野村芳太郎監督 八つ墓村

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「八つ墓村」って横溝の他の作品にくらべて、むつかしいところがあるとおもう。
「犬神家の一族」にしても「悪魔の手毬唄」にしてもみな血と怨念の横溝ワールドの渦中に立つ犯人と、局外者である金田一との対決が物語の軸になっているんだけど、「八つ墓村」では横溝正史はそれまでのパターンを逆手にとっている。
つまり過去のおぞましい出来事と連続殺人とはほんとは全く関係がない。犯人自身が局外者で横溝ワールドを利用する形で犯罪が計画されている。
だから原作では横溝ワールドにまきこまれる辰弥を主人公にして、局外者どうしである金田一と犯人の対決はサブストーリーのようにあっさりと語られたんだと思う。
映画はどちらもむりに他の作品のようなパターンにはめようとしてうまくいってない。
市川版は金田一を主人公にし、犯人との対決を軸にしようとして辰弥の存在が吹っ飛んでしまった。
野村版では局外者である犯人を横溝ワールドに取り込もうとしてちょっと見当はずれなオカルトになってた。(犯人が落ち武者の子孫だったとかいう)
やはり原作の他の作品との本質的な違いをきっちり認識したうえで、映画にしてほしかったです。