■■アイドルマスター いじめ・虐待専用 5■■

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908姉妹スレ209のネタ
『んっふっふ→、双海亜美だよ→』
『真美だよ→』

亜美ね、あんなふうに二人で笑えてたころのこと、よく思い出すんだ。そんで、そのたびに泣きたくなるの。

フシギだね。むかしは何だって真美と「おそろい」だったのに、いつのまにか真美がずっと先に行っちゃった。
真美は歌もダンスも上手にできちゃうのに、亜美はヘタクソ。レッスンのたびに兄ちゃんに怒られてばかり。
兄ちゃん、亜美と真美のレッスン、ビデオにとって見せないで。亜美、分かってるもん。自分がヘタクソだって。
ビデオ見るたびに、悲しくて、悔しくて、頭の中ぐじゃぐじゃになるんだもん。
亜美ね、さいきん洗面所がキライになったの。美容院もキライ。そんで、いちばんキライなのは、楽屋。そこには鏡があるから。
その中には真美がいるから。鏡の中から、亜美のことニヤニヤ見てるから。
カナヅチで鏡をバラバラにするか・・・・・・映ってる自分の顔、ひっかいてメチャクチャにしたくなるから。
909209:2010/02/01(月) 11:52:26 0
今日のレッスンも亜美だけダメダメだった。真美といっしょに帰るの、こんなにイヤなことだなんて、思わなかった。

「あー!亜美のハンカチがないー!」
「えー?でかけるとき、ちゃんと持ってたっしょー?」
「うん、きっとジムショに忘れてきちゃったんだよ、取ってくるから、真美は先に帰っててよ」

ウソ、ついちゃった。でも、これでひとりになれる。ひとりで「じしゅれん」するんだ。真美に追いついて、またふたりでいっしょにメチャイケなアイドルするんだ。
千早お姉ちゃんはまいにち「ふっきん」を200回やってるんだって。はるるんも時間があるときはちかくの公園で歌ってるってウワサ。亜美だってやるしかないっしょ。
ジムショはみんな帰ったあとだったけど、カギの隠し場所はちゃんと知ってる。中はちょっと暗かったけど、窓から外の明かりが入ってくる。

「なーやんでもちーかたない・・・まそんなーときもーあるさ あしたはちがうさ・・・」

亜美と真美の歌「ポジティブ!」。亜美はこんな元気、出ないよ。こんなに悲しいのに、こんなにさびしいのに、ポジティブになんかなれないよ。

「グーグってもちーかたない・・・まよわーずにすすめよ・・・ゆけばわかるのさー・・・」

音楽もないから、亜美のなさけない声だけがジムショにひびいて、とってもカッコワルい。なんだか悲しい歌を歌ってるみたいに聞こえる。
真美なら、「おんてい」のズレたところ、じぶんで直して、どうやったら元気いっぱいに聞こえるか、歌い方までけんきゅーするんだろうな。
亜美がひとつ直してるあいだに、真美は3つも4つも先へ行っちゃうんだ。


「ううぅ・・・うわーーーーーん!あああーーーーん!ぐずっ、あーーーーーーーん!!」

「じしゅれん」しにきたはずなのに、ジムショで泣いてるなんてサイアクにカッコワルい。自分の泣き声もジムショじゅうにひびいて、聞きたくないのにかってに耳に入ってくる。
泣いたら泣いただけ悲しくなって、悲しくてまた泣いて・・・気づいたら泣き疲れて眠ってた。
外はもうまっ暗。となりの部屋から兄ちゃんと社長の声が聞こえる。

「亜美も真剣にレッスンに参加しています。きっと、コツを掴めばすぐに伸びるはずだと考えています」
「ふむ・・・」
兄ちゃん、ゴメンね。亜美がヘタクソだからいけないのに。

「とはいえ、視聴者は待ってはくれませんから・・・当分の間は真美だけをメディアに出して、亜美は裏で特訓させようと考えています。」
え?
ウソ・・・ウソ・・・だよね?

「亜美君、真美君のプロデュースは君に一任している。君が良いと思うとおりに取り計らってくれたまえ。・・・だが、それでも亜美君の成長が芳しくない、という時には・・・」
「考えたくはありませんが、真美のみを『双海亜美』として扱うことになるかと思います。そして、亜美の分のリソースを真美に回して、さらなる成長を目指します」
ヤダ、そんなのヤダよ・・・。亜美が『亜美』じゃなくなっちゃう。真美に『亜美』をとられちゃう。
でも、兄ちゃんに「やめて」っていう勇気は出なかった。
910209:2010/02/01(月) 11:59:30 0
「うち、帰んなきゃ・・・」
いつまでもジムショにいても、さむいし、さびしいし、それにパパもママもきっと心配してる。
兄ちゃんと社長は、まだ何かムズかしい話をしてたから、こっそり外に出た。
家にむかって歩きだしたら、また悲しくなって、涙がかってに流れてきた。家についたときは、きっと亜美、チョ→サイアクにカッコワルい顔、してたんだ。
パパが、亜美がこんなおそくまで帰らなかったこと、怒りもしないで、早く寝るように言ったから。
真美はずっと起きて亜美のこと待ってたけど、つかれて寝ちゃったって。

部屋に入ったら、真美がまくらに顔をくっつけて、くー、くー、って息をしてた。
ねえ真美。どんなシアワセそうな顔して寝てるのかな。亜美はこんなに悲しいのに。こんなに悔しいのに。こんなに怖いのに。
明日から亜美は『亜美』じゃなくなっちゃうんだよ。「げーのーかい」から、消えてなくなっちゃうんだよ。

「真美が・・・真美が消えちゃえばいいのに!」
頭のなかが、パッてまっ白になって、そこにあったものをつかんで真美にむかって投げちゃった。
「それ」が、ビー玉とかおこづかいとか、いろんなものを入れてたブリキの貯金箱だ、って気づいたときには、もう、貯金箱は亜美の手から離れちゃってた。
もう、なんにもできなかった。

ドスッ、って変な音がして、真美の頭から黒くてヌルヌルしたものが流れてきた。
血だ。あれ、真美の血だ。
早くパパを呼ばないといけないのに、真美を助けてもらわなきゃいけないのに、亜美の体も、亜美の口も、ぜんぶ氷づけになったみたいに動かなかった。

そのうちパパが様子を見に来て、何かがおかしいのに気づいて電気をつけた。
見なきゃよかったのに。ベッドの上はまっ赤になってて、その中で真美がぴくりとも動かないで横になってた。
パパが真美の首すじに手をあてて、それから今まで見たことある中で、いちばん恐くて、いちばん悲しそうで、いちばん暗い顔をしたから、
もう真美は帰ってこないんだってこと、亜美にも分かった。分かりたくなかったけど、分かっちゃった。

亜美はまだ体も口も動かなかったけれど、パパがビンタして正気に戻してくれた。そしたら、今までたまってた分の涙が吹き出してきた。
パパが、落ちついて何があったかさいしょから話すように、ってすごく恐い顔で言ったから、今日あったことをみんな話した。

パパは「しょーねんほう」とか「いんとくざい」とかいろいろつぶやいていたけど、最後に

「いいかい、今日からは亜美が「真美」になるんだ。「亜美」はどこかへ居なくなっちゃった、ということにしよう。」って言った。

「さあ、答えるんだ。おまえの名前は?」
「わ、わたしは・・・双海・・・真美・・・・・・?」
「いい子だ。今日はいっしょの布団で寝よう。おいで。」
パパにつれられて、パパのフトンに入れられた。怖くて眠れっこないと思ってたけど、いつのまにか空がうす明るくなっていた。
パパが兄ちゃんのところに電話して「亜美が昨日から帰ってこない、どこに行ったか知らないか」って聞いていた。

そのときから亜美は真美になった。真美の服を着て、真美の髪留めで左がわの髪の毛をしばって、「真美だよ→」ってワザとらしくなく言う練習もした。
そのうち、兄ちゃんが青白い顔をしてやってきた。

「この度は多大なご心配をおかけしており、誠に申し訳ございません・・・。当方では、昨日レッスン会場で別れた後から、亜美ちゃんの行方を把握しておりません・・・。」
「小学生の娘をふたりっきりで帰したと?!どういう管理をしているんだ!」
パパが兄ちゃんにあたりちらしている。もうやめて・・・亜美、本当のことを言うよ・・・。

「真美が言うには、亜美は忘れたハンカチをお宅の事務所に取りに戻っているんだ。そうだな、真美?」
「う、うん、亜美ね、ハンカチとりに行くって、ジムショにもどっていったよ・・・。それからあとは、見てない・・・」
ああ・・・亜美って意気地なしだ。どうして本当のこと、言えないのさ。

「・・・!まさか、あの話を聞かれたのか・・・。」

そのとき、ちょうど兄ちゃんのケータイがなった。ピヨちゃんから電話で、亜美のハンカチがジムショで見つかったって。
まだ少ししめっているから、きのうここで使ったんじゃないかって。そっか、あのとき涙をふいて、本当にハンカチ忘れてきたんだ。
911('A`):2010/02/01(月) 12:06:03 0
「何てことだ・・・。亜美、ごめんよ・・・」
兄ちゃんがぼろぼろ涙をこぼして泣きだした。兄ちゃん、亜美はここにいるよ。泣くなら真美のために泣いてあげてよ。

「双海さま、申し訳ございません・・・実は昨日の夜、しばらく亜美ちゃんのアイドル活動を休止して集中レッスンを受けさせようと、社の者と話をしていたんです。
 亜美ちゃんはきっとそれを聞いてしまって・・・」
「・・・真美、ここで良い子にしていなさい。パパはプロデューサーと話をしてくるから。」
パパは兄ちゃんと外へ行っちゃった。兄ちゃん怒られてるのかな。いちばん怒られなきゃいけないのは、亜美なのに。
兄ちゃんは、けっきょくその日、帰ってこなかった。代わりにパパが
「真美はいなくなった亜美のかわりに、これからもアイドルの『双海亜美』を続けるんだよ」って言っていた。

つぎの土曜日に、兄ちゃんとレッスンスタジオへ行った。これからは亜美が『亜美』。だから真美の『亜美』と同じくらい上手に『亜美』にならなきゃダメなんだ。
でも、亜美はやっぱりヘタクソだった。真美がいなくなっても、やっぱり亜美は『亜美』になれない。目の前がまっ暗になって、また大声で泣いちゃった。

「真美、本当にゴメンな・・・。こんな時にレッスンなんか、できないよな・・・」
ううん、ちがうの。ホンキでやってこれしかできないの。みじめすぎて、亜美も消えてなくなっちゃいたい。
しばらくのうちは、亜美がいなくなったショックで気持ちがついていかないんだ、ってことで見のがしてもらえた。そのあいだに、うまくならなきゃいけないのに、うまくなれなかった。

 
 
ねえ、兄ちゃん。兄ちゃんが亜美のこと、真美、って呼ぶたびに、背中がビクンってするの。真美はもういないのに、まるで亜美のすぐ後ろに真美がいるみたいで。
そんで、楽屋のドアに『双海亜美様』って書いてあるの見ても、背中がビクンってするの。「おまえ、本当は亜美だな、分かってるぞ」って言われてるみたいで。
そんでね、いちばん背中がビクンってするのは、ステージに出たとき。ファンの兄ちゃん姉ちゃんが「亜美ちゃーん」って叫ぶたびに、背中がふるえて、頭がハレツしそうになるの。
歌えないよ。ファンの兄ちゃん姉ちゃんが見てる。声、出ないよ。音楽、始まっちゃってるけど、もう、歌い出しもすぎちゃうけど、亜美にはできないよ。
すぐに電気が消えて、ピヨちゃんが何かマイクであやまってる。亜美はプロデューサーに抱きかかえられて、ステージのソデにつれて行かれた。
そしたら千早お姉ちゃんとはるるんの歌が始まって、亜美だけは反省会もナシになって、家に帰らされた。
912('A`):2010/02/01(月) 12:13:15 0
続きはどうした!
913209:2010/02/01(月) 12:13:29 0
つぎの週には、バスじゃなくて兄ちゃんの車でレッスンスタジオに行くことになった。
兄ちゃん、すごく怖い顔をしてずっと黙ってる。亜美もなんにも言えない。
きゅうに、兄ちゃんがつぶやいた。
「本当に、真美はどこに行っちゃったんだろうな・・・」

「・・・分かんない。ごめんね、亜美、なにも兄ちゃんの力に・・・・・・・・・・・・・・?!!」

「ほう、そうか、知らないか」
どうしよう。どうしようどうしようどうしよう。逃げなきゃ。シートベルト外して、ドアをあけて、飛びおりて・・・ダメだ。体、ふるえるばっかりで思うように動いてくれない。
そのうち、車が停った。

「今日の『レッスンスタジオ』はこの貸し倉庫だ。早く降りろ」
亜美がふるえて下りられないのを見て、兄ちゃんが抱きかかえて引きずり下ろした。
倉庫の中はすごくひんやりしてる。電気も小さな電球しかないから、うすぐらい。

「正直に答えろ?お前の名前は?」
「・・・あ・・・あみ・・・。ふたみ、あみ・・・」
「お前がつけてる、その髪留めは誰のだ?」
「こ、これは、真美の・・・」
「外せ」
手がふるえてうまく外せないから、むりやりひっぱって外した。髪の毛が少し、いっしょに抜けた。

「その靴は誰のだ?」
「これも、真美の・・・」
「脱げ」
靴ひもはゆるめだったから、かかとをひっぱったらすぐに脱げた。

「お前が着てるその服は?」
「真美の・・・!」
「脱げ。嫌だとは言わせないぞ」
逆らうなんてできなかった。
手のふるえがおさまらなくて、とっても時間がかかったけど、兄ちゃんは黙って見てた。

「その靴下と下着は?」
「これは、亜美のだよ・・・」
「信用できるか。脱げ」
兄ちゃんもエッチな冗談言うんだね、やーいスケベー、って、ふたりで笑いたかった。でも、冗談で言ってるんじゃないって分かってたから、下着もみんな脱いで、すっぽんぽんになった。
兄ちゃんは真美の服と亜美の下着をカバンにつめて、はじの方に置いてから言った。

「真美はどうした。どこにいる」
「あ、ああ、あみ、あみ、が・・・・・・」
ことばがノドから出てこなくなった。息もできない。
兄ちゃんが、まさか、って顔をして、ひざをかがめて、亜美と同じ目の高さでこっちを見てる。

「はっきり言え・・・。真美は・・・どうした」
「あ、あみが、ちょき、ばこ、ぶつけて・・・し、しなせ・・・っ」

兄ちゃんが口をぽっかり開けて、目をピンポン玉みたいに丸くして――

「オラァ!!」
いきなり顔にホンキでパンチされた。鼻がゴキッて鳴って鼻血が流れ出した。

「なんてこった!真美はSランクだって狙える逸材だったのに!!」
しりもちをついてる亜美のお腹に、靴のつま先がめり込んだ。お腹の中からノドを駆け上がって、ねとねとした液が飛び出してきた。

「それがこんなクソガキのために・・・!」
お腹をおさえて丸まったら、こんどはお尻を後ろから蹴られた。
いたいよ・・・苦しいよ・・・真美はもっと苦しかったのかな・・・。
914209:2010/02/01(月) 12:16:32 0
「亜美、こっち向け。顔を上げろ!」
涙でよく見えないけど、兄ちゃんの方を向いて顔をあげた。そしたら、何かの紙を投げつけられた。
これ、楽譜だ。「ポジティブ!」の楽譜・・・。

「お前が真美の代わりになれるっていうなら、真美くらい上手く歌ってみせろ。ほら、早く歌え!」
髪をつかんで引き上げられて、ひざをついて座った形にされた。
「どうした!『双海亜美』のくせに歌も歌えないのか!」

「う゛っ・・・う゛ぅっ・・・
な゛ーあ゛んでもぢーがだだい・・・ま゛っぞんな゛ーどぢもーあ゛ずだ あ゛ぢだだはぢがうだ」
鼻がつぶれて、血と鼻水でつまってるから、変な声しか出ない。こんな声で真美の代わりをしようとしてたなんて自分がはずかしい。

「下手糞が!そんなんで『亜美』が務まるか!」
左のひざを踏んづけられた。ピキッ、て音が鳴ったと思ったら、ひざこぞうの奥がクギか何かを突きさされたみたいに痛くなって大声をあげた。

「けどお前は真美でもないんだなあ。なんだろう・・・。そうだ、お前はゴミだ」
左ひだが痛いから脚をのばしてあおむけになった。氷の上に寝かされたみたいで、体中がさむい。痛いほどにさむい。
「う゛ぅっ、う゛うー・・・」
「ブー、ブー・・・?ははっ、そうだな。天才の真美と同じ「双海」を名乗るのもおかしいから、お前はブタだ。『ブタ海ゴミ』だ」
「いだいよ・・・いだいよぉ・・・」
「ブタはブタらしく鳴けよ!」
あおむけにされて、口と鼻を踏まれた。折れた鼻の骨がさらにめり込んで――

「ぶう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛っ!!」
「よろしい。確認しようか。お前は真美か?」
「ぶう゛っ!ぶう゛っ!!」
兄ちゃんの足の下で、ほとんど動かないけど、首を横に振る。

「じゃあ、亜美か?」
「ぶう゛っ!ぶう゛っ!!」
もう一度、横に。

「それじゃあブタ海ゴミか?」
「ぶう゛う゛う゛う゛う゛!!」
がく、がく、ってうなづくと、やっと足を離してもらえた。

「真美を失って、代わりに手に入ったのがこんなブタか・・・。くそっ・・・!」
兄ちゃんは亜美をおいて倉庫から出て行くと、小さいブルーシートを持って戻ってきた。それを、床にころがってる亜美の横に広げる。
「お前のような汚いブタも、一応765プロの持ち物だ。だから事務所に持ち帰って飼ってやる。ほら、この上に寝るんだ」
体の節々が痛いけど、からだをよじってブルーシートの上に転がった。兄ちゃんは亜美の体をのり巻きみたいにぐるぐる巻きにして、車の後ろの席に放り込んだみたいだった。
915209:2010/02/01(月) 12:21:34 0
豚さんや牛さんを飼ってる建物のことを「ちくしゃ」って言うんだって。亜美の「ちくしゃ」は765プロの小さな小さな倉庫。
窓もないから、ドアを閉めれば中は真っ暗で、ドアの隙間からほんのひとすじ光が入るだけ。
それも、亜美がここで飼われ始めたつぎの日には、すきま風が入らないようにするスポンジで目張りされちゃったから、外の音がしないと、今が昼か夜かも分からない。
兄ちゃんは「普通の豚は、ホルモンバランスの調整に日照管理をするらしいけどな」って笑ってた。
「でも、お前は肉を取る豚じゃないから、それは必要ないだろ」だって。亜美の役目は豚肉になることじゃなくて、兄ちゃんのストレス解消のためにいじめられること。
いまプロデュースしてるアイドルがドタキャンしたり、レッスンがはかどらなかったりすると、兄ちゃんは「真美だったらこうはならなかったのに!」って言って「ちくしゃ」に来る。

今日は、テニスラケットのおもちゃみたいなものを持ってきた。

「おい、ブタ」
うっかり人のことばをはなすと、また蹴られる。
「ぶうぅ・・・」

「今日はお前を、網焼きにするぞ♪」
兄ちゃんがすごく嬉しそうだ。きっとプロデュースしてるアイドルがだいじなオーディションに落ちたんだ。それで兄ちゃんキレちゃって、その裏返しでこんなにキゲンがいいんだ。

「これな、乾電池が入ってて、スイッチを押すとこの網に電気が流れるんだ。普通は蚊とか、小さな虫を捕るのに使うんだが・・・」
おかしい。キレてる兄ちゃんが、そのていどで満足するはずがない。持っているラケットをよく見ると、にぎる所から電気コードが垂れ下がっている。
まさか、まさか・・・!!

「安心しろ、抵抗噛ませてあるからたぶん死なないと思う。たぶんな」
ヤダよ、やめて・・・!

「どこの肉が美味しいかな?尻か?腿か?腹もいいなあ」
ラケットがすっ、とお尻にあたる。すっぽんぽんのお尻に、針金のひんやりした感じがつたわる。
「ここが丸々して美味そうだ。それ」
「んぎゃあ゛あああああああああああああああああああああああ!!!」
亜美のからだが、かってに跳ねた。カエルのおもちゃみたいだ。

「聞き間違いか?なんか人の声が聞こえた気がするぞ?」
兄ちゃんがそう言いながら、反対側のお尻に金網をあてる。

「ぶ、ブー!ブゥー!」
「手遅れ」
「ぶひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」
亜美、もうダメみたい。体じゅうの力がぬけて、起きてるのか寝てるのかも分からなくなって、それなのにお尻だけがかってにケイレンしてる。
そのあとも何度か電気ショックをされたけど、声を出す力もなくなって、ただカエルのおもちゃみたいに跳ねてた。
兄ちゃんは亜美が叫ばないのが不満みたいで、しばらく黙って見おろしてたけど、何か気づいたみたい。

「そうか、エサを忘れてたっけ」
言われてはじめて思い出した。さいごにご飯食べたの、どれくらい前だっけ。
兄ちゃんは倉庫の奥からバケツを出してきた。

「ブタ、水が欲しいか?」
欲しい、欲しいよ。ノド、からからだよ。
「ようし、たっぷり飲ませてやる」
どうしたの兄ちゃん、何でズボン下ろしてるの・・・?
「ブタごときには水道水だってもったいない。ここから飲め」
冗談だって言って。おねがい兄ちゃん。
「早くくわえないと2度とやらないぞ?死にたくなかったら早くしろ。歯は立てるなよ」
そんなのヤダよ。オチンチンくわえるなんてぜったいイヤ。でも死ぬのも怖い。
916209:2010/02/01(月) 12:24:17 0
そのうち兄ちゃんはしびれを切らして、亜美の髪の毛をつかんで持ち上げた。アゴにも力が入らないから口がだらしなく開いちゃう。
そこに、兄ちゃんは臭いオチンチンをむりやり挿しこんできた。

「もうちょっと育ってれば、ミルクを飲ませてやるところだけどな・・・両方の口に」

オチンチンがビクッ、ってふるえて、生暖かいオシッコが口いっぱいに流れ込んできた。

「うびゅびゅびゅびゅびゅびゅびゅびゅびゅ・・・ぶべっ、げええええっ!!」
「おいおい、水を飲むどころか吐いてどうする。バケツを用意しておいてよかったな」
「う゛えええええ・・・」
「とにかく水はやった、と。あとは食べ物か。ちょっと待ってろ」
兄ちゃんは10分くらいで戻ってきた。

「ほら、ご馳走だぞ。リンゴを食わせてもらえるなんて、並みのブタより幸せだぞ」
何か黒いものをバケツに放り込むと、兄ちゃんはすぐにドアを閉めて、カギをかけた。
「それでしばらくは死なないだろ。またな」

真っ暗で分からないけど、確かにリンゴのにおいがする。ツンとすっぱいにおいが混じってるのは、亜美のゲロと兄ちゃんのオシッコのにおい?
そっとバケツに手を入れて、それに触ってみて分かった。ネチョっとしてる・・・このリンゴ、腐ってるんだ。
ひどいよ・・・ひどいよ・・・こんなのってないよ・・・。
でも、これを食べないとたぶん亜美死んじゃう。そんなのヤダよ。死ぬのは怖いよ。
においをかがないように、片手で鼻をつまんでリンゴに口をつけてみたけど、そのとたんに、オシッコのにおいまで吹きとんじゃうほどの苦味と腐ったにおいが口いっぱいに広がって、ノドの奥から鼻にも流れこんで、また吐いちゃった。
吐いて、食べて、また吐いて食べてるうちに、鼻も舌もしびれてきて、そしたら少しはラクに食べられるようになった。
でも自分が腐ったリンゴを食べて、オシッコ飲んでるって思ったら、自分が本当にブタより汚い生き物になっているのに気づいて、今まででいちばん・・・ううん、真美が死んじゃった時の次に悲しくて、苦しくて、泣きたくなった。



大声で泣いて、泣いて、泣きまくって、ふふっ、て笑い声に気づいてそっちを見たら、真美がいたんだ。

『亜美ったらチョ→泣き虫だねー、嬉しいんじゃなかったの?真美がいなくなって』
「ちがう、ちがうよぉっ!!」
真美がニヤニヤ笑ってこっちを見てる。キレたときの兄ちゃんと同じ、笑ってるのにすごく暗くて、怖い目。

『えー、違わないっしょ→、真美に貯金箱ぶつけたときに何て言ってたっけ〜?』
「ごめんね!ごめんね!!怖かっただけ!『亜美』でいられなくなるのが、怖かっただけ!真美が消えちゃえなんて、思ってない!!」
真美がクスクス笑いだした。やめて。やめて。聞きたくないよ。

『じゃあ、どうしてすぐにパパを呼びに行ってくれなかったのさー』
「それは・・・それは・・・!」
『だいじょーぶ。亜美の考えてることは、言わなくても分かるよ。なんたって真美は真美だもん』
「・・・・・・え?」



『真美が死ぬの、待ってたんだよね。冷たくなるまで待ってたんだよね』



首すじに氷水を流されたみたいに、体じゅうがヒヤッとしてガタガタ震えだした。

「そんなことない!そんなことない!!」
『今度は真美が待っててあげる。亜美が死ぬの、楽しみに待っててあげる』
「イヤ!イヤ!!助けて真美!!」
『あとどれくらいで冷たくなるかなあ。もう1日くらいかな?半日くらいかな?ふふふふ・・・』
917('A`):2010/02/01(月) 12:25:37 0
真美がすーっと消えていく。そこに残っているのはうっすらと、本当にうっすらとスポンジから光がもれてる、倉庫のドア。
亜美、ここから出られずに死ぬの?口から腐ったにおいさせて、すっぽんぽんのままで、お尻に焼きあとつけられて、この倉庫のなかで死ぬの?
イヤだよ、イヤだよイヤだよイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ!!

何か、探さなくちゃ、ここから出るための道具。何か、何か、何か!
そんな物ないと思ってたけど、そこら中はいまわって、手探りで探したら、鉄パイプみたいなものを見つけた。どうしてこんなものが、今まで見つからなかったんだろう。
それどころじゃない、これでドアを壊すんだ。
亜美、死にかけてるはずなのに、死にたくないと思ったらすごい力が出た。鉄パイプでドアを叩きまくったら、びくともしなかったけど、誰かがその音を聞きつけたみたい。

「コラァ、ブタめ静かにしないか!」
『ふふ、だっしゅつせーこーだね。』
ドアが開いた所をねらって、腕と足を突っこんで外に出た。

「亜美っ?!どうしたのそんな姿で?!」
『亜美ってしぶといね。まだ動けるの?』
真美、やっぱりいたんだ。ごめんなさい・・・あやまるから助けてよ・・・!

「亜美ぃ、しっかりしてえっ!」
『ねえ亜美、死ぬのは怖い?』
あれ?左にも真美がいる。どうしたんだろう。

「ちょっとアンタ、どういう事か説明してちょうだい!」
『亜美って弱虫だなあ。真美は、怖くなかったもんね』
真美が・・・たくさんいる。

「説明するさ。こいつが真美を殺して入れ替わってたんだ。」
『だって・・・寝てる間にいきなり殺されちゃったんだもんね!』
真美が・・・亜美のこと取りかこんでる。

「そんな・・・そんなことって・・・!」
『死ぬってどんな気分だと思う?』
真美が、亜美のこと・・・殺そうと、してる?

「そ、それにしたって、こんなの酷すぎますっ!」
『亜美にも、すぐに教えてあげるからね・・・・・・』
そんなのイヤだ。真美、やめてよっ・・・!
鉄パイプを握りなおして、振り上げる。体に力が入らなくてふらふらするけど、一番近くにいる、あの真美のところまでなら・・・。
「うああ!真美!真美いぃ!!」
918209:2010/02/01(月) 12:28:04 0
「ひいぃっ!来ないでよっ!」
『なに?また真美を殺すの?』
真美に軽くよけられた。横から腰を蹴られて、鉄パイプを落として転んじゃう。

「い、伊織!亜美を蹴っちゃダメじゃない!」
『いちど殺したのに、まだ満足できないの?』
あわてて鉄パイプを拾いなおす。たくさんの真美がみんなこっちを向いて、ニヤニヤしてる。

「だって、これオカシくなってるわよ?!ほら、春香の方に行く!」
『亜美、死ぬのってすごく痛かったんだよ?苦しかったんだよ?』
許して、許して・・・!
「やめてよおぉ!!真美、もうやめてよお!!」

「きゃあ?!ごめん亜美っ!」
『それなのに、また殺すの?』
また蹴りたおされた。目の前がぼんやりして、すごく寒い。

「亜美ちゃん落ち着いて!それは春香ちゃんだよ!」
『ひどいよ・・・真美は亜美のこと大好きだったのに』
亜美もだよ。真美のこと大好きだったのに。なのに・・・どうして・・・。

「ごめんねぇ!ごめんね真美ぃ!!」
たぶん、これが亜美のだせる力ぜんぶ。鉄パイプを大きく振り上げて、真美のまん前から振りおろす。


「雪歩、危ない!」
『さようなら、亜美』


ずんっ、って、兄ちゃんのよりずっとキツイ蹴りがお腹に叩きこまれた。
一瞬体が浮いて、あおむけに頭から落っこちる。

頭のうしろから、生暖かいものが広がってきた。真美とは死に方まで「おそろい」なんだね。なんかおかしい。



真美。ねえ真美。亜美ももうすぐ死ぬよ。ぜったい「そっち」には行けないけど、でも、もし生まれ変われたら、また真美と双子になりたいよ。


そんで、こんどはアイドルなんかじゃなくて、

フツーにじょししょーがくせいして、

フツーにじょしちゅーがくせいして、

フツーにじょしこーせーして、

そんで、そんで―――