宮様は、初等科時代は教室で先生から「宮様」と呼ばれていました。
ところが中等科になって、「殿下」と呼ばれた。それがお嫌だったようで
すね。「違う。宮様です」とおっしゃったそうです。「宮様」の方が高い
言い方だという意味ではなく、「殿下」という言葉には人間の臭いがしな
いことがお嫌だったのだと思います。高校では、プライベートな場面では
違いますが、生徒の前で先生は「浩宮」と呼んでいました。それを宮様は
むしろ喜んでらしたんですね。
池に投げ込まれたことも
大学で音楽部に入られました。音楽部のしきたりで、一年生は池に投げ
込まれることになっていた。宮様の番になった時、やっぱりちょっと遠慮
してお付きの警備の人を見たら、「かまいません」という顔をしてるんで、
ついに投げ込んだ。そうしたら宮様は、「ありがとうございました」とお
っしゃった。それは、みんなと同じように扱ってくれたことに対しての
感謝の言葉だったのでしょう。
そんな中で「自分は皇族であり、皇族というものはどうあらねばならな
いのか」ということを考え、納得し、ご自分で認識されてきたのだと思い
ます。
宮様のご性格形成については、もうひとつイギリス留学の体験がたいへ
ん大きかったのではないでしょうか。それまではどちらかというと、おと
なしくて、すこし神経質なところがおありになったと思います。国内では、
どうしてもまわりが、「ああしなければ」「こうしなければ」とうるさい
ですからね。ところがイギリスに行かれてからは、ずっと積極的になられ
たと思います。一方で、自由な生活を心から楽しんでらっしゃいましたね。
これは私の憶測にすぎませんが、宮様はイギリスに行かれて、日本とい
う国のことを改めてお考えになったのではないかと思います。
外国に留学した日本人は、二つのタイプに分かれると言われますね。極
端なナショナリストになるか、あるいは西洋風にかぶれてしまうか。宮様
の場合はそのどちらでもなく、「日英両国とも、それぞれの長所、短所が
ありが、あくまでも自分にとっては、基本は日本なんだ」ということを改
めて認識されたのではないかという印象を持ちました。