【民主党解剖】第4部 新体制の行方(5)改革は本物か 年金・分権
分かりやすさ
民主党にとって、年金制度改革と地方分権推進は、政権交代を引き寄せるための大きな武器であり、スローガンだ。
だが、その実現には、財源確保や抵抗勢力の説得など、高く立ちはだかるいくつもの壁を乗り越えないといけない。
党代表、鳩山由紀夫は4日、党本部で政調会長の直嶋正行と「次の内閣」年金担当相の長妻昭、年金調査会長の
古川元久と向き合っていた。約1時間にわたり年金制度改革案の説明に耳を傾けた後、鳩山はこう指示を出した。
「立体図でも作れないか。党所属議員にも分かりやすいものにしないと」
民主党は「消えた年金」問題で政府・与党を追及し、平成19年7月の参院選で参院第一党に躍り出た。
2匹目のドジョウを狙いたいところだが、給付と負担の関係など年金制度は複雑だ。どんなにいい改革案だと主張しても、
所属議員と国民に理解されるものでなければ意味がない。
改革案は、国民・厚生・共催の3年金の一元化をはじめ、消費税を財源とした月額7万円の「最低保障年金」創設などが柱だ。
ただ、そこに至る道筋、制度設計は必ずしも明らかではない。
1日、東京・大手町で開かれた民主党と日本経団連との政策懇談会。18年以来3年ぶりに民主党代表が出席した会合では、
社会保障制度の改革問題が取り上げられた。
「四苦八苦しているが、努力しながら(財源の)メドをつけているところだ」
鳩山は、経団連側が財源問題を指摘する前に切り出した。消費税率引き上げについては、あえて脇に置き、
できるだけ言及することを避けた。
官僚支配の打破
「スピード感を持って進めなければ、社会保障制度の崩壊を食い止めることはできない」
経団連副会長の森田富治郎は、こうクギを刺した。消費税について、さきの党代表選でも鳩山は「4年間は引き上げ論議を封印すべきだ」
との考えを示しており、双方のミゾは埋まらなかった。
「野党では詳細な制度設計は無理だ」
政調幹部の一人は、民主党の年金制度改革案に内外から批判が向けられることについて、不満を漏らす。
政府側から自営業者の所得分布などの基礎データが十分に出てこない。仮にデータが出たとしても、どこまで信用できるのか。
だからこそ、政権交代が必要だ−というわけだ。
4月中旬の党本部。党分権調査会長の玄葉光一郎は、直嶋とともに代表(当時)の小沢一郎に会い、地方分権に伴い
全国の自治体数をどう調整するかを協議した。
「300にはこだわらない」と、自らの持論を押し通すことはしないという小沢に対し、玄葉は「それなら責任を持ってまとめる」
と応じ、700〜800とする腹案をのませた。
地方分権を進め、中央省庁が地方を支配する力の源泉となっている補助金を全面廃止し、政官財の癒着体質を改める−。
民主党が地方分権を強調するのは、「官僚内閣制」を打破して政治主導の国づくりを実現するために欠かせない重要テーマという認識からだ。