金玉大好き少年の事件簿

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FILE.6 『便所飯殺人事件』

人里離れた山奥のとある私立大学――
学園祭に参加するためにこの大学を訪れた俺と美雪は、
恐ろしい事件に巻き込まれてしまう。旧校舎のトイレの個室の中で、男子生徒の遺体が発見されたのだ。
検死の結果、被害者の体内から強い毒性のある薬物が検出された。
そして、個室内からはコーラとカップ麺が発見された。
旧校舎は今ではほとんど使われておらず、新校舎からも離れており、滅多に人が訪れる場所ではない。
被害者の死亡推定時刻に旧校舎を訪れていた三人の人物が容疑者として挙げられた。
被害者の同級生で恋人でもある備地(びっち)、同じく被害者の同級生の肝尾田(きもおた)、イギリス人留学生のペニス・ボッキー。


なぜトイレに飲食物が存在するのか?
そして、この事件の真犯人は一体誰なのか?
この謎は必ず俺が解き明かしてみせる。
ジッチャンのナニしゃぶりてえ。
124('A`):2009/02/06(金) 10:07:41 0
病「被害者の身元について色々わかったぞ。名前は茂手 鯛男(もて たいお)。この大学の三年生だ。」
金「病気持ちのオッサン、被害者の人間関係については?」
病「容疑者の一人、備地とは恋人同士だったみたいだな。後の二人は面識がなかったらしい。」
美「三人のアリバイはどうだったんですか?」
病「それが・・・三人ともアリバイが無いんだ。容疑者全員が犯行可能だったんだよ。」
金「本人達の証言を詳しく教えてくれ!」
病「ああ。備地は所属サークルが出す模擬店の準備をサボって、旧校舎の一室でタバコを吸っていたと言ってたな。
  肝尾田は旧校舎の屋上で昼食を食べていたそうだ。なんでも、そこしか心の休まる場所が無いんだとさ・・・。」
金「もう一人の容疑者、ペニス・ボッキーは?」
病「彼は部活の出し物に使う椅子やテーブルを、旧校舎から一人で運んでいたらしい。
  だが、一人でそんな仕事をしていたって事は、恐らく友達が一人もいないんだろうな。」
金「ふぅん・・・肝尾田もペニスも、他の人間とは上手く行ってなかったってことか。」
病「金玉大好き、俺はもう一度、現場を見に行ってみる。お前も一緒に来てくれ。」
金「わかったよ、オッサン。現場に何か手がかりが残っているかもしれないしね。」
125('A`):2009/02/06(金) 10:08:57 0
病「ここが遺体が発見されたトイレの個室だ」
金「なんだこれ?コーラと・・・カップ麺?どちらも飲みかけ、食べかけだ。」
病「不思議だろう?なぜトイレにそんなものがあるんだろうな。」
美「これって・・・もしかして『便所飯』かしら?」
金「えっ?何か心当たりがあるのか、美雪!」
美「ええ。一緒にご飯を食べる相手のいない孤独な人が編み出した、特殊な食事方法の事よ。」
病「どういう事だ・・・?ヤラセ君。」
美「孤独な人は、一人でご飯を食べている事を他人に知られたくないらしいわ。」
金「なるほど。トイレの個室は誰にも気付かれずに食事するには最適って事か!」
美「でも被害者には恋人もいたし、友達も多かったんじゃなかったかしら?」
病「つまり犯人は、被害者が便所飯を食べていた様に見せかけたのか」
金「!!そうか・・・そういう事だったのか!!!」
美「どうしたの!?はじめちゃん!!」
金「病気持ちのオッサン、すぐに事件関係者を集めてくれ。玉は・・・すべて好きだ!!」
126('A`):2009/02/06(金) 10:09:43 0
肝「やれやれ。警察に呼び出されて来てみたら・・・。」
備「誰なのよ、この高校生は!?」
ペ「今回ノ事件ニツイテノ事情聴取ジャナカッタンデスカ?」
金「皆さんに集まってもらったのは他でもありません。この事件の真相を明らかにするためです。」
備「それじゃあ、犯人がわかったっていうの?」
金「ええ、今から順番に説明を・・・。」
肝「ちょっと待って下さいよ、名探偵気取りのお兄さん。この事件の真相なら、僕にもわかりましたよ。」
美「え?」
病「ど、どういう事ですかな?肝尾田さん。」
金「・・・・・」
肝「フヒヒ、それでは話をさせてもらいますよ。」
病「(おい金玉大好き・・・いいのか?)」
金「(いいさ。とりあえず彼の推理を聞こう。)」
127('A`):2009/02/06(金) 10:11:03 0
肝「そもそも・・・この事件は殺人事件じゃなかったんですよ。」
ペ「ナンデスッテ?ジャア、ナゼ彼ハ死ンダノデスカ?」
肝「遺体発見現場の状況から考えれば簡単にわかりますよ。皆さん、覚えていらっしゃいますか?
  現場には、コーラとカップ麺が残されていたんです。これがすべてを物語っているのですよ。」
備「それがどうしたの?」
肝「被害者はトイレで食事をしていた・・・つまり、彼には一緒に食事をするような友達がいなかったんです。」
備「ウソよ!彼には友達が沢山いたわ!!」
肝「ここからは僕の推測になりますが・・・被害者はかなり交友関係が広かったそうですね。おそらく、
  知り合いの数を増やす事ばかりに専念してしまい、心から友と呼べるような人はいなかったのでしょう。」
ペ「大学デビューニハ、アリガチナ罠デスネ。」
病「それで・・・結局、殺人事件ではないというのはどういう事です?」
肝「自殺ですよ」
備「そんなっ!彼が自殺したなんて!!」
肝「便所飯の最中、あまりの寂しさと虚しさに絶望し、自ら毒を口にしたのでしょう。」
金「・・・残念だが、肝尾田さん。アンタの推理は間違っている。」
肝「なんだとッ!?」
金「被害者は自殺したんじゃない。自殺に見せかけ、殺されたんだ!そしてこの事件の真犯人は、この中にいる!!」
備「こ・・・この中に・・・。」
肝「真犯人が・・・?」
ぺ「ソレハ誰ナンデスカ!?早クハッキリサセテクダサイ!!」
金「この事件を引き起こした真犯人、それは・・・・・アンタだ!!!」
128('A`):2009/02/06(金) 10:12:15 0
金「被害者の恋人だった、備地さん!!」
病「なんだって!」
美「備地さんが?」
備「そ、そんな・・・私は彼と付き合ってたのよ?なんで私が・・・!それに、
  アリバイが無いのは私だけじゃないでしょ?なぜ私が犯人だと決め付けるのよ!」
金「アンタしかいないんだよ。現場の状況がそれを物語っている。」
病「どういう事だ、金玉大好き。」
金「この人は、被害者を毒殺した後、トイレの個室に運んだ。そして、あらかじめ用意しておいた
  コーラとカップ麺を残していき、被害者が便所飯を食べている時に自殺したように見せかけたのさ。
  こうして誰かがこの事件を自殺だと判断するように仕向けたんだ。肝尾田さん。アンタのようにね。」
肝「・・・チッ。」
病「し・・・しかし、それを彼女の犯行だと裏付ける証拠が無いだろう・・・。」
備「そうよ、肝尾田やペニスがやったのかもしれないじゃない!!」
金「いや、アンタしかいないんだ。現場に残されたコーラとカップ麺が証拠さ。」
肝「コーラとカップ麺が・・・?」
金「肝尾田さん、ペニスさん。アンタ達ならわかるだろ?
  便所飯にコーラとカップ麺を選ぶのはおかしいと思わないかい?」
ペ「What?ソレハ一体ドウイウ・・・アッ!」
肝「な、なるほど・・・そういう事か!確かに君の言うとおりだ!」
病「さっぱり意味がわからんぞ、金玉大好き・・・わかるように説明してくれ。」
金「オッサン、便所飯をする人の心理を知ってるよな?」
病「ああ、一人で食事しているところを誰かに見られたくないんだろ?」
備「・・・!!」
129('A`):2009/02/06(金) 10:14:44 0
金「コーラはふたを開ける時に大きな音が出てしまうだろ?これは便所飯中の人間にとっては避けたい事だ。
  もしも個室の外に人がいたら、すぐに中で誰かが食事をしているとバレてしまうからね。
  カップ麺も同じ事さ。麺を食べたり汁を吸う時に音が出るし、強すぎる匂いが外まで漏れてしまうんだよ。」
病「なるほど・・・便所飯には適さないものだったって訳か・・・。」
金「そして、便所飯を何度も経験しているであろう肝尾田さんとペニスさんがそんなミスをするはずがない。」
肝「確かに・・・便所飯なら、パンやカロリーメイトのようなものが最適だ。炭酸飲料など言語道断だ・・・。」
ペ「温カイモノモ、便所飯ニハ向イテイマセン。蒸気ト一緒ニ、匂イガ飛散シテシマイマスカラ。」
金「便所飯というのは、ただ食事場所としてトイレの個室を確保しているだけじゃない。
  誰かに存在を知られたくないという気持ちが大前提にあり、その条件を満たしてくれるのがトイレなんだ。」
病「奥が深いものだな、便所飯ってのは。」
金「便所飯を・・・いや、友達のいない人間の気持ちを理解できなかったのが、アンタの最大のミスだったのさ。」
備「うぅ・・・。」
病「備地さん。何故こんな事を・・・お聞かせ願えますか?」
備「あ・・・あいつが悪いのよ!私が浮気したぐらいで怒るし・・・!
  学生だからお金も持ってないし・・・!それに、私の作ったケータイ小説を読んでくれないのよ!!
  登場人物(女性)の全員が妊娠して流産して最後は病死する素敵で切ないストーリーなのに・・・・!!」
金「うわぁ何その動機。」
病「スイーツ(笑)。」
美「性病で死ねよ。」
肝「やっぱ三次元の女は糞。」
ペ「日本女性ヒドイデス。」


こうして―――狂気と怨念の渦巻く凄惨な殺人事件は幕を閉じた。
自分が幸せそうに談笑しながら食事をしている時に、他の誰かが
薄暗いトイレの個室でパンをかじっているという事実を、俺達は忘れてはならない。
悲しいトイレ事情を知った今、俺は改めて人との繋がりの大切さを噛み締めていた―――。


                                        


                                        FILE.6 『便所飯殺人事件』 終