【民主党解剖】第1部 政権のかたち(4)「小沢降ろし」じわり
「小沢ショック」の波紋は、民主党内の思わぬ所にも広がりつつある。
ポスター待った
党代表、小沢一郎の公設第1秘書が東京地検特捜部に逮捕された3日。次期衆院選に出馬する関東地方の新人候補は、
小沢との「ツーショット」ポスターの印刷をストップさせた。
「小沢が写ったポスターは評判が悪くて張れない。別の党幹部に差し替えるしかないが、費用もばかにならない」と新人候補は天を仰いだ。
党関係者によると、撮影日を調整中だった、小沢を前面に出したテレビCMも宙に浮きかねない状況だという。
公職選挙法に基づき、衆院議員の任期満了半年前にあたる今月10日から候補者単独のポスターの掲示が禁止される。
このため衆院選候補の多くは、小沢との「2連ポスター」を準備し張り始めていた。
ところが「選挙の顔」だった小沢がスキャンダルに見舞われたうえ、代表辞任もありうるとの観測が広がり、
党内ですでに「小沢離れ」の動きが出ているのだ。
5日には、ポスターに頭を痛めている九州選出の中堅議員が選対委員長、赤松広隆の国会内の事務所に駆け込んだ。都内を地盤にする若手議員は、
「事件発覚後、張りたての2連ポスターの何枚かが小沢の部分だけ破られたり、切り取られたりした」という。
自民党内では先に、内閣支持率の超低空飛行にあえぐ麻生太郎首相とのツーショットポスターを避ける動きが表面化した。
民主党はそれを人ごとのように見ていたが、期限の10日を目前に降ってわいたポスター問題に、別の中堅議員は「悪夢だ」と肩を落とした。
揺るがぬ強気
「辞任否定会見」から一夜明けた5日、小沢は都内の個人事務所や自宅にこもり、公の場には姿をみせなかった。
党の重鎮である参院議院運営委員長、西岡武夫は小沢を個人事務所に訪ね、約30分話し込んだ。小沢の様子を記者団に尋ねられた西岡は、
「元気、元気」と語った。
小沢の強気は揺らいでいない。4日の記者会見後も、「また地方行脚を再開するぞ」と側近に漏らし、代表を退く気は毛頭ない決意を伝えたという。
「真実は必ず明らかになり、秘書の潔白や無実が証明されると確信している。国民の期待と負託に応え、政権交代に向け不退転の決意で邁進(まいしん)していく」
5日の参院予算委員会の冒頭に質問に立った参院幹事長、平田健二は、用意したペーパーに目を落としながら、こう強調した。
国会で野党幹部がこうした「決意」を示すのは異例だ。そこには党内の「小沢降ろし」の動きを封じるとともに、
小沢体制下での結束をアピールする執行部の思惑が見て取れた。
小沢に距離を置く議員たちも表向き、小沢続投を黙認し、目立った動きを控えている。事実上の小沢派といえる「一新会」も
5日に予定していた定例会合を取りやめた。「いまは動かないほうがいい」(小沢側近)と考えたことがその理由の一つだ。