おぼろげに、ドアの開かれる音と人の気配を察して夢から覚めた。
寝ぼけ眼に何の夢だったかを思い出そうとすると、急に感覚の鋭さ…
まさに研ぎ澄まされた感覚と呼ぶべきものに見舞われる。
目は手許の毛布の毛羽立ち一つ一つを捉え、耳は来訪者の息遣いを聞き、
鼻は彼の持つパンが半焼けで、またサラダのドレッシングが不自然だと嗅ぎ付けていた。
あまり起き上がる気分じゃないが、仮に彼を追い返しても、この鋭さのままもう一度眠ることなどできそうもない。
本当に、体の調子が良い。だが嬉しくはない。
「全く…もう日が高いぞ」
呆れた口調と平静な表情、そのどちらが彼の本心なのか考えるでもなく察している自分がいる。
「健康な者は、顔を揃えて食卓を囲むものだろう」
仕方なく、促されるままに部屋を発った。