43 :
可愛い奥様:
「天国からのラブレター」112〜115ページより
弥生の手紙 37 平成8年4月21日
Dear 洋
4月21日 (日曜日)
今日はとてもいい天気だけど、ずっと家にこもりっきりなので、
なんか寂しい休日です。
きのうは、なかと買い物に行ったんだけど、買ったのはお菓子と
カメラぐらいで、結局、自分の服は買わなかった。だから洋と広
島市に行った時か、みんなで『キャナルシティ』に行った時にで
も気に入った服があったら買おうかなと思う。
きのう、なかとお昼を食べている時に、「ゴールデンウィークは
どこかに行くの?」って聞かれたから、「うん広島に」って言う
と黙ってたし、やっぱり高原くんの話しはしても、洋の話はなか
った。その代わり高原くんの話はいっぱいだった。私の人のそう
いう話って聞くの好きだから、自分からも高原くんの事を聞いた
りする訳だけど、そういう話を聞いた日の夜って、すごく寂しく
なっちゃう。なかと高原君が、すごく羨ましく思えて……。
「ゴールデンウィーク、ずっと高原くんと遊びそうでイヤだから、
みんなで遊ぼ」なんて言っているのを聞いて、私なんて、ゴール
デンウィークくらいしか会えないのに――、とか思った。
44 :
可愛い奥様:2007/06/01(金) 19:40:01 ID:RPQNIxL20
「天国からのラブレター」68〜69ページより
私と弥生は、ようやく肉体的にも結ばれたのですが、ホテルに入る
前は恥ずかしくて……。たしか、弥生が「他の友達は、みんなホテ
ルに行ったことがあるって言いよる。だから私も行ってみたい」と、
私の耳元で囁いてくれて、それで覚悟を決めた覚えがあります。そ
のころの私はすでに、弥生にというよりも、愛する者に対する責任
感を強く自覚するようになっていました。おかげで勉強にもいっそ
う拍車がかかり、成績も上がってきました。しかし、肉体的に結ば
れたこの日を境に、私と弥生の立場は徐々に逆転していくのですが、
当時の私は、まさか弥生の尻に敷かれる日が来るとは夢にも思って
いませんでした。
45 :
可愛い奥様:2007/06/01(金) 19:41:31 ID:RPQNIxL20
「天国からのラブレター」225〜226ページより
私は大学を卒業するために、まだ広島にいなくてはなりません。そ
して就職した後は、すぐに新人研修。他県にある新日鐵の各地の工
場に派遣されることになっていました。人生の大きなターニングポ
イントに差しかかっていた私には、結婚することが認められたから
といって、いわゆる新婚というイメージとはほど遠いものでした。
″出来ちゃった婚≠ナ″学生結婚≠ナ、″別居≠ネのです。しかし、
門司の実家で、ひとりで出産の日まで頑張り続けなければならない
弥生の気持ちを思うと、いても立ってもいられない焦燥感に駆られ
たものでした。しっかり者の弥生でしたが、さすがに何もかもひと
りで引受け、子供の出産に備えなければならなかったのは本当に心
細かっただろうと思います。本来支えるべき夫が、新人研修であっ
ちこっちの工場でしごかれているのです。申し訳無い気持ちでいっ
ぱいでした。
だから私は、当時のことを思い出しては今でも、「よく頑張ったね、
弥生。そして夕夏も……」と褒めてやりたい気持ちで、いっぱいに
なるのです。感謝の念でいっぱいなるのです。