【民主党解剖】第3部ぶれる輪郭(5) 出来ていた筋書き
岡田は13日、小沢や参院議員会長の輿石東、党最高顧問で元首相の羽田孜らと相次いで会談し、出馬意思を伝えた。
自ら党所属議員に「代表選に出たいのでよろしく」と電話をかけ、協力を呼びかけてもいる。
鳩山は13日、まず代表選のカギを握るとされる代表代行の菅直人と会い、協力を求めた。
羽田とも会い、さらに永田町の個人事務所で自派グループ議員と代表選出馬を表明する際の演説内容を打ち合わせた。
2人との会談で羽田は、鳩山には「応援する」と激励し、岡田には「鳩山を応援する」と伝えたという。
一騎打ち明確に
代表選はこの日、本格的にスタートしたように見える。だが、水面下では、11日に小沢が辞任表明の記者会見を
行った直後に、すでに根回しが始まっていた。
同夜、小沢に近い議員でつくる「一新会」メンバーのうち、鳩山グループや旧民社党系グループなどに入っていない
中核議員約30人が、都内の中華料理店に集められた。
「後任代表問題は16日までには収める。そしたら地元に帰って選挙運動だ」
円卓を回りながら、小沢はこう明言した。「すでにシナリオができていて、代表選の日程も鳩山に跡目を譲ることも
決まっていた」(出席者)とみられる。
一新会は現在、代表選について表向きは「自主投票」だ。党内融和の演出であり、「みんな鳩山に入れるに決まっている」
(他派議員)。現に、一新会メンバーが羽田に、票の取りまとめを依頼しにきた姿も目撃されている。
小沢陣営の鳩山支持が明らかなだけに、代表選は「親小沢」対「反小沢」の様相が色濃い。小沢路線の鳩山か、
「小沢の言うことを聞かない」(中堅議員)とされる岡田に乗るかというシンプルな構図だ。
16日の告示から両院議員総会での投票までわずか3時間半しかなく、候補同士が論争を戦わす時間は全くないこともあり、
はじめから新代表の政策・理念は問われていないかのようだ。
かすむ政策・理念
今回、早期の新代表選出を目指す執行部の方針で、投票権者は国会議員だけに限られた。だが、12日の両院議員総会では、
より開かれた代表選にすべきだとの意見も相次いでいた。
「党員・サポーターの思いを(自分らの)投票行動に反映させたい」
党岡山県連代表、津村啓介ら県連所属の国会議員3人は13日に記者会見し、党員・サポーターに次期代表としてふさわしい
人物について電話調査を行うことを明らかにした。中堅・若手議員の意識は変わりつつあるようだが…。
13日夜、民主党の各グループはホテルニューオータニなど都内のホテルに散り、代表選の情勢や対策を協議した。
鳩山グループの幹部は、「新聞に『親小沢』対『反小沢』などと書かれてると困る。さわやかに代表選をやろうと思っているのに」
とぼやく。とはいえ、代表選が各議員のポスト、浮沈を賭けた権力闘争の場であることは否定できない。
一新会の衆院議員、太田和美は13日、記者団に「岡田さんは(代表時代の平成17年の郵政選挙で)与党に3分の2の
衆院議席を与えた張本人だ」と強調した。
一方、菅グループの一人は「小沢さんは二重権力を行使することで真骨頂を発揮する」と指摘し、鳩山が「小沢の傀儡(かいらい)」
(与党幹部)となることに懸念を表明する。
鳩山が小沢の公設秘書逮捕について、当初から「いろいろと陰謀がある」などど根拠を示さずに検察批判を続けたことも懸念材料となっている。
13日夜の民主党代議士会。鳩山と岡田は互いに目を合わせようとしなかった。小沢は11日の辞任表明で「自ら身を退くことで
党の団結を強める」と述べたが、党内には早くも新たな亀裂が生じつつある。(敬称略)