皇太子と雅子は愛しあっているのか?

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385『殿下の料理番』渡辺誠(2002/1/1小学館文庫)
このころには私も齢を重ね、自分でメニューを考え、あれこれ采配する
立場になっていました。
お側で接してみると、殿下は実に心温かく、男の私が惚れ込んでしまうよ
うな魅力に溢れた方でした。
「この方に喜んでいただける料理を作ろう!」一度は萎えかけた私の心に、
いつしかこんな気持ちがふつふつと湧き起こり、以後、六年にわたって、
料理人としてたいへんやり甲斐のある充実した日々を過ごさせていただく
ことができました。

私は大膳の職員(大膳がいかなるものかは、本文を読んでいただければお
わかりいただけると思います)ですから、お食事以外のふだんのお暮らし
向きについては、詳しくわかりません。
しかし、お食事という場を通じて私が接した天皇家ご一家は、常に思いや
りに溢れ、家族の絆をとても大事になさっていらっしゃいました。
宮殿や御所の厨房での出来事、御用邸での思い出、ひとりの料理人として
私が感じたことを語るなかで、そんなご一家の温かな素顔を感じ取ってい
ただくことができるのではないかと思います。
両殿下がお父さま、お母さまとなられる日。

この待ちに待っていた日は、お妃報道が加熱するころからお仕えしていた
私にとっては、ひときわ感慨深いものがあります。
この喜びをどう表現しようかと考えたとき、私がどんなお祝いの言葉を述
べるよりも、どんな献上品を差し上げるよりも、おふたりのお口に合うお
料理を召し上がっていただくことがいちばん私らしく、もっとも喜んでい
ただけるように思えました。

そこで、コウノトリが無事に舞い降りた日をお祝いして、私が両殿下のた
めにお作りしたいメニューをここに披露して、お祝いに代えさせていただ
くことにします。
どんなものを召し上がっていただこうかと、愉しく思いをめぐらしていると、
どこからか、「渡辺さん、食材に無理はしないでください。できる範囲の
もので結構です」という耳慣れた殿下のお声が聞こえてくるような気がします。