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可愛い奥様:
【参考資料】
■『現代』93年3月号 小 和 田 家 の 娘 岩瀬 達哉
雅子さんにとっては曽祖父にあたる金吉氏は二十九歳の時、新潟県南西部
の上越市の素封家、熊倉喜八郎の次女竹野を妻に迎えている。しかし十八歳
で金吉に嫁いだ竹野は、一人息子の毅夫氏を生んだあと、しばらくして実家
に戻ってくる。熊倉家の本家を守っている熊倉ハツイさん(八十八歳)が語る。
「詳しい事情は私も知りませんが、金吉さんの酒癖が悪かったうえ、何か向
こうで諍いがあり、喜八郎さんが竹野さんを迎えにいったようです。喜八郎
さん の鯛船で村上まで行き、まだ二歳の毅夫さんを漁具の中に隠して、竹野
さんと 一緒に連れかえってきたといいますから、金吉さんがかわいい盛り
だった毅夫 さんを手放そうとしなかったのかもしれませんね。
●産婆と針仕事で家計を支え
竹野と別れた金吉は、不幸にもその後、急逝する。そしてその頃、竹野は
金 吉の二人目の子供をみごもっていたことに気づくのである。その後、娘の
ミヨ シが生まれている。
実家からの援助も十分には望めなかったのであろう。竹野は、自活するため
毅夫氏を父である喜八郎のもとに預け、自らは産婆の資格をとり、針仕事な
ど もしながら、乳飲み子のミヨシを育てたようだ。