782 :
13 その1:
日本出版協会
NHKすくすくネットワーク 3月号 P92-94
田口ランディ の すくすく日記
第5回 最良の教育は、好きなようにさせること。
子どもを育てていて、一番悩むのは「教える」「叱る」
「しつける」この三つです。
特に「教える」というのが、これが難しいのですよね。
我が家は一人っ子なので、親が子どもにいろいろ教える
わけですが、親としうのは大人です。子どもはこれから
すべてを覚えていく存在。このギャップが埋められません。
1歳、2歳のころはよかったのです。まだ赤ちゃんの
延長です。できなくてあたりまえと私も思っています。
教えることにムキになったりしません。立つことも、
歩くことも、食べることも、しゃべることも、子どもに
まかせていました。「きゃー立った!」「わー歩いた!」
「スプーンで食べられたね!」「マンマって言えたね!」
毎日が感動の連続、ビックリマークの嵐。
783 :
13 その2:03/02/16 20:38 ID:IAudZpqh
でも、3歳になって子どもがかなり言葉を使いこなすように
なると、だんだんと「教育」したくなってくるのです。
私が仕事でパソコンを使っているので、娘は2歳のころから
パソコンに触って育ってきました。3歳のときにはマウスを
使ってお絵描きソフトで遊ぶようになりました。子どもの
習得力はすごくて、最初はマウスとモニターの矢印が連動
していることが理解できなかったのですが、一度、その法則性
を把握したらどんどんお絵描きをするようになりました。
私は娘がパソコンを使えるようになるとは思っていなかった
ので、古いパソコンをおもちゃ代わりに与えてほったらかして
いました。「こわしてもいいや」と好きにさせていたのです。
そうしたら、気がついたら見よう見まねで使っているでは
ありませんか。これはすごい、と大騒ぎしました。
「もしかして天才かも」まったく親ばかです。そして、今度は
幼児向けのパソコンソフトを買ってきて、それで文字を覚え
させるという野望を持ちました。
ところが、娘は私が「教えよう」とすると、いっこうに
覚えないのです。こちらが「教えよう」とするとてんで出来の
悪い子どもになってしまいます。しまいには「わかんな〜い」
「つまんな〜い」「できな〜い」とヘソを曲げて、そのうち
パソコンに触らなくなってしまいました。
784 :
13 その3:03/02/16 20:39 ID:IAudZpqh
私は必死になって教えようとするのだけど、教え方がなって
ないらしいのです。というよりも、我が家の娘は教えられたく
ないらしいのです。自分でいじくって、いじくりまわしながら
覚えたいらしいのです。それが楽しいようです。それなのに
親がしゃしゃり出てきて「そうじゃないの、こうするのよ」
とか「違うわよ、そこはこうすればほらできるでしょ?」
などと言っていると、うっとうしくてやる気が出なくなる
らしいです。
どんなにこちらが根気強く教えようとしても、やっぱり
つまらないらしいです。そりゃあそうです。私は大人で、
すでにそのことを理解しています。その理解している大人の
親が側にいたら、子どもはいつも自分よりもできる人間に
「無能」扱いされているのと同じことになってしまう。
自分の工夫で何かがうまくいった……という体験ができないと、
うれしい気持ちが起こらないのは大人も子どももいっしょ
なんです。でも、親はつい口を出して教えたくなってしまう
んですよね。
3歳のころはそのことに気がつかなくて、どうしても口を
出したり手を出したりしてしまいました。箸の上げ下ろしから、
からだの洗い方まで。つい教えてしまうのです。黙って手本を
見せればいいのだけど、口も手も出てしまいます。
785 :
13 その4:03/02/16 20:40 ID:IAudZpqh
4歳の終わりに娘を連れてスキーに行きました。子どもを
産んで初めてのスキー。5年ぶりのスキーで、私は娘を
1時間かけて説得して半日のスキー教室に放り込み、自分は
ゲレンデを滑りまくりました。娘は最初のうち慣れないスキー
教室でメソメソしていました。遠くから見ていると、初めて
はいたスキー板に転びながら、それでもインストラクターの
お姉さんのあとについて、なにやらもそもそ練習しています。
お昼に迎えに行ったら「午後もスキー教室に行く」と
言います。これはラッキーと思って午後も3時まで教室に
入れました。
時間が来て迎えに行くと「お母さん、滑れるようになった
からいっしょに滑ろう」と言います。まあ、初日だから低い
ところをちょこっと滑っただけだろうと思ったら、リフトに
乗って上から降りたと言います。「へ〜?」とリフトに乗せて
初級コースの上まで行ったら、娘はいきなり直滑降ノン
ストップで下まで滑り降り、私は娘のスピードに追いつけ
ませんでした。
786 :
13 その5:03/02/16 20:40 ID:IAudZpqh
「お母さん、あたしのほうが速かったね」
そう言われたときは、正直ムッとしました。なにしろ怖い
もの知らずなので転がるように滑り降りるのです。
「待ちなさーい!」と叫びながら後ろから追いかけても間に
合わない。
以来、娘はいまだに「スキーはあたしのほうがお母さんより
うまいんだよね」と言います。
その娘が、自転車はいまだに補助輪なしでは乗れないのです。
自転車に乗るときは、私が後ろ座席を支えて乗り方を教えて
しまいます。それがダメみたいです。私が後ろで支えて
とやかく言うだけで、娘は「自分はできない、ダメだ」と
思って腰が引けてしまうらしいのです。
母親が何かを教えようとすると、それは子どもにとっては
「できない」ということを教えられているような気持ちに
なるのかもしれません。
787 :
13 最後:03/02/16 20:41 ID:IAudZpqh
文字は早いうちから教えようとしました。文字を覚えることは
知識を得ることといっしょだと私が確信していたからです。
文字さえ読めれば、親に頼らなくてもどんどん情報を本から
吸収することができます。だから文字はできる限り早く習得
してほしかった。
しかし、文字も私が教えているうちはさっぱりでした。
いろんな教材を買ってきて、「あいうえお」をお風呂で練習
しても、「あいうえお」の表は読めるのに、文章になった文字が
読めないよいう状態が続きました。
3歳のころに、娘は知人から携帯用のゲーム機をもらいます。
そして、ゲームにはまってしまいます。ゲームをさせることには
反対でしたが、ゲーム機というのは瞬間的に子どもを静かに
させておくのにものすごい効力をもっているのです。私は
ダメ親で、つい急ぎの仕事のときや、来客があって手がはなせない
ときはゲームに子守りをさせていました。
で、結局、娘はゲームをやりたい一心で、あっという間に
文字を読めるようになったのです。ゲームの解説文が読みたいが
ために……です。その後、ゲームに関してはいろいろなすった
もんだが起こり、心配したり、悩んだりするのですが、それは
また次回に……。
788 :
13:03/02/16 20:44 ID:IAudZpqh
今回は以上でした。
…ってまだ続くのかよ!(゚Д゚) と思ってしまった冬の日…
編集部の注意書き等はなかったでつ。