神秘主義的映画のスレ

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ベルイマン中後期の作品に『叫びとささやき』という映画がありますね。
三人姉妹の確執と過去を描いたカラー映画。
これなんか彼のサービス精神の旺盛さを感じさせて、もうジュラシックパークかと見まがう出来だと思うんです。

死を目前にした末の妹を看取りに、上の姉二人が生まれ育った我が家に帰ってくる。
末っ子は彼女らとの平和な関係を望みつつも、三人三様、心は全く通じ合ってません。
こうして末っ子は他人である忠実な召使の豊かな胸に抱かれている時だけに、僅かな心の平穏を感じるわけです。
一方、姉二人は死にかけた妹の病気なんか構わず、鬱々と自分自身の過去を振り返ってる。
この過去が陰惨です。惨めです。ベルイマン的モチーフの展覧会になってます。
曰く、夫とのセックスを拒否するために陰部にグラスの破片を刺すだの、鏡に見惚れていると、
浮気相手が残酷に老いを言葉で指摘するだの、浮気を知った夫が自身の腹部を刺すだの…。過激です。
まずはこの過激さがベルイマンの売りです。『沈黙』の女性のマスターベーション場面なんて言わずもがなです。
人間の生々しい姿、人間の真実の姿くらい面白いものはないだろうと、彼は主張している訳です。
どうせなら映画として都合の良い解決をしたり、ありもしない希望を添えたりなんかせずに、
たまには徹底した泥仕合を見るのもいいじゃないか、と。
そんなわけで、この二人の姉妹は憎みあってます。一時和解しかけるものの、「あなたのその淫らがましい笑みが嫌いなのよ!」
なんて目も当てられない言葉をぶつけ合う姉妹が、心から許しあえる訳はありませんね。徹底的に傷つけあいます。
人間と人間が、互いの最も言って欲しくない言葉を、これでもかこれでもかとぶつけ合う。
ショッキングです。けど見ていてこれほど興奮し、面白いものはない。
CGで動く恐竜や爆発、カーアクションは面白い。メロドラマやハートウォームな物語だって面白い。
でも、”人間”以上に面白いものなんてないと思うんですよ。
さて、末っ子は望み叶わず、とうとう平穏を得ぬまま死んでしまいます。ところがこの映画はここで終わりませんね。
ここからが怖いです。ぞっとする展開がまっています。見てない人のために、もう言いませんが。
つづく。