【民主党解剖】第2部 小沢ショック(2)「政治とカネ」広がる余波
民主党代表、小沢一郎の公設第1秘書逮捕をめぐる同党内の奇妙な静寂は、秘書の起訴・不起訴が決まる前日の23日も続いた。だが水面下では、
事件の余波が他の問題にも及んでいる。
■企業献金で反転攻勢
19日夜の東京・銀座。民主党幹事長、鳩山由紀夫は党代表、小沢と日本料理店で酒を酌み交わした後、記者団に会合での小沢の言葉を再現してみせた。
「代表は『やるんだったら企業献金全廃しかないよ。(秘書逮捕後)個人献金が400件も増えた』という話をされていた」
小沢を直撃した西松建設による不正献金問題は清潔さが売りの民主党には痛手だ。秘書が起訴されれば、傷はさらに深まる。小沢は政治資金規正法の
抜本的見直しを訴えて反転攻勢を仕掛ける狙いのようだ。
もともと小沢の持論は「『個人献金はいいが、企業献金はダメだ』といった意見があるが、まったく逆だと思う。個人献金の方が政治家との
密着度は深まる」(平成16年9月3日付夕刊フジ)というもので、企業献金重視だった。今回も当初は見直しに消極的だったが、鳩山や
代表代行の菅直人に背中を押され、大きく舵を切った形だ。18日の党「次の内閣」の会合で、鳩山は小沢の心境をこう代弁した。
「小沢代表は、企業献金は悪だとは思っていない。横断歩道を青信号だから安心して渡っていたら、捕まっちゃった。ならばこの信号自体なくし、
渡れなくすればいいという話だ」
党内には、企業や労組などの団体から献金を受ける議員も多く、異論も根強い。だが、ある党幹部は「実際にやるのは政権を取ってからでいいんだ。
与党は賛成できるはずもないんだから」と狙いを語る。
■マルチ問題で戦々恐々
別の「政治とカネ」の問題もくすぶっている。18日の参院予算委員会では、自民党の森雅子が民主党国対委員長、山岡賢次のマルチ商法業者の
集会での講演内容を批判した。
「『フレックスタイムの素晴らしい商法だ』と宣伝している。被害の大きさを考えると非常に疑問だ。国会議員の肩書を使って宣伝をすることは、
『政治とカネ』の問題だ」
民主党席からはヤジが飛んだが、マルチ業界との関係は否定できないだろう。
昨年秋には、民主党衆院議員で小沢の側近、前田雄吉(現在、無所属)が、マルチ業者から講演料や献金を受け取り、国会などで業界を
擁護するような発言を繰り返していたことから、離党に追い込まれた。
また、山岡、副代表の石井一、最高顧問の藤井裕久らそうそうたるメンバーががマルチ業者の関連政治団体の議員連盟(今は解散)に参加
していたことも判明。「次の内閣」経産相の増子輝彦が、マルチ商法をめぐり経済産業省から業務停止命令を受けた企業の監査役を務め、
月額20万円の報酬を得ていたことも発覚、業界と民主党の関係が一気に注目を集めた。
民主党中堅議員は23日、「表立って言ったら批判されるが、マルチ企業だって、ちゃんと利益を出してカスタマーを拡大している
ところもある」(中堅)とつぶやいた。