週刊ポスト 2006年9月29日号 昼寝するおばけ 曽野 綾子
356「家族の重責」
http://skygarden.shogakukan.co.jp/skygarden/owa/solrenew_magcode?sha=1&neoc=2005509106&keitai=0 両殿下はそのようなご希望を、「(生まれて来るお子さまが)どんな状況であ
っても、それを受け入れたい。自然な形で受け止めたいから知りたくない」と言
われたと病院の院長は語っている。性別のこととも取れるし、最近は出生前の検
査で、障害の有無やその程度などもわかるようになっているというから、もしか
すると、可能性としてはそこまでを含めて言われたのかもしれない。これは生命
というものに対する、親と社会の姿勢に対するはっきりしたお答えになっている。
要らない子供、障害を持つ胎児は、中絶できるのが女性の自由と権利だ、などと
いうご都合主義に対して、無言で答えられているように、私は勝手に感じている。
皇室の方々は、決してあからさまに言葉で賛成したり反対したりはなさらない。
しかし徳の在り方を常に静かに示すことが任務でいらっしゃるであろう。
ご夫妻は手術前、臍帯血の提供を申し出ておられた、ということも快挙であっ
た。臍帯や胎盤には造血幹細胞がたくさん含まれていて、それを凍結保存してお
いて白血病患者などに移植できる。そのためのバンクができているらしい。昔の
日本なら、恐れ多くも、皇室の血を頂く人は皇族以外にない、などという頑迷な
発想がそれをさまたげたと思う。しかし今後は出産の時に臍帯血を提供して、人
生の輝かしい日に「人に与えることのできる光栄」を知る夫婦と赤ちゃんが増え
ることになるだろう。