本当は怖い“保険料の未納”
現在、国民年金の保険料を払わない、いわゆる“未納”の方が非常に多く、大きな社会問題となっています。
将来、年金をもらえるか分からないのだから未納でもいい」との声も聞かれます。“未納”の影響は本当にそれだけでしょうか?
今回は、保険料未納のリスクについて考えます。
保険料を払っていればこんなことには…
大学を卒業後、フリーター生活を送るA君(25歳)。ある日、気分転換にバイクでツーリングに出かけたところ転倒し全身を強打、
半身不随の状態になってしまいました。我が子の将来を悲観していたA君のご両親ですが、「障害年金」の制度があることを知り、
藁にもすがる思いで手続きをしました。しかし、A君の「障害年金」の申請は認められませんでした。
主婦のBさん(30歳)。1年前、念願のお子さんにも恵まれ、自営業を営むご主人の仕事も順調です。
そんなある日、ご主人が交通事故にあい突然亡くなってしまいました。1歳の子供を抱え途方に暮れていたBさんは、
友人のアドバイスで「遺族年金」の手続きを行うことにしました。しかし、Bさんの「遺族年金」の申請は認められませんでした。
なぜ、このふたりは年金をもらえなかったのでしょうか。理由はA君やBさんの亡くなったご主人の国民年金の保険料が
“未納”だったためです。国民年金の「障害年金」「遺族年金」は、 保険料を払うべき期間の3分の1以上が未納であり、
かつ直近1年間に未納の月が1ヶ月でもある場合には、もらうことができない仕組みになっています。
「老齢年金」のためだけに保険料を払うのではない
現在、国民年金保険料の納付率は63.9%と6割程度であり(平成19年度の国民年金の加入・納付状況/社会保険庁)、
回復の兆しが見られません。保険料を払わない理由として、「どうせ年をとっても年金をもらえるか分からない」
「将来のことは自分で何とかする」などの声も数多く聞かれます。年金制度や社会保険庁に対する国民の不信感を考えると、
心情的には理解できなくもありません。
しかし、私たちがもらうことのできる国民年金は、高齢になった時に受け取る「老齢基礎年金」だけではありません。
重い障害を負い、自分で十分な生活費を稼ぐことができなくなった時には「障害基礎年金」が、一家の大黒柱が他界した場合には
残された家族に「遺族基礎年金」が支払われることになります。国民年金の保険料の支払いは、「“老齢”の年金」だけでなく
「“障害”の年金」や「“遺族”の年金」をもらうためにも必要になるわけです。
「5000万円超の障害年金」がふいになることも
現在、1級の障害基礎年金は年額990,100円です。先ほどのA君(25歳)がもしもその後、男性の平均寿命(79.19歳/厚生労働省・平成19年簡易生命表)
近くまで1級の障害基礎年金をもらい続けたとすると、
990,100円×54年(79歳−25歳)=53,465,400円
となり、生涯で約5300万円の障害年金を受けとれたことになります。
また、遺族基礎年金は子供がひとりの場合、高校を卒業する年度の3月まで年額1,020,000円がもらえるので、1歳の子どもを持つBさんの場合には、
概算で1,020,000円×17年(18歳−1歳)=17,340,000円
となり、累計で約1700万円の遺族基礎年金を受けとれたことになります。