「代表空席のまま、現執行部の菅と幹事長の鳩山由紀夫に、党内で最も待望論が強い副代表、岡田克也を加えた『新トロイカ体制』
をつくる案を練っている。衆院選前に代表選をやっている時間的余裕はないという大義がある」
菅が主宰するグループの中堅議員はこう打ち明ける。岡田を抱き込むことで、現執行部総退陣を回避したい菅の思惑も透けてみえてくる。
党内では、24日に予想される小沢の秘書の起訴を待たずに「小沢降ろし」が“解禁”され、同党の年中行事だった
内紛が勃発(ぼつぱつ)する様相を呈している。
「冷静に捜査の進展をみつめていくしかない。あれこれいうには現段階では情報が少なすぎる」
民主党最大の支持組織、日本労働組合総連合会(連合)会長、高木剛は5日の記者会見で言葉を選んでこう語った。
だが、次期衆院選が迫る中、連合にとって「小沢なき民主党」はない。組織は揺れ動いている。
小沢は平成18年4月に党代表就任後、前代表の前原誠司の時代に冷え込んだ連合との関係修復に真っ先に取り組んだ。
19年からは小沢と高木と“二人三脚”の全国行脚を始め、地元の連合幹部との宴席も重ねた。小沢は二次会のカラオケで
八代亜紀の「舟唄」を披露したこともあった。連合前会長の笹森清に「連合を本気にさせた初めての民主党のトップだ」と言わしめた。
それだけに「小沢が辞任したら心理的影響は大きい」(連合山形)という。
「1人でも票をいただける組織を大事にするのは政治家として当然のことだ」
小沢は連合との関係強化の意義をこう語ってきた。その戦略は19年の参院選での圧勝をもたらし、イメージ重視の空中戦に
頼っていた党に組織的に地上戦も対応する土台をつくった。
小沢は独自作成の「参院選の結果調べ」というデータブックを常に携え、選挙戦略を構築してきた。「小沢の選挙手法が党を
政権交代の手前まで成長させたが、小沢が辞めれば党内の体制は緩み、すべてがまぼろしになる」。側近議員はそんな危(き)惧(ぐ)を抱く。
岡田と前原は8〜13日まで、党内の喧噪(けんそう)を避けるかのように東南アジア諸国を訪問する。
小沢と距離を置く中堅は「動きが出れば岡田、前原に緊急帰国してもらう。当然、彼らもわかっている」と語る。
「小沢ありき」だった民主党の政権構想は崩れようとしている。(敬称略)