたき幸せです。謹んでお受けいたします」。私は目頭がジーンと熱くなるような感慨をかみしめた。(了)

22日付にも関連の記述があります。