ロベール・ブレッソンって

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49名無シネマさん
私、>>14でブレッソンの映画で笑う行為に対して非難がましいことを
書いちゃったけれど、例えば「スリ」で、スリの手口があまりにも鮮やか
なのでつい笑ってしまうということはあるかもね。

そして…理解が及ばないがゆえに笑うしかない人たちも確かにいます。
すごくカッコ悪いけどね。 「ラルジャン」は映画館で12回見たけれど
いつも必ずラストで笑う者が一人はいました。エンドマークもクレジットも
無く唐突に終わるから、そのあっけなさを笑うんだろうけど、あっけない
どころか、あのラストの主人公には凄まじい内的変化が生じているはず。
もちろんブレッソンは心理描写なんかしない… それが凄いのだけれど…

とにかく、この映画、ルノワールの「黄金の馬車」のように、ドライヤーの
「奇跡」のように、ロッセリーニの「神の道化師フランチェスコ」のように、
小津の「父ありき」のように、人智を超越した存在が手を貸したとしか思えない
驚異の映画だと思います。

この映画の後、資金さえ集まれば、すぐに「創世記」(「創生紀」だったかも?)に
取り掛かれる状態にあったはず。 人類は遺産を一つ残し損ねました・・・

ブレッソンは女優選び…じゃなくて女性モデル選びの趣味も素晴らしい…
ドミニク・サンダだってアンヌ・ヴィアゼムスキーだってブレッソンの映画で
デビューしたことは忘れがちだけど見逃しちゃならないと思います。

個人的には「白夜」のイザベル・ヴァインガルテンに痺れます。
どこかしらエロっぽいんですよね。「スリ」のマリカ・グリーンだって、そういう
役柄じゃないのに密かにイヤらしい(褒め言葉ですよ)。
だから後に「エマニエル夫人」に出たのかも ← (我ながら意味不明)

私もアマゾンで調べたけれど「湖のランスロ」「たぶん、悪魔が」の米版は
VHSしか出ていないのがツライです。DVDなら即買いなのに・・・
ま、一度しかあり得ない初見の機会はスクリーンで、と自分に言い聞かせます。

昔、「リュミエール」にカンヌでの「ラルジャン」の記者会見の模様が
載ったのですが、これが実に痛快!

「どうしてあなたは観客を欲求不満にするような映画を作られるのですか」という
アホな質問に対してブレッソンは
「どんな観客のことを言っておられるのですか」(場内爆笑)

「あなたは何らかのイデオロギーを信奉してらっしゃいますか」
「イデオロギーというものが何なのか、私には全くわかりません」(場内拍手)

「・・・演劇学校で教えられていることは果たして・・・」
(通訳たまりかねて)「演劇学校なんて、ここでは関係ないでしょう!
それでもプロですか、まったく…。 プレスシートでも見ていなさい」(場内笑い)

「(ラルジャンは)現実の暴力の映画なのですか」
「それは街にあふれています」(場内笑い)

ブレッソンってゴダールとの対談でもゴダールを手玉に取っていました。
「シネマトグラフ覚書」は素晴らしい本だけど、映画を撮れない監督が
よくそうするように、この人にももっと本を出して欲しかった。