【雑談OK】今日観た映画の感想【ネタバレ注意】13

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519名無シネマさん
「ロゼッタ」 純粋貧困映画。貧乏な少女が貧乏の中で戦い苦しみ傷つきもがく。
作品中主人公の少女は僅か一度しか笑わない。本当に面白くて笑うのではなく、張り詰めた困窮状況の中で
緊張の糸が切れるが如く、フッと微かに失笑するように笑うのだ。その他は始終貧乏に押し潰されたような無表情。
貧困を始めとする苦しい状況の中で人が表情を失うという事は実際にあるのでリアリティはあるのだが、
本来なら華やかな年頃の少女が僅か一度しか笑わないような作品が面白いはずがない。
カメラアングルも照明も音楽もなく、そんな贅沢は敵だとばかりに、手持ちカメラで純度100%の貧乏をグイグイ撮っていく。
そこらの手法についてはドグマ95か何かによってるのかもしれないが、そういうの以前に貧乏百箇条大原則とかいう
厳しいルールを作って自ら課して撮影してるのではないかと思えそうなとんでもない貧乏一徹ぶりである。
「貧乏は悪だ」という意見について、私は今まで「そうとも限らない」というような反論をよくしてたのだが、この作品を見て
よく分かった。やはり貧乏は悪である。
主人公の少女は貧困の中でもがき苦しみ、貧乏の檻に閉じ込められた獣のように心を閉ざし、やっとそこに差し出して貰えた
愛に対し、貧乏ゆえに吼えかかりその愛の手に噛み付いて追い払ってしまうのである。最後は再び愛の光が僅かに差し込む
予感で終わるのだが、そのラストは余りにもブツ切りで、「愛は貧乏からはみ出す行為なんだからもう撮影中止!やめ、やめ」
という声が聞こえてきそうな殺伐感である。

これがなんとカンヌ映画祭パルムドール作品。主人公の貧乏少女を演じた女優は、これでカンヌ主演女優賞。
SF映画に出た役者が宇宙人であったりはしない訳だが、ここまで貧乏映画で貧乏ぶりを徹底してやったのだから
作品中で履いてた古着屋で買って480円だったみたいなスカートを身に付け、カンヌ映画祭のパーティ会場にかけつけ
当然の如く持参したタッパーに会場テーブル上に並べられた料理を詰め込み、口なんか利いたら腹が減るとばかりに
一言も発さず貰うもの貰ったからと無言の仏頂面のまま帰って見せて欲しかった。
そんな思いすらしてしまう凄い貧乏映画だった。強烈。