【民主党解剖】第3部 ぶれる輪郭(2)「政治主導」見えぬ具体像
官僚内閣制打破
「今の日本の形と内閣の形は『官僚内閣制』だ。予算を含め、官僚が基本的な政策原案を全部作って、
それに与党が注文をつけて出していく。『官僚内閣制』を『国会内閣制』にしなければならない」
民主党代表代行の菅直人は7日の衆院予算委員会でこう強調した。政権交代によって、
日本の政治の仕組みを政治主導へと根本的に変えていく決意を表明したものだった。
それでは、民主党はどんな青写真を描いているのか。昨年10月上旬、内閣情報調査室から出された
一つの「調査指令」がある。
「民主党の政権構想を徹底的に探れ」
発端は民主党政調会長代理の長妻昭が内閣官房に、国会議員ら120人が首相官邸で執務するスペースの有無や、
増築した場合かかる費用などを文書で問い合わせたことだった。
政権交代後、国会議員100人以上を政府に送り込み、政治主導で霞が関をコントロールする−。
民主党は昨秋まとめた「政策INDEX2008」などで構想の一端を垣間見せている。長妻の動きは閣僚や副大臣、
政務官も官邸で執務にあたらせるという、政権交代を前提にした「事前調査」とみられ、この構想は霞が関に瞬時に広がった。
ただ、党代表の小沢一郎自身は具体像をつまびらかにしていない。長妻構想も個人的なものだった。
政権構想を明確に打ち出せないのはなぜか。
小沢側近の国対委員長、山岡賢次の耳には「政権交代に備えて政権準備委員会を設置すべきだ」との意見も届くが、
山岡は「まずは次の衆院選だ」と退けている。小沢も周辺に「おれが決めることだ」と漏らす。
西松建設の違法献金事件で小沢の進退問題がくすぶり続ける中、「今、議論を切り出せば
『次の首相は誰か』という話に直結する」と、デリケートな問題になっている事情もある。
密室の政権構想
今年1月15日夜には、水面下で動きもあった。小沢、菅、幹事長の鳩山由紀夫が都内の民家にお忍びで集まった。
家庭料理に舌つづみを打ちながら鳩山は政策研究大学院大学教授、飯尾潤が書いた政権移行準備案のペーパーを小沢に渡した。
小沢は「飯尾君はよく知っている」と応じた。
執行部による「密室」の政権構想の調整作業に、小沢がゴー・サインを出した瞬間だった。鳩山は「代表には私の最終案に
『○』『×』をつけてもらう」と周辺に語っている。
「局長クラス以上は辞表を提出させ、民主党の政策を遂行するか確かめる」。鳩山は霞が関に踏み絵を迫り、
協力者だけを政治任用する考えを示す。
小沢は政界入りした昭和44年の衆院選の選挙公報で「政治の無力化」に懸念を示し、「官僚政治の打破」を訴えた。
政治主導の実現は政治家としての小沢の初志だ。