ttp://www.spshimbun.com.br/content.cfm?DO_N_ID=23150 ttp://www.spshimbun.com.br/imagens/ACF26D.jpg 皇太子(浩宮)さまとの思い出のエピソード@
皇太子殿下の前回のブラジルご訪問は一九八二年十月。八日にイビラプエーラ公園の日本館で同世代の二世三十一人と昼食懇談会の場を持たれた。
ピアニスト山川純子さん(七〇)の思い出は、震えながら皇太子殿下にガラナを注いだこと。この時の写真と記事が翌日の本紙に掲載された。
本人及び夫のサンパウロ・フィルハーモニー室内オーケストラ指揮者・山川健一氏の分析によると、
純子さんは無口で引っ込み思案の性格で、自ら皇太子殿下に接近してガラナを注ぐような積極さはない。
会場でも十メートルほど離れた場所から姿を追っていたが、司会者の「各自テーブルに着いてください」の案内と同時に押され、気がつけば目の前に殿下が。
行動力ある娘さんなら好機とばかり話しかけるが、動転してどうしてよいかわからずオロオロ。
それを助けたのが近くにいた大口信夫大使の「殿下にビールを注いであげたら」の一言。
瓶をもって注ごうとすると殿下は「昼間からビールはちょっと、ガラナを頂きます」と言われガラナを注いだが、
緊張で手が震え、コップの淵にガチガチと瓶が触れないよう左手で右手を必至に押さえながら注ぎ、「手が震えて」と謝ると殿下は笑顔で頷かれた。
この笑顔でガチガチが緩み、その後の立食形式の昼食中は「内気な純子」から脱皮、
食事を摂りながら、ビオラをよく奏でられる殿下とピアニストの純子さんとの会話は弾んだ。
この時、好きな音楽家としてモーツアルトの名を挙げられた、と懐かしむ。
>>172つづき
殿下にガラナを注ぐ純子さんの姿を本紙のカメラマンが撮り、その写真は現在も純子さんの自宅のグランドピアノの上に飾られ家宝になっている。
本来なら、この会場で夫の健一氏が指揮するオーケストラが演奏することになっていたが事情で中止となり、そのことも殿下に説明している。
殿下と隣同士での昼食、普通なら緊張で味などわからないと思うが、純子さんは「全部美味しかったです」と今でも味はしっかり覚えており、
内気は仮面で本当は強心臓の持ち主かも知れない。皇太子殿下との会話と昼食は一生の思い出。
二十六年ぶりの殿下ご来伯だが、今回は直接お目にかかる機会もなく、「東洋人街を車で通られるお姿を遠くから眺め、再会を喜びたい」としている。
純子さんのその後の人生で、緊張してガチガチでガラナを注いだような経験は皆無。
毎日晩酌を欠かした事がない夫にもこれまでお酌をしたことがなく、
健一氏は「高貴な身分ではないが、たまには自分にも緊張のガチガチ姿で酌をしてもらいたい」と愛妻をからかう。