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【民主党解剖】第1部 政権のかたち(5)「小沢後」をひそかに模索

黙っていては「外堀」を埋められかねない焦りか。前日は都内の個人事務所や自宅に蟄居(ちつきよ)していた
民主党代表、小沢一郎は6日、表舞台に出た。

 「私が被疑者のような報道がされているが、そういう事実はまったくない」

 2日ぶりの党本部で自らマイクの前に立った小沢は、辞任する考えはないことを改めて強調した。

 秘書が政治資金規正法違反容疑で東京地検特捜部に逮捕されて3日。取材嫌いで知られる小沢が進んで記者団に語るのは異例だった。
波状的に流される疑惑報道に小沢が反撃に出た。

 側近は「報道には小沢だけでなく、弁護士出身の議員などを集めてチームを結成し、打ち返していくことを考えている」と語る。

 しかし執行部からは「小沢を援護射撃しようにも情報がないから動けない」という、いらだちの声も出始めている。

 「物言えど、くちびる寒しだからな」。小沢に近い国対委員長、山岡賢次は8日のテレビ朝日の報道番組出演をキャンセルした。
代表代行の菅直人も同日予定の番組出演を断った。執行部は、視界不良の捜査の行方に地団駄(じだんだ)を踏むだけだ。

 「絶対に勝たなきゃいけない」。小沢は6日、名古屋市長選挙(4月26日投開票)に転戦する衆院議員、
河村たかしを党本部に迎え、こうハッパをかけた。

 自民党との事実上の一騎打ちとなる「民主党王国」愛知での県都決戦。「検察と断固戦う」と意気込む小沢にとって、
その勝敗は重い意味をもつ。とりこぼせば、自らをとりまく疑惑の後遺症を認めざるを得ないうえ、次期衆院選の「党の顔」は
小沢しかないという神話が崩壊するからだ。

 小沢は「心配かけるているな」と河村の肩をポンとたたいて送り出した。

 小沢はこの日、自民党旧田中派時代からの盟友である副代表、石井一に党本部で約30分話し込んだ。

 「党内でいろいろ言う奴(やつ)はいるが、全部じゃない。気にすることはない」。石井の助言に、小沢は「わかった」とうなずいた。
「小沢降ろし」のときをじっと待つ党内の非小沢勢力と、西松建設事件での小沢サイドの立件に意欲を示す検察−。自らの思いを直接、
間接問わず発信し始めた小沢の動きは、眼前で対峙(たいじ)する二つの敵に向け「小沢は動じない」と宣言する“情報戦”とも受けとれる。

 しかし、小沢の思いとは裏腹に党内では、「小沢で結束」の空気にも微妙な変化が生じつつある。

小沢擁護派の中堅幹部は6日、「週末に議員たちのマグマがたまり、週が明けると風向きが変わるかもしれない」と語った。
週末に地元に戻る議員たちが「小沢ショック」の影響を目の当たりにすれば、「静」を決め込むわけにはいかない。マスコミ各社も、
小沢の秘書の逮捕後初めての世論調査を予定している。

 菅サイドもひそかに、「小沢辞任」を想定した新体制の検討に入った。