◆◆蓮実重彦に酔いしれたあの頃◆◆

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146過去ログより
若者は感覚的にイメージを見るなんて大嘘なのです。画面に映っていながら見落としてるものがずいぶんありますよねえ。『炎のごとく』で言えば、あの中に出てくるスイカってものほとんど誰も見ていないんです。暗さの中に緑が浮き上がってくるといった場合、そこに照明があたってなくてもその緑に注目しなきゃいけない。それが仮に画面の隅であっても九十度も方向の違うキャメラで同じスイカが二度捉えられたら、それは見えなきゃいけないんだけれども、やっぱりこれも見てる人が少ない。概念とか主題とか物語などで映画を見てる人が多いんで、画面を画面としてもっと感覚的に見なければいけないんじゃないか、ということだけを話しているわけで、それ以上の理論的なむずかしいことはしていない。ただし、画面を画面として見なきゃいけないんじゃないかという話をしていると、では、何故、そこに映し出されているものを見落としてしまうかという問題になって、どうしても理論的で難解な話に聞こえちゃうってところが映画の不幸でね。むしろ動物的に目だけで見ればいいのに、いわば知的な操作によって見えるものを自分から排除していくところがあるわけでしょう。ところがそれをいけませんと言うことが、非常に理論的な、知的な高度な話に聞こえちゃうってところが、視覚芸術の映画の最大の不幸だなあって感じがしますね。