【民主党解剖】第3部ぶれる輪郭(4) 憲法論議封じる共闘路線
違法状態を放置
「わが党はあまりにも野党共闘に気を使いすぎて、憲法審査会規程の制定に後ろ向きの印象を与えている。
改めておわび申しあげたい」
5月1日に東京・永田町で開かれた超党派の「新憲法制定議員同盟」(会長・中曽根康弘元首相)の大会で、
民主党を代表してあいさつした副幹事長の長島昭久は聴衆に頭を下げた。
2年前の平成19年5月14日に成立した国民投票法に基づき、衆参両院に常設機関として憲法審査会が設置されたが、
委員数や議事手続きを定める審査会規程はいまだになく、実質的なスタートに至っていない。
民主党は同法が衆院で「強行採決」されたことに反発し、他の野党と一緒に規程の制定に抵抗し続けてきた。
それが冒頭の長島の謝罪につながっている。
「確かに違法状態になっていることは認めざるを得ない。本来はやるべきだ」
参院議院運営委員長の西岡武夫がこう語るように、憲法審査会の現状を問題視する声は党内にも存在する。
それでも民主党が違法状態の解消に消極的なのは、政権交代後に社民党と連立を組むことを想定しているからだ。
護憲派の社民党は「憲法審査会を動かす必要はない。今、憲法を改正しなければならない状況だとは思わない」(党首の福島瑞穂)と主張する。
民主党代表の小沢一郎自身、「憲法を何が何でも改正しなければ、という緊急性があるのか」(昨年4月28日の記者会見)
と述べており、党内に憲法論議を進めようという機運はない。
寄り合い所帯
憲法をめぐり、野党共闘以上の難題は党内調整だ。
民主党では、かつて幹事長の鳩山由紀夫が「自衛軍」の保持を明記した「憲法改正試案」を出版し、旧民社系グループが
軍隊の保持を明記した「新憲法草案」をまとめたことがある。長島のように「憲法改正の実現は党是だ」と主張する議員もいる。
一方、今年1月、自治労や日教組と関係が深い「フォーラム平和・人権・環境」が香川県で開いた護憲大会には、
民主党から衆院議員の近藤昭一ら3人が来賓として参加した。また、45人の党所属議員が「日本国憲法と9条の精神を守るべく、
みなさまとともに頑張る」(衆院議員、仲野博子)などと祝電を寄せた。
改憲論者から、ガチガチの護憲派、旧社会党左派までが同居する寄り合い所帯だけに、ひとたび憲法論議が始まれば、
党内に深刻な亀裂が入るのは確実だ。
「今はあらゆることに政権交代が優先する。国民には『武士の情け』で、自民党政権の巨悪を引きはがすまで待っていただきたい」
自主憲法制定が持論の若手議員は、苦しい胸のうちを語る。ただ、民主党政権誕生後も、憲法改正が政治日程に上る見通しはない。
平成17年に党憲法調査会長として「憲法提言」をまとめた元政調会長の枝野幸男は今、「政権交代をしたら、まず自民党と違うこと
をやらなければならない。自民党とも合意し、憲法改正を(衆参の)3分の2以上でやるには時間がかかる」と、
憲法改正の優先順位は低いと指摘する。
そして、実際の憲法改正への着手時期については「あと10年ぐらいかかるのではないか」と、遠い目をしてつぶやいた。