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【西松事件報告書(3)】第1章 検察の捜査・処分をめぐる問題

第1章 検察の捜査・処分をめぐる問題

 本章は、本件に関する真相究明を目的とするものではなく、第2章以下の検討の前提として、本件についての検察の捜査、
処分をめぐる問題点を指摘することを目的とする。なお、本件に関する事実関係について、検察当局からは、
公式の資料は公表されていないため、本章の記述は、すべて新聞などの報道によるものである。

 1・小沢氏秘書にかかる政治資金規正法違反の事実と問題点

 民主党代表であった小沢一郎氏の公設第1秘書の大久保隆規氏は、2009 年3月3日午後、東京地検の任意の事情聴取を受け、
同日夕刻、政治資金規正法違反で逮捕され、引き続き拘置されて、3月24日に起訴された。

 逮捕・拘置事実は、小沢氏の資金管理政治団体「陸山会」の会計責任者としての大久保氏の、2003 年から2006年までの
同団体の収支報告書についての虚偽記入の事実であり、西松建設のOBが代表者を務める「新政治問題研究会」「未来産業研究会」
という2つの政治団体から総額2100万円の寄付を受けた旨の記載が、実際にはそれらの寄付が政治団体ではなく西松建設からの
寄付だったとして、政治資金収支報告書の虚偽記入に当たるとされたものである(起訴事実では、上記政治団体から小沢前代表が
代表を務める民主党岩手県第4区総支部への合計1400万円の寄付についての虚偽記入の事実が加えられ、虚偽記入にかかる
金額は合計で3500万円となった)。

 東京地検の谷川恒太次席検事は、上記政治資金規正法違反の起訴を行った3 月24日、「ダミーの政治団体の名義を利用する
という巧妙な方法により、多額の寄付を受けてきた事実を隠すため、という本件犯行の動機、犯行に至る経緯、犯行態様について
の事情も考え合わせると、政治資金規正法に照らして看過しえない重大かつ悪質な事案と判断した」と述べている。

そこで、問題となるのは、第1に、本件について政治資金規正法違反が成立するのか否か、第2に、仮に違反であるとしても、
同法違反の罰則を適用すべき処罰価値ないし事案の重大性・悪質性が認められるのか、そして、第3に、被疑者を任意出頭当日に
逮捕するという捜査手法を用いたことが妥当なのか否か、という点である。

 そして、それ以外にも、同じ政治団体名義で同様の寄付が自民党議員に対しても行われていたのに、小沢氏に関連する
政治資金規正法違反の事実のみを立件し、逮捕・起訴を行ったことが偏った捜査ではないのかという点も問題となる。