イラク人質事件70

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29道新−7/26掲載分
●6・解放 −−「あれがサダム・タワー」・見なれた建物が見えた−−

 高藤菜穂子さん、今井紀明さん、郡山総一郎さんの3人は、拘束9日目の4月15日、
バグダッドのモスクで解放された。その直前まで、荷物の返還などをめぐり
犯人グループと対話を重ねていた。


 8日目、テレビを見せられた部屋で夕食をとっていると、男がどこからか
私たち3人のスーツケースやかばんを運んできました。でも、私のパソコンとデジカメがありません。
3人合わせて5千ドルの現金と、郡山君の3台のカメラも。
 「あんたたちムジャヒディン(聖戦士)とか言っているけど、アリババ(盗賊)だ」。
私たちは怒りをぶつけました。
 男はけんまくに押されて部屋を出て、どこかに荷物を探しに行ったようでした。
しかし、郡山君のカメラは結局、1台しか戻ってきません。
 その夜、犯人グループの男2人が、部屋のテレビでジャッキー・チェンの映画を見て大声で笑っています。
私はそれが腹立たしくて、9日目の朝、「あんたたちは最低だ。さっさと荷物を探してきて」
と怒鳴りつけてしまいました。
 英語を話す男が「無い物のリストを作れ。現金はかき集めて返す」と言ってきました。
彼らにとって5千ドルは大金です。でも、私は言い返しました。
「お金はイラクのために持ってきたんだ。かき集めているひまがあったら薬でも買いなさい」
 「武器を買ったら承知しない」。そう念押しする私を、
彼らは「サラーム(平和)、サラーム」と必死になだめました。