川本三郎 曰く その1
最近の試写室内のマナーの悪さはもう電車のなか並み。
平気で遅れて入ってくる。人の前を「すみません」の
ひとこともいわずに通る。夏になると短パンにゴムぞう
りで現われる。脚を前の椅子に投げ出す。
業務試写は、評論家にとって神聖な仕事の場所だとい
う意識がないのだろうか。あまりに目にあまるときは注
意するが、後味が悪いので最近はもうあきらめている。
受付にいる宣伝部の人たちは立場上「見に来て下さっ
て有難う」という。その丁寧な応対が若い女性たち(遅
れて入っているのはたいてい彼女たち)に「見に来てや
っている」という傲慢な意識を植え付けてしまうのだろ
う。本来、われわれのほうが「見せていただいて有難う」
というべきなのだ。
そんなこんなで近年、若い人の多いメジャー系の試写
室からは足が遠のいている。