足元からも突き上げ
小沢への不満の萌芽(ほうが)は、固いはずの足元からも突き出てきている。
4月15日夜、小沢を支持する議員グループ「一新会」が、東京・虎ノ門の中華料理店で夕食会を開いた。この事実上の「小沢派」の会合で、
ある新人候補が同会代表幹事、鈴木克昌(かつまさ)の手を握り締め、「何とか助けてください」と懇願した。出席者は、代表交代を願う
気持ちを感じ取ったという。
小沢辞任論を公言しているある幹部は先月、風に吹かれて桜が舞い散る東京・赤坂のホテル近くで、早くもこんな見通しをつぶやいていた。
「小沢はこの風で、桜は1年生議員や新人候補だ。選挙でみんな散るかもな」
代表“更迭”の歴史
民主党は、日本労働組合総連合会(連合)以外に有力な支援組織を持っていない。これまで、手間暇かかる組織育成を後回しにし、
手っ取り早く世論の風の受け皿となる「党の顔」、つまり代表のイメージに頼ってきた経緯がある。
実際、代表の人気に陰りが出ると、直ちに党内から引きずり降ろすという歴史を繰り返してきた。代表代行の菅直人は過去に、
女性問題(平成11年)と年金問題(16年)で代表を追い落とされた。幹事長の鳩山由紀夫は役員人事に対する党内の反発(14年)、
副代表の前原誠司も偽メール問題(18年)で代表辞任を余儀なくされた。
それでも、今回はまだ本格的な「小沢降ろし」は始まっていない。背景には、政権交代を目前にして党内政局が先鋭化すれば、
「やはり民主党はバラバラだ」と世論の失望を招くことへの危惧(きぐ)がある。小沢率いる自由党が15年、民主党に合流後、
党の支持層が「中高年や保守層に広がった」(選対幹部)ことも、動きを鈍らせる要因となっている。
「これまで民主党が繰り返してきたように、代表をすげ替えて事態が好転すると思っているのか」
一向に収まらない辞任論にたまりかねた副代表、石井一(はじめ)は4月28日、「ポスト小沢」の筆頭格である副代表、岡田克也と
参院議員会館で会い、強い口調で問いただした。
代表を支えるべきだという石井の「正論」に、岡田はとりあえず「それはよく分かっています。当面、小沢を支えます」と答えるほかはなかった。