隠せぬ人材不足
「4回生議員なんか、省庁でいえばまだ課長か補佐クラスだ」
小沢はかつて連合幹部らとの懇談の席で、党内に人材が乏しい事情を嘆いてみせた。党衆院議員のうち
当選4回以下は約7割を占める。閣僚経験者は小沢のほか、首相を務めた羽田孜ら数人にすぎない。
一方、霞が関は変わり身が早い。「次の内閣」(NC)の下部機関、部門会議では昨秋から、
役所が行う説明にはそれまでの課長でなく、局長、審議官クラスが顔を出すようになった。政策決定に入り込む
霞が関の影響を、民主党が排除できるかは疑問だ。
小沢の官房副長官時代の秘書官で、財務省主計局次長の香川俊介。在ジュネーブ国際機関政府代表部大使兼ジュネーブ
総領事だった元秘書官の外務省国際協力局審議官、宮川真喜雄らは、民主党政権では中枢を占めると目されている。
また、昨年12月、小沢に近い京セラ名誉会長の稲盛和夫、元財務官の榊原英資らがまとめた国家ビジョン案は、
小沢の政権構想の下書きと位置づけられている。公表は先送りされたが、中身を練ったメンバーは元通産事務次官の
福川伸次、元大蔵省企画官の加藤秀樹ら官僚OBばかりだ。
小沢は竹下登内閣の官房副長官時代、中曽根前内閣で任命された内閣5室長を「無能」と断じ、全員のクビ切りを
記者団に宣言した。そこで5室長の1人だった内政審議室長、的場順三(安倍晋三内閣の官房副長官)が面と向かい
小沢に反撃する場面もあった。
「われわれを無能とおっしゃるが、中曽根康弘首相、後藤田正晴官房長官の下では立派に機能していた。
機能しないのは上の方のご器量の問題だ」
官僚に「器量」を問われた小沢に、霞が関をうまく利用するだけの力量と気概があるのか。急ごしらえとなる
「小沢政権」の下、政策決定のプロセスが大混乱に陥る懸念は消えない。(敬称略)