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【民主党解剖】第4部 新体制の行方(2)「公約」と「現実」のきしみ

政権奪取後を配慮

 鳩山由紀夫を代表とする新体制の発足後、初めて国会内で開かれた2日の副代表会議。メンバーの一人、前原誠司はこう指摘した。

 「次期衆院選のマニフェスト(政権公約)で大風呂敷を広げると、政権を取った後で問題になる。来年夏には、参院選もある。
衆参両院で勝つ戦略を考えた方がいい」

 この発言に強い反論は出なかった。ようやく政権の座に手が届く場所にたどり着いたことで、民主党は今、現実路線を迫られ始めた。

 自民党との対立軸を鮮明にして、政権交代を実現する際には、マニフェストは「最大の武器」になる。それだけに慎重に
吟味されなければならない。鳩山に近い中堅は「数字まできっちり書き込むと、政権獲得後に手足を縛られてしまう」と前原に同調する。

 民主党は3日には、マニフェスト検討準備委員会(委員長・政調会長の直嶋正行)の初会合を開いた。中学生までの子供を対象に
月額2万6000円を支給する「子ども手当」など、平成19年7月の参院選で掲げた看板政策と、約19兆円規模の財源に関する
工程表の取りまとめ作業を行った。

 代表代行、小沢一郎が代表時代のマニフェストは、政府・与党から「バラマキ」との批判を浴び、党内にも
「財源があいまい」との懸念があった。

 この点は小沢自身、周囲に「財源は政権獲得後にどうとでもなる」とはばからず、脇に追いやっていたのが実情だった。

鳩山色は出せるか

 「(従来の工程表を)精査し、現実として妥当なものにする作業が残っているが、それほど多くの日数はかからない」

 鳩山は2日の記者会見で、月内のマニフェスト取りまとめに自信をみせた。だが、実際はそう簡単なものではなさそうだ。

 財源問題をぼかしたまま拙速な取りまとめに走れば、付け焼き刃との印象は避けられず、民主党への国民の懸念は
払拭(ふつしよく)されない。一方で、世論にアピールする「おいしい」政策も欠かせない。政策の細かい詰めの作業は後回しにし、
政権交代だけを最優先させた小沢流を踏襲するか、政権担当能力をきちんと示して新しい鳩山色を打ち出すか。そのはざまに
立っての逡巡(しゆんじゆん)は続く。

 「内需を拡大させる。国民の購買力を高め家計の2割アップ作戦を展開する」

 5月16日、都内のホテルで行われた代表選討論会で、鳩山は新たな経済政策を訴えた。だが、会場を埋めて聞き入った
所属議員らには、新鮮味のある政策とは聞こえなかったようだ。

 「小沢さんが次期衆院選に向けて温めていたキャッチフレーズを、鳩山さんが代わりに掲げてみせただけ」(中堅)と
見透かされていたためだ。鳩山らしさが色濃く出たのは「友愛外交」のスローガンと、「北方領土の全面返還を目指す」決意ぐらいだった。

 「幹事長の岡田(克也)さんとよく連携するように」

 役員人事を正式に決定した5月19日夕、直嶋からマニフェスト作成状況について報告を受けた鳩山は、何も具体的な
指示は下さなかった。幹事長として3年間にわたり小沢を支えた後の代表就任なだけに、小沢代表当時にできたマニフェストに
異論を挟む余地は最初からなかったのだ。