【危機!】CGが映画をつまらなくしてる 3

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320名無シネマさん
ちょっと前に出ていた某潜水艦映画の予告編のCGっぽさに関して亀レス。

関係者にちょっと話を聞く機会があったんだけど、ちょっと驚いた。
この映画って殆どラッシュを見ずに撮影してたんだって?
これに限らず「踊る」とかのフジ仕切りの映画は押し並べてそうらしい。
メインスタッフだけでテレシネを見てお終いだとか。

一応「ラッシュ」という言葉の説明をしておくと、現像から上がってきた
フィルムを編集前に見ることね。編集してある場合もあるけど仮編集。
殆どの場合は、カチンコからカットの尻まで全部見る。
アメリカでの呼び名は「デイリー」。毎日見る、という習慣から来たらしい。
ヨーロッパや他の国ではどう呼ぶのかは知らない。

で、何でラッシュを見ないか。これは単純にお金の問題。
ラッシュ用のプリントを焼くにはお金がかかる。そして自前の試写室を持っていない
フジのような製作会社の場合、撮影所か現像所の試写室を有料で借りる事になる。
場所だけでなく映写技師の料金もかかるので意外にこれも高い。
テレシネした素材をHDに収録して編集した後にフィルムに変換するという
プロセスを経るような映画の場合、確かにこれは省きたい手間ではあるかも知れない。
スタッフ全員でラッシュを見ると、その間だけは撮影もストップしてしまうしね。
あと、どうもフジ側のプロデューサー連中には「ラッシュ=TV収録でのプレイバック」
という認識しかないらしい。まぁ、確かに役割は同じなんだけどさ。
でも「テレシネした素材をスタジオのモニターで確認すれば良いだろ」という考えは
どう考えても問題があるようにしか思えない。
321名無シネマさん:05/02/06 20:18:06 ID:k56AyJbt
解像度と映写環境の違いというのは、致命的な問題だ。
テレシネ作業というのは↓のような部屋で行われる。
ttp://www.imagica.com/cm/telecine.html
実際にはこのページの写真より照明をかなり落とした環境で行われるので
色のチェックに関してはあまり問題は無いのだが、波形モニターや操作パネルの
イルミネーションが点灯しているので、試写室での映写環境とはかなり違う。
おまけに、メインのモニターは大きくてせいぜい32インチ程度なので
>>221に書かれたような問題が起きやすい。

そしてテレシネルームは例外なく狭い。なので「スタッフ全員で」というのは無理。
となると、メインスタッフはこの部屋で仕上がりを見て、助手さん達は
スタジオのモニターで仕上がりを見る事になるんだろうけど、これでは何にもならない。
特に撮影部と照明部の助手さん達にとっては何の勉強にもならないだろう。
業務用ではなく民生のモニターを明るいスタジオで囲んで明るさや色調を
補正した後の素材を見なくてはならないんだから。
「助手連中の勉強なんて知ったこっちゃねーよ」という考えは全く間違っている。
明日のメインスタッフは彼らの中から出るんだから。

それに撮影・照明に限らず、スタッフの助手というのは漫然と技師に言われた事を
言われるがままにこなしている訳じゃない。自分なりの拘りを持って
能動的に撮影に参加しているわけだ。当然、彼らは自発的に技師の目の届かないような
細かい部分で自分なりに「実験」したりしている。それを大きな画面で
チェックできないというのはどうなんだろう?もし彼らの「実験」が失敗していても
民生のモニターでは「これで良かったんだな」という事になりかねない。
という事は、彼らは同じ過ちを同じ作品の中で繰り返す可能性があるわけだ。
これは「映画界の明日」なんて大げさな問題じゃない。
「作品の質」に関わりかねない、切実な問題だ。
322名無シネマさん:05/02/06 20:18:43 ID:k56AyJbt
もちろん「それは完成した映画でチェックすれば良いだろ」という意見にも一理ある。
だが一般の映画ならともかく、合成を多用した映画でこれは無理に近い。
「別撮りした素材を加工・合成→CGを加えた後に画面を激しく揺らして完成」
というようなプロセスを経たカットの場合、実際に撮影に参加していても
自分の仕事がどうなってるのかなんて、チェックするのは不可能に近い(w
冷静に自分の仕事の仕上がりを(映画館に近い環境で)チェックする、
というプロセスは個人的にはかなり大事なものだと思うんだけどな。

さて、長々と「ラッシュの意義」に書いた後にやっとに某潜水艦映画に戻る。

唐突ですが、皆さんは年賀状などをプリントアウトした時に
「あれ?こんな色じゃなかったんだけどなぁ?」
という体験をした事がないですか?

「どこが潜水艦映画やねん」と思われるかも知れないけど、
「年賀状」を「デジタル環境から出力されたフィルム」に置き換えてみよう。
これって、どんなに色調などを数値的に合わせていても、絶対に起こりうる事なんだよね。
個人的には数値的なものに必要以上に拘る方が起こりやすいと思っている。

こんにちの合成作業や、CGの作成などは全てPCのモニター上で行われる。
本来なら1カット作業が終わった後にプリントを焼いて、試写室で確認した上で
OKを出すべきなんだけど、ラッシュもままならない環境では恐らくこれは
行われていないんだろう。何カットかをテストとしてプリントに焼いたかもしれないが
大部分はモニター上での仕上がりを見てOK判断が行われたと思われる。
となるとOKカットは編集に送られ、編集・最終補正作業を終えた後に
初めてフィルムにプリントされる事になる。
そこでやっと「あれ?何かが違うぞ?」という事になっても手遅れなわけ。
323名無シネマさん:05/02/06 20:19:30 ID:k56AyJbt
「そんなのはヒグチシンジ一人が把握してればいーじゃん」
というのは違うと思う。先に書いた理由で、CGや合成のオペレーター一人一人が
自分なりに把握してないと駄目なんじゃないか、と個人的には思うんだよね。
まだ完成品を見ていないので何とも言えないんだけど、
もしこの映画のCGが浮いて見える事があるとしたら
「ラッシュで確認しない」というのはかなり大きい原因なんじゃないかなぁ。
CGとデジタル合成部分のオールラッシュくらいはやってそうな気もするけど。

さて、何だかフジを暗に批判する事ばかり書いてしまったので
同じ人から聞いた、やはりフジ関連の映画でこのスレ的に興味深い話題を少し。

このスレでは全然話題になっていない、あの踊るのスピンオフ映画だけど。
地下鉄パニックものというのは公表されているわけだけど、地下鉄を撮影するのは
非常に難しい。安全上の理由からカメラが軌道内に入るのはなかなか許可されないのね。
となるとCGや特撮の出番となるわけだけど、この映画ではCGとミニチュア撮影の
両方の手法を用いて走行している地下鉄の大部分を再現している。
で、このミニチュア撮影班が非常に良い仕事をしてるんだそうだ。
いまネットで公開されている予告編にも登場(これはCG)している、この映画のために
デザインされた特殊車両は残念ながらデザイン的に本物に見えにくいものなので
CGでもミニチュアでも苦しいらしいが(1/1も作られたがやはり苦しいらしいw)
現行車両の走行カットなどはロケで撮ったようにしか見えないそうな。
「新幹線大爆破」の頃を考えると昔日の感がありますなぁ。
なので密かに楽しみにしている。