若尾文子スレッドの誕生

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海外では増村の再評価が始まっているようだが、同時代的には西ドイツが最も早く増村を評価した。
ただし、深夜テレビでいつも放映されているエロい映画として。かなりマニアックなファンに支持さ
れていた模様。
続いてフランス。カイエ・デュ・シネマでは、まずシルヴァ・ピエルが「痴人の愛」と「赤い天使」を
引き合いにして、増村=若尾コンビについてスタンバーグ=ディートリッヒのコンビと比較しながら、
増村作品に見られる“去勢”について論じている。「赤い天使」の従軍看護婦の格好やモルヒネは、
スタンバーグの「間諜X57」や「モロッコ」のシルクハット、レインコートに相当すると解釈している。
そして切断こそ増村の主題であり、それは現代日本が抱える問題からの切断であるという。
「痴人の愛」はフランスでは「日本の牝猫」の題名で公開。マックス・テシエはバーナード・ショーの戯曲
「ピグマリオン」との類似性を指摘している。はい、「ピグマリオン」は「マイ・フェア・レディ」の原型
ですね。そうかなあ。

さて、カイエによると、「青空娘」は「ヨーコ嬢と青空」の題名で西ドイツで1968年に放送されたのが最初で、
「卍」は「マンジ・恋人たち」の題名で1964年に劇場公開。「黒の超特急」はフランクフルトのアジア映画祭で
上映され、「フィルム・クリティック」65年5月号に批評が掲載されている。「氷壁」は65年のベルリン映画祭
出品作。ドイツでは「痴人の愛」は「ナオミ・飽くことを知らぬ女」という題で公開、興行的には惨敗している。
一方、フランスで最も高く評価された増村=若尾映画は「赤い天使」だが、とくにベルナール・エイゼンシッツ
(「ニコラス・レイ」を書いた人)が当時の構造主義の言葉を用いてわけわからん言葉で絶賛しているのが目立つ。
彼も増村=若尾コンビにスタンバーグ=ディートリッヒコンビをダブらせている。
マックス・テシエは「シネマ69」69年6月号で「赤い天使」を絶賛。増村のエロスと戦争の描き方に言及しながら、
若尾文子の美しさを手放しで激賞している。

などと今日はアカデミックにまとめてみました。